あいまいまいんの生物学

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生物作問チェックリスト

自分用に、高校生物の作問をする際にチェックしたいことをチェックリストにまとめてみました。

完全に個人的見解なので、それを踏まえて閲覧してもらえたら……と思います。

「こういうのも確認したらいいんじゃない!?」というのも、あったらコメントで教えてもらえると助かります!

 

 

題材探し

□ 作問のベースにしようとしている題材は、教科書、図説などの信憑性の高い媒体か。または信憑性の高い論文等の公文書か。

教科書の場合

□ 指導書の該当ページを参照したか。

□ 他社教科書の同一箇所の記述を参照したか。

論文等の場合

□ 研究の目的、解明されたことは把握できているか。

□ 研究の目的、解明されたことは高校生物の範囲内で説明・解釈可能なことか。

□ 研究手法は把握できているか。

□ 研究手法は高校生に分かるものに落とし込めるものか。

□ 研究目的と研究手法、論理の運びは合理的か。飛躍がないか。

□ 該当する研究に関し続報はないか。

 

作問作業

個々の問題について

□ 高校生物の知識・身につく能力で解けるものになっているか。

□ 問いによって確かめたい技能は明確か。

□ 問いによって確かめたい技能は高校生に求められる妥当なものか。

□ 知識問題の場合、それは暗記して身につけるべき知識であるか否か。

□ リード文・問題文・選択肢・グラフ・表・図に無駄はないか。

□ リード文・問題文・選択肢・グラフ・表・図に誤解を生む余地はないか。別の読み取り方はできないようになっているか。

□ リード文・問題文・選択肢・グラフ・表・図に不足はないか(材料が足りず解けない問題ができあがっていないか)。

□ リード文・問題文・選択肢・グラフ・表・図が必要以上に難解になっていないか。問うべき能力に相応しい構造をしているか。

□ リード文・問題文・選択肢・グラフ・表・図において表現が揺れていないか。統一されているか。

□ 理解の助けになるイラストなどの要不要は判断できているか。必要だった場合用意できているか。

□ 1つの選択肢に多段階の正誤判定能力が必要となっていないか(文章が間違っている上に単語が間違っている、1文に含まれる複数単語のうち2個以上間違っている、等)。

□ 答えは正しく選べるものになっているか。

□ 各選択肢の記述の正誤は確定しているか(教科書でのファクトチェック)。

□ 各選択肢の記述の正誤は確定しているか(教科書以外でのファクトチェック、最新論文などの確認)。

□ 記述式の場合、回答のブレが想定範囲内に収まるようになっているか。

□ 記述式の場合、どこからが正解でどこからが不正解か明確な基準を作問者側で作れているか。不当なものになっていないか。

□ 問題として成立しているか。

□ 問題内容は論文などの題材を不当に捻じ曲げたものになっていないか。

□ 導かれる結論が恣意的になっていないか(題材にはないことを勝手に推測していないか)。

□ 実験問題の場合、実験条件は正しく説明されているか。過度の般化などは行われていないか。

□ 問題の形式は現在採用しているものが最も相応しいか。他の問い方は検討したか。

 

問題全体について

□ ある問のリード文・問題文・選択肢・グラフ・表・図が他の問題の答えを明らかにしていないか(別の問題で答えとなる要素が含まれる等)。

□ 難易度のバランスはとれているか。

□ 各問の点数と正答率を考えた時、自身で設定した目標平均点になっているか。

□ 知識問題、思考問題、計算問題など、問題種は満遍なく取り揃えられているか。偏っていないか。

□ 問いたい箇所や要素に重複はないか。

□ 連動問題になっていないか(前の問題が解けないと後ろの問題も解けない、という風にドミノ式になっていないか)

□ 「流れ」に違和感はないか。

□ 確かめたい能力を確かめられる問題になっているか。

□ 無意味に難しくなっていないか。

□ 本筋と関係のないところで時間がとられる構造になっていないか。

□ 問いた生徒が学びを得られる問題になっているか。

□ 問いた生徒が面白さを感じられる問題になっているか。

 

 

典型問題を用いる場合

□ ファクトを手元で参照できる状態になっているか。問題をベースに二次創作する形になっていないか。

□ ファクトと問題を照らし合わせて正当性を確認してあるか。

□ 問いたい能力は明確か。それを問える問題になっているか。

□ 典型でも出す価値のある問題を選定できているか。

□ 難易度は適切か。

□ 過去の類似問題の丸暗記で切り抜けられるものになっていないか。

□ 典型問題に含まれる問いたい部分が問えるような工夫がなされているか。

共通テスト生物基礎・生物 我流味わい道

共通テストの「問題」、味わってますか????

共通テストを「懐かしく自分語りし、受験生を応援するだけのイベント」で終わっていませんか???????

 

せっかくなのだから……

共通テストの「問題」を味わうという行為も取り入れてみませんか?????

 

 

ということで今回の記事では、

「問題」の味わい方を知ってもらうことで、共通テストを存分に満喫できる足がかりにしてもらう

ということを目標に、自分なりの「味わい道」を紹介していけたらなと思います。

でも、自分は共通テスト全部の楽しみ方は語れないので、あくまで生物基礎・生物の話に限定したいと思います。

 

 

味わい道① 問題というものは「意図」の上にあると考えよう

共通テストに限らず、多くの問題は何かしらの考えを伴って作られています。

例えば何を考えているのでしょうか?

  • こういう知識や能力がちゃんとついているか確認してやろう(測定)
  • これは大事だから絶対身についていてほしい(強調)
  • 知識を正しく運用できると面白いものが見えるから、皆も体験してほしい(感動のシェア)
  • こんな面白い事象があると知ってほしい(事象のシェア)

などなど……ざっとあげただけなので、これがすべてではありませんが、例としてこういう気持ちがあると思って頂ければよいかと思います。

各問題を見た時に、どのタイプの思考を基に出題されているか考えるだけでも、ちょっと面白いです。

 

ですが、ちょっと待ってください。

共通テストって、誰の思考や制約が絡むんですか?

答えは、

  • 文部科学省(どういう教育をしたい、どういう人間を育てたいか を国レベルで設定する大元)
  • 共通テスト作成方針(どういう能力を測りたいか、どういう問題を作るか を共通テストに関して決定する大元)
  • 作問者

などが想定されますね。これらが絡みに絡んで練り上がって生まれてくるのが、共通テストの問題という結晶なのです。

ならば、それぞれが何を考えているか想像すると、より一層面白くなりそうです。

 

文部科学省の思いを妄想しよう

まずは文科省の考えに思いを馳せてみましょう。

文科省は受験生に対して何を望んでいるのでしょうか?……生物基礎・生物で教えた内容がすべてバッチリ入っていて、論理的思考力もできて、実験能力もあって、データ分析や処理の能力もあって、サイエンスへの姿勢(疑う・研究する・学ぶ)もしっかり出来上がっていて……色々思い浮かびますね。

もっと詳しく知りたければ、学習指導要領を見ればすべて書き出されていますが、今回はそういうことはちょっと置いておいて。

 

もうちょっと俗的な考え方をしてみましょう。

「今の時代、大学生になりそうな人たちに文科省が望むものは沢山あるだろうけれど、最低限押さえたい・国として強調したいところってなんだろう?」と妄想してみるのです。そう、あくまで妄想です。

妄想ですので、皆さんそれぞれでこれは答えが違っていい。

けれど私個人の考えをここで述べさせていただくと、

  • 生態系(生物多様性外来生物地球温暖化etc)の問題がかなり盛り上がっていて世界的にも重要なので、それらに対する正しい知識を身に着けてほしい
  • 生活習慣病が増えたり、長寿化と核家族化によってセルフケアの観念はより一層重要になってくるのだから、個々の国民が自分の身体の面倒は見られるor適切に判断して健康増進していけるように肉体関係の知識は押さえてほしい
    • 特に最近はコロナのことがあり、感染症拡大を防ぐには免疫の知識が重要なので、免疫関係の知識はしっかり身につけてほしい
  • 理系で生物の研究に関わる人間であれば、分子生物学が絡むのは避けることのできないほぼ確定事項なので、バイオテクノロジーの知識を身に着けて研究発展に貢献してほしい

とか……どうですか???思ってそうな気しませんか???(何度も言いますが、全分野全内容大事ですよ!)

