あいまいまいんの生物学

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2022年度大学入試共通テスト2次日程 生物 所感

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第1問 生物多様性とある植物種Xの生活

現在の生物多様性低下に関する懸念について述べられた後、ある植物種Xの生活のサイクルが示される。

問1 生物多様性に関する知識問題。正誤がはっきりする記述なので、難しくない。思考力もそんなに要らない。

問2 ちょっと見たことがないタイプの図を用いた問題。新傾向かな?

植物Xの各生育段階の個体について、生育段階と分布を1年追跡して変化を見るというもの。リード文で植物Xがどのように生育していくのかは説明されているので、その説明と合わせて図を解釈し、問題に答えていくというもの。

中々不思議な挙動をするので、ちゃんと解釈できていないと当てずっぽうでは当たらなそう。

問3 これも中々見ない問題。目新しい。

植物の個体群における生育段階の構成から個体数増減傾向が推測できる、ということが説明された上で、植物種Xの小さい個体群の情報(大きい個体群と挙動がどう変わるか)が教えられる。それらの話を基に小さい個体群の生育段階構成を選ぶというもの。

植物種Xは芽生えが大量に死ぬ上、幼個体から開花個体になるまで数年かかり、かつ開花個体が1度開花したら枯死してしまうので、開花個体よりも芽生えが少ないor同じ程度になると個体数が減っていくことが予想される。それが分かれば難なく答えは選べるけれど、答えを導くには理解力も思考力も必要になる。

何よりグラフが「割合」表示なのでそれも生物選択者だとキツく感じる人が出るだろうなとも思う……。

問4 近交弱勢を題材にした遺伝子頻度の計算問題。ハーディ・ワインベルグの法則に関連した計算の変化球ver。

誘導が優しく作ってあるので難易度が飛び抜けて高いわけではないが、「自家受粉」が出てくると焦る人も多いのではないか。

そういう意味でちゃんと数が冷静に処理できるか、また文章に則って正しく処理ができるかを問える問題になっていると思う。

 

総評

ただの生物多様性低下、絶滅の話や知識問題ではなく、植物種Xの独特の生活サイクルを引き合いに出すことによって、考え、解くことで、肌で絶滅の容易さを理解できる問題に仕上がっているのは大変素晴らしいと思う。

出てくる図やグラフについてもあまり類を見ないものになっており、処理能力をちゃんと問える問題群になっている。その上難しすぎることはなく、ストレスなく解けるのが素晴らしい。良問だ。

個人的には問2で分布の話がうまく問題に取り込まれているのが面白いなと思った。授業で集中分布、ランダム分布、一様分布……という単語は勿論説明はするが、正直あまり生き生きとした像として示せないというか、なぜその単語を知っておくといいのかが伝えきれないところがあった。勿論分布の仕方はその生物の資源の利用の仕方や戦略、場の環境と繋がっているというのは面白いのだけれど、それ以上の活用がなかった。今回の問2ではその分布が初めて「活用」されている事例を見られたというか、分布が生育に伴い変化するーしかもそれにちゃんと理由がつくーというかなりリアルで生き生きとした生物の姿に分布を絡めることができた。そういう意味で問2は非常に価値が高く、面白く、良い題材と問題だなと思った。

 

第2問

A 植物の環境応答

箱の中にキュウリの芽生えを入れて、水分環境を不均一にして根の伸び方を見る実験。実験装置が面白い。吸湿剤を置く位置だけで湿度環境を不均一にできるのか……。家でもできそうな背伸びしない実験系なのがいい。

と思ったら実験2で宇宙ステーションに持ってっちゃった。これはお家ではできませんな。

問1 水分環境のみへの応答を見るために暗箱で実験する必要があったが、その理由を答えよというもの。正直問題文に「光への反応が起こらないようにするため」と書いてあるようなもんな気がするが、まぁいいや。

問2 実験1,2の結果から考察を導くもの。複数情報を適切に処理しないと答えが出てこない上に、地上・宇宙でどういう状況かをちゃんと判断しながら答えを導いていく必要がある。

問3 土壌中に普通に巻いた時土から飛び出るような根を出す変異体はどこがおかしいかを選ぶ問題。分かるんだけど、誤答になっているものが本当に関係ないと言い切れるのか?というのはちょっと疑問。

 

B 花のホメオティック遺伝子

ABCモデルのありきたりな話が書いてある。

問4 ホメオティック遺伝子(というかABCモデル)に関する知識問題。何も難しくはない。難しくはないが、敢えてABCという言葉を出さずにABCモデルについて聞いてくる問題って中々見ないな。

問5 タンパク質Pが配列Rにくっつくと遺伝子Qが転写制御されますよ、というのを実証するための解析として不適当なものを選ぶというもの。実験デザイン問題の一種だが、何を言ってるんだ?というのが答えなので、すぐ選べる。