 

そう考えているのかいないのかはわかりませんが、今年度の生物基礎では大きなテーマが3つある中で内2つが免疫、生態系となっています。生物でもバイオテクノロジーが出題されています。

まぁ、本当はネタバラシすると、生物基礎に関しては大きな分野が

  • 細胞・遺伝子・タンパク質・代謝
  • 体内環境
  • 生態系

というふうにもともと括りが大きく3つあって、教科書からバランスよく出題しようとするとどうしたって大問3つに各々が振り分けられるんで、文科省の思いとか関係なく1問は体内環境、1問は生態系になる可能性がかなり高いんですけどね……笑

そうだとしても、自分で勝手に妄想して、出題された問題の題材や分野から「やっぱりこう思ってるのかも!?」と思うのは単純に楽しい。ので、皆さんも是非想像した上で解くなり、解いて何かを勝手に読み取るなりしてもらえたらと思います。

 

 

共通テスト作成方針を頭の片隅に置こう

文科省については完全な妄想でしたが、共通テストの狙いについてはちゃんと公言がなされていますので、割と真面目に考察も行うことができます。

例えば令和4年度共通テストについては下のリンクで問題作成方針が閲覧できますし……

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm00038405.pdf

試行調査のときの資料を見ると、作問のねらいのイメージを確認することができます。

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00037133.pdf&n=08%E3%80%90%E7%90%86%E7%A7%91%E3%80%91%E8%B3%87%E8%B3%AA%E3%83%BB%E8%83%BD%E5%8A%9B%E8%A1%A8.pdf

 

全部に目をいきなり通せと言われても大変だろうということで、取り敢えず一番ダイレクトなタイトルがついている「令和4年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」の方(1個目の資料)を見ていきましょう。

 

見ていただくと分かるように、最初の方はアタリマエのことが書いてあります。

高校での基礎的な学習の達成の程度を判定し、大学教育に必要な能力があるかどうか確認するのが目的ですよ、とか……

そのために大学教育の基礎力たりうるような知識・技能、思考力、判断力、表現力を問いますよ、とか……。

ですが、途中かなり面白いことが書いてあります。

「どのように学ぶか」を踏まえた問題の場面設定
高等学校における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善のメッセージ性も考慮し,授業において生徒が学習する場面や,社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面,資料やデータ等を基に考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する。

独立行政法人大学入試センター 「令和4年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」https://www.dnc.ac.jp/albums/abm00038405.pdf p.2より引用

ということは、

共通テストの問題では、授業で生徒が学習する場面や、普段生活する中で課題を見つけた時、資料やデータを基に考察する場面など、

こういう場面があったらいいな、こういう場面でこう動けるのが「理想」だな、というものが表現されている、ということです!

つまりは、良い授業(主体的・対話的で深い学びが実現された授業)を受けたような模範的生徒であったら、どういう場面で何を思い、どう動いてほしいかー

どんな疑問を持ち、どういう取り組み方をし、どういう思考の進め方をしてほしいのか、そんな理想や願いが、問題から見えてくるというんですよ!面白いと思いませんか?

そんな目線で問題を見ると、「あぁ、模範生だ!」と思えるようになると思います。こういう同級生いたよな、とか思う人もいるだろうし、そんなことまで考えなかったな、と思う人もいるでしょう。

そんなふうに、問題=理想の生徒 として見ると、急にただの問題文が生き生きとしだすんです!と私は勝手に思っています!!!!!!!

 

じゃあどんなのが模範生なんでしょう?これもまた個人的に読み取ったものを挙げていくと、

  • 科学に対する望ましい姿勢(○○だ、と断言されても疑う姿勢を持つ、自分たちで確からしい情報を集める&実験を参照し解釈する、飛躍した論理ではなく論理的な思考の末に結論を出す(または出せないことを判断する))を持っている
  • 初見のグラフや表などを適切に読み解く能力を持っている
    • 特に多段階情報の処理or複数情報の並行処理ができる
  • 知識を身に着けているだけでなくそれを武器として用いて考察を押し進めることができる
  • 自分たちである仮説の真偽を確かめるための実験計画ができ、それを実行することができるほどの実験or手法への理解がある
  • 議論を冷静に進めることができる(相手との会話を通して自身の理解を進めることができる)
  • 授業内容含め色んな身の回りの物事に興味を持ち、課題を自ら見出だせる

などを満たす人かと思われます。

こんな模範生を想像しながら実際問題を問いていくと、どの能力を問いたい問題かが段々見えてくるようになります。「お、この問題はこういう能力をあぶり出そうとしているんだな……」と透けてくると、面白く感じられるようになります。

 

 

味わい道② 問題背後の作問者を感じよう

さて、上では共通テストというものを作る上で、関わってくる存在3つのうち2つについて考えを進めてきました。

最後の1つ、作問者については、基本的には2つの存在が期待するものを具現化するように、要望に沿いながら(ある意味制約を与えられながら)作問していくことになります。

 

……てことは、語ることなんてないんじゃないの?と思うかもしれませんが、

いやいやそんなことはありません。

作問者が問題を世に出すまでには、数多のストーリーがあるのです。

それを知っていると、ちょっと問題を眺めたときの面白さも増すかもしれません。

 

作問の前には長い題材選びがある

生物基礎・生物の問題では、様々な実験が出てきます。

中には教科書では見たことのないようなものも当たり前にありますね。

これらの問題はどのように出来てくるのか?元になるのは「論文」などの、世に公開されている研究成果やデータの数々になります。

 

ですので作問する場合は、まず教科書・図説・論文等の元となる題材探しから大抵スタートします。ここぞという時用に温めていたものを出す場合もありますが……。

次にそれを一生懸命読み解いて、情報を整理していきます。

どんな手法で、何がわかったのか……

論理的に導けるものであるか、

論文の信憑性はいかほどか(作問してもいいレベルの確からしさがあるものか)、

使っている手法は突飛なものではないか等など、様々な視点で論文を精査していくのです。ここにはものすごい時間と労力がかかります。

 

なぜそんなに色々考え、この段階で時間をかけるのか?について少々説明を付けましょう。

1つめの理由は、上でも述べたように、作問は「教科書内知識で処理できる」「高校までで身につくであろう論理的思考力で処理できる」形に必ず落とし込まねばならないからです。そこを逸脱することは決してなりません。

とはいえ、論文は高校生の問題になる素材として最適化されているわけもありません。ということは、作問者がその論文をしっかり読み解き、こねくり回して、高校生が解ける問題に変換しなければならないんですね。

高校時点で理解しにくい手法であれば、最小限の情報を与えて手法を説明しなければなりませんし……

題材についての説明、何を研究したいのかの説明も、説明が長すぎると問題を解くのに差し障る……

とはいえ与える情報が多すぎると、問題として出せるものがなくなってしまうし……

もちろん問題として問う単語については、文章内で説明に用いることができないので、限られたパーツで作っていかねばならない……

そんな風に色んな制約に縛られつつ、論文を問題に仕上げていくのが最終目標なのです。なんとなく、これらの制約をすり抜けて問題になる題材は少ないだろうというのが分かるでしょうか。そう、無事問題になる題材は、実はかなり限られているのです(敏腕の人はどんな題材でも作問してしまう人もいますが)。

 

ということは、もし素材が良くないことに気づかないまま作問作業を進めてしまうと、実は使えそうになかった……と途中で挫折したとき、もう一度1から素材探しをしなければならなくなってしまうんですね。このように、素材探しの時点で作問者が論文を理解していないと、後々大幅なロスになってしまうので、選定作業にかなりの時間がかかること、そして様々なことに気を回すのは当然のことなのです。

 

2つめの理由は、作問者にはある種の責任があるからです。

それは、作問者が作った問題によって、それを問く人々にある種の知識との出会いが生み出されてしまう、というものです。これは責任重大です。

例えばSTAP細胞の例を挙げましょう。もし、STAP細胞について作問して、世に出してしまったらどうなるか。……意欲的な生徒であれば自身で調べて「STAP細胞はなかったんだ」とわかりますが、ほとんどの生徒は自身で調べません。

問題として出会った知識は、そのまま新たな獲得された知識として残ってしまうのです。

ということは、あまりにも杜撰な研究結果や、捻じ曲げられた研究結果をもとに作問をしてしまうと、多くの人に間違った知識を植え付ける源になってしまう可能性もあるわけです。責任重大でしょう?

だからこそ、作問者が題材を選ぶ時は、慎重にならざるを得ないのです。

 

そして最後3つめの理由は、やっぱりいい問題を作りたいからです。

いい問題ってなんでしょう?

制約を守った問題……勿論そうですね。

適切な難易度ば・バランス感覚の問題……これもいいでしょう。

確かにそうなんですが、でもやっぱり作問者の心のどこかには、「生物学を楽しんでほしい」「生物学の感動を伝えたい」というものがあり、

それ故、ストーリーがある問題、

学びがあって、楽しくて、驚きがある問題、

そうして問題を解くという行為を通して、感動を感じられるような問題がいい問題だな、という意識があるんです。

だから、こういう意識を持つ作問者の人々は一生懸命、「いい問題」になりうるような「面白い」題材を探します。時間を食う作業になって当然なのです。

 

 

題材を選んだら作問の「自由」が立ちはだかる

とまぁ、こういったことを踏まえて題材を時間をかけて探すわけですが、

これだと決まったら次は作問を実際にしていきます。

論文を読んでいる間に固まってきたイメージをもとに大枠を作っていくわけですが、これも案外大変です。というのも、一つのことを問う方法は複数あるので、どの問い方をすべきかはかなり自由度が高いからです。

例をあげましょう。あなたは、「生物の身体は細胞でできている」ということがわかっているかどうかを試したいとしましょう。どういう問題を出しますか?

ある人は穴埋め問題にするでしょう。 

  • □の中を埋めよ。 「生物の身体は□でできている」(このままだと複数回答が予想されます。語群をつけるかどうか、悩みますね)

ある人は正誤問題にするでしょう。 

  • 以下の文章の正誤を判定せよ。 「生物の身体は細胞でできている」
  • 以下の記述a~dのうち、正しいものの組み合わせを選べ。 a「生物の身体は細胞でできている」 b……

ある人は選択問題にするでしょう。

  • 以下の記述a~dのうち、正しいものを選べ。 a「生物の身体は細胞でできている」 b……

共通試験ではあり得ませんが、論述問題にもできますね。

そもそも「生物の身体は細胞でできている」について問いたいなら、誤った文章を述べてそれを誤りと判定できるかどうかで検査してもいいわけです。すると一気にバリエーションが増えます。

とまぁ、色んな問題形式がありますが、それぞれ実は問えるものが微妙に異なります。全部同じならそう悩む必要はありませんが、微妙に違うので悩みます。

こういう単語関係ならまだしも、実験から出題するとなると、グラフからも出せるし、計算でも出せるし、実験手法でも出せるし、考察でも出せるし、実験そのもののデザイン面でも出せるし……出せる源が多様にあり、かつ各々に問い方が複数潜在的に存在する状態になります。そんな中で作問者は、それらの可能性をすべて収束させて、一意にビシッと定めなければならないのです。

 

共通テストは選択式なので、記述式よりも自由度は低い……と見下されがちですが、それでも十分自由度があるんですね。

かつ、その中でも工夫することで様々なことを問えるようになる。

だからこそ作問者はその可能性をフル活用して、最大限能力を問えるような、共通テストにふさわしい問題に仕立て上げる必要があります。

 

ということで、延々と考える作業の始まりです。全然簡単じゃないですね。

大抵一回決めてみても、後から見返すとどうしても不服になります。何度も何度も全体を見返し、個々の問題を見返し、

難易度や、何を問う問題が何問あるか……みたいなバランスを調整したり、

表現をいじくったり絵を足してみたり、終わりのない工夫が続くのです。

 

作問の最後には熱い議論がある

で、そんな練りに練った問題を持ち寄って、今度は会議で、大人数で揉んでいきます。

個人でできることには限界があるし、問題すべてを揃えて見た時の印象は個々を見たときとはまた異なるからです。

おでこを突き合わせて、一つ一つの問題について、

論文の読み間違いはないのか?(論文に本当に書いてあるのか……ファクトチェックは超大事です)

選択肢の正誤問題は大丈夫なものか、本当にそうだと言い切れるものになっているか?(教科書準拠で一応進むが、教科書に明確に記載されていない(が、そうだと思われる)事項については絶対調べないと進まない)

「間違ったこと」「逸脱したこと」が問題になっていないか?

問いたい能力を問える問題群になっているか?(知識問題だけではだめ)

リード文や選択肢の文章は適切か、誤読を産んだり難解な表現になっていたりしないか?

そもそもこれを問うことは適切か?(高校生時点でわかっていたいor考えることができてほしい、という理想に沿っているか)

などなど、無数の問題について検討を進めます。

特に一番最後の「そもそもこれを問うことは適切か?」という観点は大事なものになります。もしこの観点が欠けていたら、奇抜な問題や、知識として丸暗記すべきないものを丸暗記させる問題になってしまいかねません。

問題というものは、「絶対身についていてほしい」ものを確かめるものであると同時に、「この知識・考え方・能力は身に着けなければならない重要なものだよ」というメッセージを発信するものでもなければならないと私は思います。そういう意味で、ただ揚げ足をとるだけのような問題は許されない。真摯な勉強をしてきた人が、まっすぐ報われるような問題であることも、大事なことのです。

 

このような議論を各個人が遠慮なく意見を出し合い、戦わせ、そして問題を修正し、また議論にかける。これを何度も何度も繰り返して、やっと問題が形になってくるのです。

 

 

そういう作問者の血と汗で出来たようなものが今目にしている問題だと思うと……すごい!ってなりませんか?

加えて、「人々が力を合わせるとこんなにも良質な問題が生みだせるなんて、すごいなぁ」という感動もあるのではないでしょうか。

適当な思いつきでは生み出せないバランスと問題の美しさが、ここには在るのです。

そして何より、作問者の気持ちがー「これは面白いでしょ!」という純粋な、学問を楽しむ気持ちがーそこにはあるのです。「これだけは身につけて頑張っていってほしい」ーそういう、生物学の道に進む人たちへのエールも、含まれているでしょう。

そういうものを問題から読み取ると、問題を通して見えない作問者と対話しているようで、私はちょっと楽しくなります。皆さんもきっと、楽しくなれると思います。

 

 

味わい道③ 問題という読み物から学ぼう

上で話したことと重複する部分もありますが、すべての問題は生物学において重要なことであったり、面白い事象であったり、

興味深い研究であったり……そういったものをベースに作られてきます。

ということは、問題は問題なんですが、ある種「読み物」に近い部分もあって、私達は問題を通して何かを学べて、純粋に楽しむことができるはずなんです。

だから、問題だ!解かなきゃ!と硬くなってしまったり、

分からない!もうだめだ!と悲痛な思いになったりするのではなくて、

心に余裕を持って、へぇ、そんな事があるんだ!この考え方は面白いな、

なるほど確かにこうすると実験で迫れそうだな、自分だったらどうしよう?