問6 PはQの転写を促進し、Qが機能欠損すると花粉母細胞と胚嚢母細胞が作れませんよ、という情報から、PとQそれぞれがABCどのクラスの遺伝子だったのかを突き止める問題。難しくはないが、やはりABCモデルを理解しているかどうかが要となる。あとは文章読解力かな。焦ると変な読み方をして変なはめ方をしそう。

 

総評

知識をそのまま問う問題よりも、知識を活用して解く問題や情報を処理して思考・判断する問題が多くて良い問題群だと思う。

相変わらず難解さはなく、ほどよい難易度に仕上がっている印象。

ただ、Bの問題については使う知識がABCモデルのこと(特にどの花器官形成時にどの遺伝子が働くか)ばかりで、少々用いる知識の重複があるような気もした。あとAであっさり宇宙に飛んでったのすごい。

 

第3問 受精とCa2+波

多くの動物の卵で、受精時にCa2+波が発生することがリード文で説明される。イモリやマウスでは精子の細胞質基質にある酵素X(普段はミトコンドリアクエン酸を作る反応を触媒する)がこのCa2+波を誘起するのに必要になる、と続く。

問1 小胞体の知識問題。非常にシンプル。

問2 イモリとマウスの共通特長でないものを選ぶ問題。これも知識。そしてとてもシンプル(一応進化と分類の知識も絡んでいる……のか?)。

問3 脊椎動物のどれが体内受精or体外受精をするか、という表が与えられ、そこから体内受精に関する考察をするという問題。

……なにこれ?正直、なんの知識が問われているのかもよくわからないし、モヤッとする。選択肢それぞれの問いたいことの焦点がズレていて、そのせいで文章を読んでいっても気持ち悪さを感じる。「あった」ってなに?どの時点で?文章読解力とかじゃない気がするんだけどな。

よくわからない気持ちで一通り読んで、「……つまりこれを答えてほしいってこと?」ってもやっとしながら自分は答えを選んだ。こんなモヤモヤ経験を共通テストでしたくないんだが。

問4 Ca2+波と酵素Xの実験が並べられ、そこから考察をする。難しくないし、そこまで情報の並列処理という感じもない。ストレート。

問5 イモリでは多精が起こることが紹介され(卵核と融合する精核は1つのみ)、これがなぜなのかを精子○個分の酵素Xを注入してCa2+波が発生する未受精卵の割合を見ることから解析しようとする問題。グラフ解釈が必要な上、これが解ければ多精が必要な意味に繋がって一応面白いのだけれど……正直問3を引きずってて素直に感じられない。

 

総評

第3問は前半かなりただの知識問題といった感じな上に、実験や情報処理もそこまで込み入ったものでもなく、簡単だという印象を受けた。

簡単だけれど、問3があまりにも気持ち悪いので、なんかモヤモヤとした後味がずっと残って嫌だ。問題として良くないと思う。

 

第4問 水族館で進化と系統を語るデート

クマノミやエビやイソギンチャクを眺めながら楽しく二人が進化とか共生とかのおしゃべりをする。最高。こういうデートしてほしいね。

最後「飼育員さんにお願いして調べてみよう」と物凄く行動的なのもすごい。

問1 クマノミ、エビ、イソギンチャクの各分類門のうち2つの門だけで共通する記述を選ぶ問題。知識だね。

問2 水族館で二人が語ってた内容の間違いを指摘せよという問題。残酷だなぁ。知識問題。

問3 相利共生ではない例を判別する問題。普通の知識問題。

問4 クマノミの性転換とグループの大きさ、個体の大きさについての情報が与えられ、表から考察をする問題。

事実として面白い。

問5 クマノミの雄を取り除いたときにグループ内で起こる変化を見た実験を基に、考察を行うもの。

グラフが少々見慣れないものなので、一旦解釈する必要がある。

答えを選ぶ際には、「競争的排除」の言葉の定義が正しくわかっているかどうかも問題になる。実は知識も問うている。

 

総評

水族館に遊びに行って系統と進化の話を延々とし、かつクマノミのグループと性転換に興味を持って自主的に調べるなんてなんていい子たちなんだろうか。

問1~3まで知識問題だったのでちょっとバランスが悪いけれど、それでも問4,問5で思考力やグラフ処理能力等を問える構成にはなっているかなと思った。とはいえそこまで難しいものでもなく、込み入ったものでもないので難易度としてはやや易だろう。

 

第5問 地球の歴史と進化

化学進化とか化学合成細菌とかがもりもり出てくるリード文。教科書的。

問1 化学進化の過程として適当な記述を選ぶもの。まぁ知識かな。②の選択肢に一瞬びびったけれど、普通に判断ができると思う。

問2 化学合成細菌のエネルギー獲得方法の例を選ぶもの。非常にストレートな知識。

問3 地球初期生命体が独立栄養生物だとしてもその前に必ず化学合成があったはず、なぜ?という問題。常識的に考えれば解ける。

問4 地球の大気の酸素濃度の年月に伴う変化グラフを見て考察をする問題。

そんなに難しくなく、かなりストレートな部類。グラフも変じゃないし。

問5 酵母グルコース十分・酸素あり環境下でも発酵によってエネルギーを得る場合があるのはなぜかを答えていく問題。

解きながらなるほど~という気持ちになり、学びがあるので面白いと思う。

 

総評

これもまたかなり知識に寄っており、かつ非常に簡単な問題になっていたと思う。最後の問題以外、思考力はあまり必要ないのではないか?