こんな疑問思いつくなんてすごいな、こんな研究があるなんて知らなかったな、などなど、

そんなのびのびとした感想を抱きながら眺めてみてはいかがでしょうか。

今の高校生ってこんなこと勉強してるんだ、という驚きでもいいですよね。実際、生物学の教科書内容は著しく変わっているので、なんだこれはという内容もかなりあるのではないかと思います。

そんな風に楽しんだっていいじゃない!大人なんだもの。

 

 

多くの人が味わえるようになったらいいな

ここまでひたすら話してきたのは、繰り返しになりますが個人的な考えでしかありません。

これが正解でもなく、間違いも当たり前に含んでいるでしょうし、

足りないものも大量にあるでしょう。

なので、今まで書いてきたことは全部でたらめだったのかもしれません。

そもそもうまく書けているとも思えません。勢いのまま書いてしまったので、意味不明なところも多く、冗長的なところも多く、なんていうか酷い文章だったでしょう。

 

でも、私は思います。

私のこの意味不明で、冗長的で、拙い文章はこれだけでは価値がないけれど……

もし読んでくれた人が、共通テストというものを作る背景にあるものに思いを馳せるきっかけになって、

今までとは違う楽しみ方が増えたら、それはものすごい価値になるのではないか、と。

 

共通テスト、いい問題が沢山作られているんです。

素敵な題材も沢山あります。

そういう問題に携わった人たちも、多くの人に見てもらったら報われる部分もあるんじゃないかなと思うし、

個人的にはこの楽しい題材が受験生のみに共有されるだけでは、もったいないとも思うんですよね笑*1

 

てことで、皆さんも気軽に共通テスト生物基礎・生物を眺めてみてくれたら嬉しいです!

長~~~~~~~~い文章にお付き合いくださり、ありがとうございました。

*1:そういう意味では各大学の入試問題も、日本生物学オリンピックの問題ももったいない!ってなってるんですよね。色んな人とシェアしたい……

2022年度大学入試共通テスト 生物 所感

本試共通テストの生物を解いたので、感想なりなんなりを書いていこうと思います!

 

生物基礎はこちら↓

i-my-mine.hatenablog.com

 

2022年度共通テストの問題はここに掲載されていますので、興味あればご覧ください↓

www.asahi.com

 

 

第1問 進化、分子系統樹

霊長類の系統関係を調べるためにアミノ酸配列を比較する……という問題です。これ系の問題は問題集でも当たり前に載っていますし、受験勉強をした人であれば出会ったことのない人はそうそういないでしょう。分子系統樹の処理は受験の世界ではほぼほぼお決まりパターンで、誰しも一度は真面目に勉強するものです。

とはいえ、それだけ頻出で知れ渡っているということは、同時にそれだけ大事なものでもあるということ。特に昨今はDNAに準拠して系統樹を書き直したり分類をやり直したりが盛んになっていますので、こういう知識は欠かせないもの、大学生には必須で求められるものでもあります。

そういう意味で、突出もしてない典型問題だけど、手堅く、大事なものを持ってきた……という印象ですね。

問1 ヒトの進化で獲得された形質の話。知識問題ですね。

でも一応、「直立二足歩行に伴い獲得された特徴」という出題方法にはちょっと捻りがあります。

色んな知識を丸呑みするんじゃなくて、関連付けて把握せよというメッセージかも。

問2 アミノ酸配列比較から系統樹を作る問題です。

正直、題材が霊長類なのでちょっと知識があれば表を処理しなくてもわかっちゃいますよね。系統樹の形状もストレートなタイプだし。

問3 分子時計の知識を用いて各種の分岐年代を考えると同時に、推定値と実測値が異なる現象(分子時計のズレ)についてどんな原因が想定されるか問う問題。

計算問題はありがちです。とはいえ大事な能力ですね。

ズレについても、そもそも分子時計というものがどういう想定で使用されるかが分かっていれば問題はないわけで、そういう意味で「ただ丸暗記するな、何かテクニックを使う時には『何を想定しているか』『何が現実と乖離していてどういう可能性も潜んでいるか』を考えろ」というメッセージにも感じられます。

理由の文章たちについては、少々文章読解力が必要ともされていました。生物学をやる上で文章読解力は必須なので、そこも測りたかったのでしょうか。

 

総評

上でも述べたように普通で、手堅く、でも大事なところが問われました。昨年度も第一問から進化・分類が出題された背景を考えると、初手進化・分類は共通テストで割とありがちパターンになっていくのでしょうか。

生物の教科書についても、進化・分類の比重を大きくし、学び始める最初の段階から進化・分類を意識づけて全課程を勉強していくスタイルに切り替えられようとしています(実際今もその傾向は少々あるのですが、もっと強くなると言われています。キャンベル生物学を想像してもらうといいと思います)。

だから最初から進化・分類なんでしょうか?そういうわけではないと思いますが。

問3については新傾向寄りというか、新傾向で出てくる「あるテクニックや技法について何が前提とされているか把握していなければならない&その前提と現実との差においてどういう可能性が存在しうるかを考え出せなければならない」という思考がある気がします。

生物学では様々な技法を用いて実験を行うわけですが、研究する際には常にその技法の穴を知っておかねばならず、出てきた結果についても常に疑いの目ーこういうことが起きる可能性もあるのではないかーを持っていなければなりません。なんでもキットを使えば「正しい」ものが見える、「必ず」わかると思ってはいけないのです。

そういう姿勢を育むためには問3は重要な問題でしょう。

とはいえ問2はストレートすぎてボーナス問題状態でした。どうせなら、もっと意外性のあるあまり知られていない生物の系統樹を描かせたりしてほしいし、もっと言うなら変な形の系統樹を描きだしたりしたいですよね。

 

 

第2問

A 植物の生態系での振る舞い

キク科の草本Rに存在するA型株とB型株について、AはPに感染してBは抵抗性を持つ……というところから発展させて、Pがある場所とない場所でAとBを混ぜて育て、各地区での個体数や乾燥重量を見てみる……という実験からスタートになります。

与えられた乾燥重量の図については、一見層別刈り取り方による生産構造図に見えなくもないのですが、実は全然違います。ので、ちゃんとリード文を読み、かつグラフの縦軸横軸を読んで、何が表現されているか理解する必要があります。

こういう「あまり見たことのないグラフや図を提示されたときに、その場で情報処理が正しくできる能力」も共通テストで測られようとしている能力です。中々考えられた問題だと思います。

問1 与えられたグラフと数字・情報から、また新たなグラフについてどのような線が引けるのかを導き出されるという多段階情報処理の問題です。

面倒ですね。大事だけども。

とはいえ割と勘で行ける気もします。

問2 与えられたグラフを解読することで現実世界のある具体例について考察を行うという問題です。

なんとこの草本R、1960年代オーストラリアでAが沢山生えて農業被害を出すという実例があるんですって。で、困ったので海外から持ってきたPをまいたら、今度はBが生えて困ったんだとか。面白い実例ですね。

問題文中の会話ではこの実例に大使、「外来の病原菌を移入する際には、慎重な検討が必要だ」という一文が出てきます。この文自体は問題にあまり関係はないのですが、外来種問題への意識をもたせたいという気持ちがにじみ出ている気もします。

この問題自体は簡単で何も苦にはならないのですが、実例と実験結果がぴったりくる構造は面白いですし、いい問題ですね。

 

B バイオテクノロジー(遺伝子組み換え)

Aでキク科草本を出したからか、Bもキクを用います。が、トランスジェニック植物作製技術によって病原菌抵抗性をつけようという方針で、問題内容自体はただのバイオテクノロジーの問題になります。

現在の生物学では研究の際バイオテクノロジーの知識は必須とも言えるほど大事になってきています。猫も杓子も遺伝子……という感じ。そういう意味では共通テストでバイオテクノロジーのことを問うのは大切です。

問3 ただのプラスミド作りの話。

とっても平凡な知識問題でした。単語を知っていれば答えられます。

問4 遺伝子導入処理をした後の細胞たちを培養する環境についての問題。

大腸菌の形質転換で言うと、プラスミド導入のための処理をした直後、集団をアンピシリンとかテトラサイクリンみたいな抗生物質を含む培地で育てますよね。どうしてそんなことするの?という問題です。

大腸菌の場合はプラスミドにアンピシリン耐性遺伝子とか、テトラサイクリン耐性遺伝子をもたせておくことで、培地上でプラスミドが導入されたもののみが生き残るようにしたいわけですよね。

その話を知っていればまぁ問題なく解けたのではないかと思います。

実験手法についてちゃんと理解してやってるのか(何が目的でこの動作をするのか)、を問う問題ですな。大事。

問5 DNAの図を見て転写関係の問題。

RNAポリメラーゼの進行方向を考えてアンチセンス鎖を選ばせる……というやつなんですが、まぁよく出ます。典型問題です。まぁ大事だから……。

問6 作製したトランスジェニック植物の自家受粉をさせた場合抵抗性個体が何割出るか?というメンデル遺伝の問題です。

一遺伝子か~、ぬるいな~と思いつつ。まぁでもメンデル遺伝の発想は実験計画でも絶対大事なので、確認しておくのが吉でしょう。

 

総評

グラフや数多の情報を処理させ、数学的に考える技能を測る問題は大事ですね。生物学を志す子、なぜか数学苦手な子が多めなんですよね……でも実際実験するとなると必要だよ、生きていく上でも必要だよ、ということで、こういう問題は世間にも需要があるものでしょう。

Bはただのバイオテクノロジー問題だったので、あまり個人的には面白みがありませんでした。そりゃあバイオテクノロジーの知識は現代っ子には必要ですよ?実験手法の把握も大事。でもね、もうちょっと題材が面白くなってもいいと思うんですよ……問い方も。Bはすべての問題が典型だったので、その点ちょっと残念でした。

解いてて面白いな~、何が起こってるんだろう、と考えさせるようなものが出ると楽しいですよね……。

 

 

第3問 Hox遺伝子(limb bud)

発生、肢芽、Hox遺伝子……ということで、これもまたよく見るなぁという題材です。

リード文では、Hox遺伝子がどの体節で働くかによって肢芽の形成場所が決まること、それ故鳥によって首の長さが違うことなどが話されています。そうなのかー。

自分は脊椎動物の頚椎がどんな首の長さでも7個(と言われている)なので、鳥も頚椎数が決まっているんだと思ってたら、そんなことはないんですね。学び。

問題自体はひたすら実験、実験を文章で説明されて、それを読解して頑張るだけになります。ボリューム大きいから効率よく処理しないと大変ですね。

問1 Hox遺伝子のことどれだけ知ってるの?みたいな問題。

正しい記述の組み合わせを選ぶわけですが、a~dの記述がなんか気持ち悪いなと思いました。

例えばaでは、「核に移動してDNAに結合するタンパク質の遺伝子である」になっています。そりゃ、Hox遺伝子は転写因子なのでaは正解ですよ?正解ですけど、こういう聞き方するんだなって……。

更にdは「バージェス動物群はまだ持っていなかったと考えられる遺伝子である」です。この根底には恐らく、

  • バージェス動物群は体節構造がある
  • 現生生物を見渡したときにHox遺伝子のシェアの仕方から考えるとバージェス動物群時点で原型を持っていた可能性が高い

という思考があるんでしょうが、でも、本当に持っていたんですか?????否定される可能性は一切無いんでしょうか。いくら体節構造があるとはいえ、Hox遺伝子群以外でそれが成立している「可能性もあり」ますし、遺伝子のシェアについても怪しいところが拭いきれない気がします。いや、そういう研究はあって、明言もされているのかもしれませんが、確定事項でしょうか?バージェス動物群の遺伝子そのものが見られたことはあるのでしょうか……?

バージェス動物群がHox遺伝子群を持っていることの真偽は置いておいても、これは共通テストで問わなければならない、選択肢に入れなければ入れないものだったのでしょうか?何を測りたくてこの選択肢を入れたの?という違和感が消えません。

サイエンスの姿勢を育むというのであれば、むしろこういう「可能性を否定しきれない」ものは積極的に入れないほうがいいし、なんなら教科書レベルの知識じゃないもの&当てずっぽうな推測に近いものでしか迫れないものを選択肢にするべきではないのではないでしょうか。

「可能性を否定しきれない で言ったらすべての選択肢が作れないし何も問えなくなってしまうじゃないか、生物学でわかっていることはすべて『確からしい仮説』でしかないのだから」という意見もあるでしょう。だとしても、その中でもグラデーションがあり、教科書に堂々記載していいものと、外した方が良いものがあります。丸暗記すべきものと、丸暗記せず疑いの目を保つべきものがあります。今回のdは疑いの目を向ける方が正当な対象ではないかと思うのです。

 

まぁ、誰かが確定的に言ってるんだからこれが選択肢になったんでしょうけど。共通テストとしてどうなの?という気持ちは私は拭えません。論理的思考力とかの範疇でもないだろう。

問2 会話内容と数多の実験結果から考察を導けという問題。

まぁ、ありがちなやつです。読解力必要。

問3 どういう実験をすれば仮説が検証できるか?という問題。

ストレートですが、実験を考えさせる問題は大事ですね。

問4 分裂細胞を標識するにはどの分子を目印にするか?という問題。

これも割と典型問題というか、よく出題されるのであんまり教育的効果が高いかはわからないんですが……ロジカルに考える必要があるものなので、需要はあるでしょう。

問5 読み取れたことが先にあって、そこから「この読み取った内容はどういう実験と結果から来たんでしょう」を想像するやつ。

ストレート。ですが、教科書とかを読んでいるときに、「これどうやって検証したんだろう」「この検証で十分だろうか」みたいなのを考える能力はあったほうがいいですよね。それこそ疑う力というか。

 

総評

難しくない。典型ですし、ネタは面白いとかではないです。

難しくないですが、やはり個人的には問1の選択問題が嫌でした。

実験デザインを問われる問題は年々二次でも増えている気がします。実験デザイン力を磨こう。

 

 

第4問 アリの道標フェロモン

いいな……と思いました。古き良き古典行動学的な匂いがします(別に現代でもいいんですよ。メカの香りとか分子の香りとかがしないという意味です)。ある種泥臭く、ある種発想力勝負で、その場にあるものでできる実験。いいですね。分子だ、バイオテクノロジーだ、遺伝子だ……という中で、こういう純粋な実験問題が出るとなんだかホッとします。実家に帰った気分だよ。

何がいいって図の道が謎にくねってるがいい。加えて結果の表の作り方が簡素なのがいい(0-20%が○回、20-40%が□回……っていう区切り方、良い)。ちゃんと読み取り能力を問われているのも良い。問題は簡単ですけど、いいですね~。

問1 実験の結果読み取り。

難しくないです。表解釈力を磨いていけ。

問2 実験結果読み取り+考察問題です。ここで自身が持っているフェロモンの知識とアリの行動(実験結果)がピタッとハマります。気持ちいい!アリ可愛い!!!

問3 フェロモンの知識問題。

なんとびっくりするほど定義問題です。定義をしっかりきっかり覚えている人は即答できるけど、生物の動きを味わう系の人には難しい。まぁ、定義を蔑ろにせずしっかり覚えることも大事な技能の一つなので、問われても仕方ないです。

ちなみに定義問題は昨年もありました(生得的行動と学習のところ)。これももしかしたら今後の共通テストで出続けるのかもしれないですね。

 

総評

良い実験問題でした。下手したら高校生でも、なんの特殊な器具もなくてもできそうなのが良いですね。

ありんこの動きも想像しやすいだろうし、それが分子の知識と繋がって面白いです。表も独特でちゃんと読解力を問えます。バランスのいい問題だと思います。

 

 

第5問 被子植物と昆虫の視細胞

リード文では、被子植物とその送粉者の話が語られます。「おぉ、てことは送粉の面白いお話か!?」と思いきや、裏切られて昆虫視細胞のお話です。昆虫の紫外線を感知できる視細胞のおかげで、ヒトには見えない花のシグナルを受け取ることができるという話ですね。そっちか~。送粉、アツいと思ったのになぁ。

問1 ただの被子植物の知識問題。

具体的には教科書後ろの方の植物の分類がわかっていればOKです。

ですが、ちょっと捻りたかったのか、進化の話(シャジクモ類)を入れてきています。進化と分類好きねぇ……。

個人的にはaの選択肢迷ったんですが、クチクラ層ない植物は本当にいないんですか???薄いのはいるけど、無いのはいないってこと???あとコケのクチクラと被子植物のクチクラって同一視していいやつですか????なんかちょっともやりがありました。