題材が物凄く発展的、というわけでもなく、授業で学ぶ至って平凡かつ典型的な問題構成。大事だから出した、という感じだろうか。

 

第6問 カブトガニの視覚の情報処理

ある図が示され、最初に錯覚を体験する。

ちなみにこの錯覚では「色が濃い薄いに見えているだろうけど実際は同じ色だよ」というものだったので、試しにその違う色に見えている部分をくり抜いて比較してみた。なるほど全く同じ色だった。

で、こういう錯覚が起こるのは、光を受けて生じた信号が網膜の神経回路で処理されてから脳に伝えられるせいだという。そこからカブトガニの情報処理の話に繋がっていく。

問1 個眼が自身の興奮時側方抑制するという情報から、ある条件下ある個眼での興奮頻度グラフを選ぶ問題。

まぁストレートかな?

問2 側方抑制の仕組みによって個眼の並びが受け取った明暗情報がどのように伝達されるかを考える計算問題。

くっきりはっきりわかって良い。

こういう問題は時々二次などでもあるので見たことがある人もいるかもしれないが、知らない人が見るとなるほどー!と思うだろう。

 

総評

最後は知識なく全て思考・判断に寄った内容になっていた。今までちょっと知識多めだったので、バランスを取りに行ったのだろう。

カブトガニの個眼の側方抑制の仕組みと、そこから生まれる明暗をはっきりさせる仕組みの理解は、一周回って最初の錯視の理解につながってくる。中々にくい演出だ。おもしろい。

 

全体を通して

まず問題バランスで考えると、本試の時よりも知識に偏りめなところがある。かつ、問題の捻りも本試ほどはなく、比較的ストレートに解けるものが多い(本試はもうちょっと情報処理能力や思考力、判断力、細かい知識が必要だった気がした)。

題材も典型……と言うほど典型ではないのだけれど、発展……というほど飛躍的に発展しているものでもなく、ほどほどに延長線上のものを題材としてなるべく入れた、という程度の印象を受ける。

問題を解いて物凄く面白かったり、物凄く発見があったり、ワクワクするわけでもない。本試の方がまだワクワクはあったのかもしれないなと思う。

そんなわけで、総合的に見ると本試よりも軽く、難易度も下がっているものだったと思われる。

 

個人的に気に入ったのは第1問の植物種Xと絶滅の話と、(そこそこある題材ではあるが)第6問のカブトガニの視覚の問題である。これは解いていても楽しさを感じられる代物だろう。

題材としてはイモリの多精、クマノミの体長とグループの構成、酵母のATP戦略も良いなと思った。

 

とはいえやはり第3問問3である。個人的にはここにずっと引っかかってもやもやとした気持ちが最後まで晴れなかった。

なにがだめなのかをうまく言語化できる自信はないが、ざっくり言うと文章の解釈が一筋縄でできないような、視点の定まらない(こちらも定められない)記述の正誤を判定させられるのがストレスだったのだと思う。

全体の選択肢が全てパッと見似た形に整えられているのに、内実考える時には視野をぐりぐり動かさないといけない……。その上①②の選択肢に至っては、複数の意味に解釈が可能なのでその複数の解釈について正誤判定をしていかなければならない。

加えてあの資料が実は厄介だった。物凄く目がブレるのだ。「原索動物は……どっちにもいる!?ウミタナゴってなに!?」みたいな感じで、これもまたなんとも視点を定めさせてくれない構造をしている気がした。

というわけで、自身はまだ言語化しきれていない部分もある気がするが、とにかく気に入らなかった、何かが嫌だったのが第3問問3である。勿論個人的なものなので、全ての人が同じように感じるわけでもないだろうし、なぜモヤッとするのかわからないという人もいるだろう。だがもし同じもやを感じた人がいたら、「なぜモヤッとするのか」を言語化してぜひ教えてほしい。自分で自分がよくわからないので、知りたい。

 

基本的に解くために必要な能力は本試で感じたものと大差なさそう。

どういう能力があったらいいかについては、下の記事の最後の方でまとめているので興味あればどうぞ。↓

i-my-mine.hatenablog.com

 

 

共通テストが両方終わってしまってなんだか悲しくなってしまった。

早く東大の問題出ないかな。