問2 ここに来てなぜか連鎖の問題、しかも配偶子の染色体の持ち方の問題です。

連鎖の中でも一番簡単な問題が出てきたので肩透かし気味です。ストレートです。

問3 ショウジョウバエの視細胞に関してタンパク質の有無と分化の話を聞いた上で、どういう実験をすればある考察が導けるか、という実験デザイン系の問題です。

誤答があからさま誤答なので考える力とかいりません。受容体-アンタゴニスト関係のXとYのはずが「XがYの転写調節領域に結合するか調べる」ってどういうことやねん。

問4 変異体と野生型で色んな光当てて実験して、結果を解釈する問題。

全然難しくないのでストレートな考察問題です。

 

総評

リード文で送粉出したので送粉の話かと思ったのに、裏切られたのでちょっと残念な気持ちでした。送粉もそろそろいい問題が出てほしいね。

とはいえ視細胞の分化の話は普通に面白い現象だと思います。面白いけど、あんまり考える力もいらなかったし、データ処理力もいらなかったなと。問題が面白くはないかな。

 

 

第6問 植物の低温応答

この問題のリード文、一文目見てびっくりしました。

なんと宮沢賢治から始まります。

科目を間違えたかと思いました。えぇ。しかも宮沢賢治関係ないです。

宮沢賢治、農業はやってたけど、生物の共通テストに自分が出されるとは思いもよらなかったでしょうね。

そして出題者は「分野横断、教養だ!」とか「この入りなら楽しいだろう!」とか思ったのかな。「身近な題材からスタートだ!」と思ったのかな……。宮沢賢治は身近なのか?身近なのか……。

 

問題内容としては、低温に対する植物の話になります。冷夏ではイネの種子が形成されにくくなる(成熟花粉が正常に形成されないから)という現象について前半は追求していきます。最後寒さ関連で凍結の話が出てきます。

問1 一般的な発芽の知識問題。

まぁ、普通に勉強してれば余裕でしょう。

問2 色んな発生段階で低温にさらしてどうなるか見るというもの。

グラフが与えられますが、捻られてもないし、あからさまです。ストレートな問題です。

問3 イネを水に浸しておくと低温の影響を受けない、という話を題材にしたものです。

私はそれを知らなかったので、面白いなと素直に感動しました。知恵がすごい!

問4 低温処理がジベレリンとどう絡むか考える問題。

これは面白いですわ!ジベレリンがここで出ると思ってなかったですし、その知識が現代の矮性イネ品種の開発に絡む懸念点につながるとは思いませんでした。いや~、たのしい……。

問5 植物を一気に低温に晒したらだめだけど、段階的に気温を落とすとアミノ酸と糖を作って耐えるよという話から、考察を検証するための追加実験を提案する問題。

答えは比較的ストレートですし、糖とアミノ酸の話もハクサイ甘い云々で一度は聞いたことがあり馴染みがあるでしょう。身近な題材でいいですね。

 

総評

入りが宮沢賢治で度肝を抜かれましたが、沢山学びと発見があり、解く快感があって面白い問題でした。良問!

 

 

昨年との比較、すべての振り返り

昨年の共通テスト生物は、論理的思考力を問うことと、真新しい題材を採用することに偏重した結果、知識がなくても解ける問題になってしまい、超易化という結果をもたらしました。

ロジックを問う問題になるとどうしても考えるための題材を与えなければならなくなりますし、真新しい題材となるとどこまで説明すればいいか……という塩梅が難しくて、「知識がちゃんとある」ということを確かめるような思考問題や知識問題が作りにくくなってしまうんですよね。

 

なので、あのある種すごすぎる問題に比べたら今年はかなりマシになり、共通テストらしい、またはセンター試験らしい堅さを取り戻したように感じます。

知識も必要になったし、多段階の情報処理も必要になったし、読解力も必要になったので、平均点は軒並みに戻るでしょう。いいですか、いくら今年の共通テスト生物が昨年生物から平均が下がったとしても、それは「当たり前」で「あるべき姿に戻った」というだけです。昨年が異常です。それだけは忘れずに。

 

とはいえ生物基礎ほど解いてて楽しくはないですし、ワクワクしない、面白くない……といったものが目立ちました。勿論良問もあるんですが、典型問題が多すぎて、問われているところも「どこかで見たな」というものが多すぎる気がします。

選択肢の作り方もところどころちょっと違和感があり、なめらかさに欠けるなというのが個人的な感想です。

 

ここからは本当にただの妄想ですが、昨年の結果を受けた作問会議はもうガチガチに堅い状態になったんでしょう。

「去年の失敗はできない……」「新傾向って何……」って苦しんで、悩んで、唸りながら作られたのではないかと想像します。

その結果、あまり挑戦的な題材は採用されず、このような問題に落ち着いたのではないかと感じます。

個人的には、入試問題=楽しく学べる試験、発見があって、感動があって、ストーリーがある試験であってほしい、というのがあるので、もう少しのびのびとしてくれたら嬉しいです。

同時に、答えの作り方と、何を問うべきかについてはあまりのびのびとはせず、しっかり考えて貰えたらいいなと思います。「これを聞いて価値があるのか?」「この思考に意味はあるのか?」「ここから何が問えるのか?」……生物学は本当に問題を作るのが難しい学問であるが故に、これは真剣に考える必要のあるところだと私は考えます。

 

あと気づいたこととしては、昨年顕著だった「進化を出題しまくりたい!」という傾向は今年は見られなかったですね。昨年の問題では、なんでもかんでも進化に結びつけて終わっていましたが。進化に結びつけるとまた知識が比較的要らなくなるので、昨年の悪化に一役買っていた要素だったんですが……でも進化って面白いんだよね。

で、そんな進化が今年はあんまりなくって、出すとしても過去の進化上の出来事や知識のみになっていました。反省があったんだろうか。すべては藪の中ですな。

 

 

なんの能力があったらいい?

今回の共通テストが今後の共通テストのほぼ標準形になるとして、必要なのは

  • 知識
    • 明確な定義
    • 関連付け(直立二足歩行→骨盤の変形、みたいな)
  • 実験手法理解(なんのために何をしているか)
    • 穴についても理解をする
  • 測定手法などの理解
    • 前提は何か
    • 現実と前提との乖離、そこで起こりうること
  • 実験デザイン力
    • 仮説を検証する実験
    • ある結果を求めるのに必要な実験
  • 「この実験・知である結論を出すのに足りるか」という過不足を認識できる力
  • グラフや表、図の読み取り力
    • 新規でも対応できる力
  • 複数の情報を同時処理する力(大量の実験、大量のデータ)
  • 論理的思考力(ロジックを組み立てる、矛盾を見つける)
  • 数学的処理能力
  • 典型を押さえていること
    • 身近な出来事に精通していること
      • かつそれを調べられている、疑問に思えていると尚よし

というところでしょうか。見落としあるかもしれないけど、ざっとこんな感じじゃないかな。

 

 

ということで、あくまで個人的な意見と感想を書き連ねさせて頂きました。違うことを思っていただいても全然構いません。「私はこう感じた」というだけなので、そこはご了承ください。

 

追試はどんな問題が出るか今から楽しみです!

 

P.S. Twitterのスペースで突発的にやった「共通テスト生物基礎・生物をみんなでながめる会」、めちゃくちゃ人が来てくれてびっくりしました。皆で楽しく共通テストや生物の入試問題に触れ合えるの、いいですね!またわいわいやりましょう。

2022年度大学入試共通テスト 生物基礎 所感

2022年度大学入試共通テスト、終わりましたね!

受験生の皆さんはお疲れさまでした。

早速問題も公開されたので、解いて所感をつらつら並べたいと思います。恒例行事みたいなもんだからね。

 

 

第1問

A ホタルの発光

ホタルのルシフェリン、ルシフェラーゼ反応を使って生物が持つATPを検出できる!という話。

問1 酵素に関する当たり前体操

問2 ATPに関する当たり前体操

問3 ATP量から細菌数を推定する方法があるが、その前提条件として何がなければならないか?という問題。これは面白い。色んなキットを使う時、解析を行う時に「どういう前提だと何が成り立つのか?」「逆に何を無視しているのか?」ということを考えるのは大事なこと。良問!

B DNA抽出実験

からの、なぜ花芽使うの?この白い糸何?って話。DNA抽出実験って簡単だけど、奥が深いんだよね、考え出すと。それを題材にして奥深い内容に仕上げるパターンの問題は、毎回ステキだなと個人的には思っている。

問4 実験においてブロッコリーの花芽をなぜ使うのか、顕微鏡写真から考える問題。授業でも当たり前に話をするけれど、顕微鏡写真を見せたことはなかったなぁ、と思った。いい画像だ。使いたい。

問5 DNAを測定するための試薬(青色光で黄色を発する)を使ってDNA濃度を求める問題。図を用い、リード文中の数字を用いて求めていくという点で、実験で出現するリアルな計算処理が行われていて良問だと思う。

問6 抽出される白い糸の中にDNAとRNAがあるとしたらどういう実験でそれを求められ、どういう結果が出るか、という問題。いい仮説検証実験ですね。

 

総評

難易度もほどほど、題材もよく、授業の発展という感じでバランスよし。

楽しく、面白く、興味深く解き進められるのではないでしょうか!

計算能力や仮説検証能力も問うことができていてGOOD。

ストレートな知識問題もあって、救いがあるね。

 

 

第2問

A 光学式血中酸素飽和度計の仕組み

コロナの影響がついに大学入試問題にも!?ちょっと興奮しますね。

あれだけ話題になったんだもの、そりゃ時事問題に敏感な受験生は調べてしかるべきよ……って感じで出題したんでしょうか。おや!この血中酸素飽和度計出題したらいい問題になるんじゃないの!?って出題者がウハウハしちゃったんでしょうか。

とはいえ鬼畜問題ではなく、普通にリード文から答えは導ける上に、勉強にもなります。未だに仕組みを理解してないのであれば、大人であっても解いたら勉強になるしいいのではないでしょうか。

 

「でもこんな授業外っぽいもの出してくるなよ!」って思う人もいるかもしれません。いやいや、そんなことないんですよ。HbとHbO2の光吸収が異なることは、実は授業で習っています。動脈血と静脈血はそれぞれ鮮紅色と暗赤色、ってやったでしょう?あれは光吸収が違うからですよね。*1

そう考えると、ちゃんと授業の延長線で、しかも勉強範囲内。いい発展問題だなぁ。

問1 「吸収」と「透過」がちゃんと理解できているか?&リード文で説明したメカの仕組みがわかっているか?の問題。「吸収」「透過」の処理って、案外実験慣れしてないとできない人多いんですよね。大事な技能の一つな気がする。その上、「何がわかるのか?」を第1問問3みたくはっきりさせようとしているあたりが素敵です。

問2 登山からの酸素濃度の問題。ありがちですね~。でも知ってると登山で役に立つし大事よね、と勝手に思っています。一応、よく見られる問題から捻りも入っていて、光学式血中酸素飽和度計を使用しています。光学式血中酸素飽和度計の説明をちゃんと読んでないと、図のどの値を使わなきゃいけないか分からなくなるんじゃないかな。リード文ちゃんと読もうね。

 

B 免疫

やっぱりコロナなのか??コロナのせいで免疫が来るのか??とドキドキして解き始めたら、細菌感染の防御の話でした。ざんねん。

リード文がシンプルすぎて面白い。作問してるとこういうシンプルisベストにしたくなる時はあるあるなんです。色んな単語を各小問で広げたい時とかは特にね。

問3 グラフ読み取りと知識。なんてことはないですな。とはいえ、リンパ節と胸腺と血管って、中々嫌な選択肢を持ってきたなぁと思います。好中球だから血管巡回なんだけど。白血球=リンパ節、なんて思い込んでる人も多いんじゃないでしょうか。

問4 拒絶反応の問題。ありがち。再生医療の話もあるし、現代っ子なら知っておきたい知識ですよね。でも、拒絶反応関連のこういう問題は今までよく見ては来たけれど、単語の意味も一緒に問う(免疫記憶、免疫不全、免疫寛容の違い)タイプのものはレアな気がしました。いい問題だね。

問5 抗体の実験問題。まぁ授業でやる通りなので、難しくないです。けど、4つ中1つしか答えがないのは怖いよね。各単語に関する事象をちゃんと理解していないと答えられないから、案外難しいと思う子もいるのかもしれません。

 

総評

難易度ほどほど、題材よし(ちょっと典型が目立つが)、授業の発展。いい感じですね。

ただ単に知識を聞くんじゃなくて、絡ませる、プラスアルファがないと正答を選べない、という問題が目立っていて、受験生は複数技能を求められているなぁという印象を受けました。特にAではリード文で与えられた情報をフル活用して解いていく必要もあったので、あ~新傾向だな~って感じです。

でもね、コロナに絡めてきたんだとしたら、個人的には免疫のところは集団免疫、mRNAワクチン、抗原検査からの免疫記憶だと思ったんですよ。基礎だからRT-PCRとかPCR、逆転写酵素エンベロープからの生体膜、そしてCRISPR-Cas9は問わないにせよ、抗原検査とかは作問できたでしょうに。追試で出るのかな~、それとも来年でるのかな。二次は普通にどこか出してきそうですよね~~~、たのしみ~~~~。

 

第3問

A バイオーム

ブナだ!ブナを食べるブナアオシャチホコだ!それをクロカタビロオサムシとサナギタケだ!と、ただのバイオームから生態系の食物連鎖に繋がって、お!面白いかも!!?!?どんな問題を見せてくれるんだ!?!?!?!?!?と期待が高まりました。でも実際はそんなすごいものじゃなかった。がっくり。

問1 地球温暖化でバイオームずれる話。ありがち。本当は、温度から何mバイオーム境界の標高がずれるか計算して考えなきゃいけないんだろうけど、勘でもわかるよなぁ、という印象でした。計算問題崩れ……。

問2 光-光合成曲線を使った問題。これは新傾向っぽい問題です。というのも、ブナアオが陰葉から食べ始めるスタイルだとして、被食度と二酸化炭素吸収速度をグラフにするとどういう形のグラフになるか?というのを問うているのです。中々ですね。グラフの形を選ばせる、っていうのも新傾向っぽいし、ブナアオが陰葉から食べ始める……というのをこういう形で絡ませるとは思いませんでした。良問だ~。

問3 栄養段階の名称の組み合わせを聞く問題。簡単すぎるただの知識がここで来たな、という印象です。

 

B 窒素循環

問題文自体はストレート。

問4 下水処理場で生物を利用した窒素除去がどのように行われるか、という問題。こういう系の問題の中では割とシンプル?な気がします。

問5 森林が消えたら流れ出す窒素濃度はどうなるか問題。これも比較的ストレートです。

 

総評

Aのリード文がおもしろそうだったので期待したんですが、期待した割には普通であんまり仕掛けもないような問題構成でした。

第1, 2問に比べるとストレートだし。

問2でブナアオの面白い習性を活かしてはいるけども、他の登場人物ももうちょっと活かせなかったかなぁ……。

 

 

完走の感想

楽しい問題もあり、わー!いいなー!この問題よいー!などとはしゃぎながら解くことができました。

問題として難易度が異常なものもなく、授業の発展型でありながら授業と問題文読み解き知識のみに依存していて、題材も比較的目新しいものもあるので良いバランスだなと思います。

全体難易度も例年並みだよね?特に去年と差はなかったように思いますが。なんなら去年より良質じゃないかな。

 

やっぱり共通テストたるもの、楽しい、発見、学びがあってこそだと思います。ストーリーがあって、解き進めるときの感動がある。これが最高ですね。ぜひぜひ、こういうクオリティを維持してほしいものです(第3問は残念だったけど……)。

*1:動脈と静脈の色が違うのは、血液自体の色合いに加えて、血管、皮膚など幾つか通して見るせいなので微妙なところなんですが……

閉リンク機構のロボットアームをBlenderで作る

完全に自分のメモ代わりの記事なので、めちゃくちゃ雑でも許してください。

 

先日、閉リンク機構のロボットアーム(というか手?)をBlenderで作成しました。


www.youtube.com

 

手の部分だけアップするとこんな感じで動きます。


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動画観るだけだとそんなに難しくなくない?何が難しいの??って感じだと思うんですが、

個人的にはかなり苦戦した末のこれなので出来上がった時の感動も一入でした。

具体的にどこに苦戦したかというと、

  • 手先の部分のパーツ
    • 2つの部品の動き(+根本の部品)に制御され、動きに制限や連動が出る……というのを作り出す方法がわからなかった
  • 左右の連動
    • 逐一右左両方の部品を動かすのは面倒なので、右と左が同じ角度分動くように一つのレバーで操作できるようにしたかったが、その方法が最初わからなかった

というあたりです。加えて、自分はそもそも機械っぽい、軸の固定された動きを今まで作ったことがなかったので、やり方をまったく知らなかったというところでも苦戦しました。調べ方すら分からずめちゃくちゃ時間がかかりましたし、その上動きの実装方法の候補が幾つかある&ドンピシャな答えはない、という状況だったので、試行錯誤しまくって時間を食いました。

 

 

てことで、自分ではうんともすんともならなかったので色んな人の叡智を結集して完成に至りました。

ざっくりどの段階でどの記事を参考にしたかと、どういうことがわかったかなどのメモを書いていきたいと思います。

 

軸固定で動かす方法

参考記事その1

rikoubou.hatenablog.com

1つめの参考記事からは、親子関係+軸の回転方向固定による軸固定で動かす方法を学びました。

これは普通にうまくいって、いい感じにもなるんですが、1つのオブジェクトに対して2つの親を作る……ということはできなかったので(もしかしたらやる方法はあるのかもしれないが)、親子関係の設定だけでは今回のものは作れませんでした。

 

参考記事その2

note.com

こちらの記事ではボーンを使った関連付け(部品サイズは動かない)による軸固定で動かす方法を学びました。

色々試行錯誤したのですが、結局このショベルカーのうでの記事がめちゃくちゃ参考になりまして、この記事に書いてあることを基に腕も作っています。

オブジェクトとボーンをペアレントして、エンプティを設置してIK設定することでうまくやれました。

 

左右を連動させる方法

参考記事

3dcg-school.pro

www.tomog-storage.com

簡単に言うと、ドライバーというものを設定することで左右が連動するように設定することができました。

現在のverはめちゃくちゃ便利で、あんまり難しいことを考えずにドライバー設定すればできてしまったので楽でした(とはいえタイプやスペースの適切な設定や、関数の書き込みなどが必要です)。

 

 

おまけ:金属質なものの作り方

hainarashi.hatenablog.com

ちょいちょい忘れがちなので記事があると便利ですね。

あけましておめでとうございます!

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます!

昨年も沢山の方に沢山お世話になりました。仲良くしてくださった方々、本当にありがとうございました。

今年も何卒よろしくお願いいたします。

 

毎年一応、去年やったことと、今年やりたいことを書いているので、2022年も同様にやっていこうと思います。

と言いつつもう今年も一週間ぐらい過ぎようとしてるんだけどね。早すぎるな……。

 

昨年はどんな年だったかな

ゆるふわ生物学のお手伝いを始めた

言葉通りですが、ボランティア要員として、生物学のより一層の振興のために、

ゆるふわ生物学さんの動画編集をお手伝いすることになりました!*1

動画編集の経験は今までほぼ無だったのですが、ゆるふわ生物学さんのお手伝いを通して沢山の技術を学ぶことができました。技術だけでなく知識もめちゃくちゃ増やせたので、自分にとっては本当にプラスになる活動でした。

メンバーの方々が本当にすごい人達なので、関わるだけで知識がもりもり増えて勉強になってありがたいです……!

ここで培った動画編集技術を他で活かせる場面が来るのかはよくわかりませんが……。

 

本当はもっと色々な生物学振興のお手伝いをしたいのですが、そうそうそんなご縁もなく、今はゆるふわ生物学さんのお手伝いだけをしています。

もしご縁があれば他の取り組みも沢山お手伝いしたいところです。

自分ができることは色々やっていきたいな~。

 

Blenderでヒトの形のモデリングができるようになった&動くようになった

カエルの発生の立体図を作るために始めたBlenderでしたが、

ヒト型のモデリングにも取り組み、かつ動かせるようになりました。

そこそこのアニメーション的なものも作れるようになりました。傍から見ればまだまだひよっこのレベルだと思うんですが、個人的には感動がありましたね……。

モデリングにおいても、動かすことにおいても、何か1つやろうとするたびに新たに学ばなければならないことが出てきて、必死こいて調べて勉強&実行しました。その御蔭で少々Blender周りの知識が少し増えました。

調べている最中は苦痛なことも多いのですが(簡単に求めているような情報にたどり着けなかったり、理解が難しいことがあったり、言われたようにやってみたのに全然うまくいかなかったり、ver違いで適用できなくなっていたり等々)、成し遂げると感動は一入です。で、やれた後は「どうしてこんなレベルのことで悩んでいたのか……こんなに時間を使ったのか……」と少々悲しくもなります。わかってから実行すると1分もかからないことが、最初やるときは2時間以上かかることだって当たり前にあるのです(私が不器用だからなのだと思う)。

でも最初にかかる2時間以上の苦労なくしてたどり着けない場所だったんだから、そのかかった時間は必要な対価だったんだよなとも思ったりします。

 

こういう経験を繰り返すと、学ぶって大変だな、時間がかかって当然のものだな、って身に沁みて感じることができて、そういう当たり前の感覚を忘れずにいられる気がします。

すると、自分が知ってることに関して相手ができない時に「どうしてわからないの?」「なんでこんな『簡単』なことができないの?」という気持ちになってしまうのを避けることができます。良い効用です。大事な心構えです。

「0から学ぶことは時間がかかること、一発でできるものではないこと、大変なこと」。忘れずに人と接していきたいです。

 

編み物とクロスステッチができるようになった

以前から興味があった編み物や刺繍も一から学び、色んな作品を作れるようになりました。

100円均一には大変お世話になりまして、頭が上がりません。気軽に入門できるような条件を揃えて頂き、感謝感謝です。

編み物については、かぎ針、輪針を使って作品を作れるようになりました。あみぐるみ、マフラー、ポーチ……公開されている図案もオリジナルも含め、大きさも形も様々なものを作りました。

クロスステッチについても、自分で図案を起こして自分の欲しい作品を作ることができました。

本当は、普通の刺繍にも挑戦がしたくて、ちょっとやってみたりしたのですが、あまり発展はさせられないままストップしてしまっています。2022年は普通の刺繍もできるようになりたいです。

あとは編み物の方については模様というか、モチーフというか、そういうちょっと凝ったものもやってみたいですね。毛糸の種類も色々使ってみたいです。

一応下のサイトで制作物は公開するなどしているので、興味あれば見てみてください!

sites.google.com

 

中国語をそこそこ頑張った

昨年12月くらいから始めた中国語の勉強でしたが、亀の歩みで継続しています。まぁ、中断もかなり多くって、全然誇れたものではないんですけど……。

2020年よりはうんと語彙も増えましたし、文法も理解できるようになりましたが、まだまだなんか浮ついていてダメですね。ふわっとしていて、地に足がついていなくて、上辺だけでやってしまっている気がします。だから本当に「一応上達はしたっぽい」という感じでしかないです。

もうちょっとちゃんと頑張りたいなぁ。

 

中国語以外の言語も手を付けた

2021年には何を思ったかロシア語、フランス語、韓国語にも手を出しまして、アルファベット?の読み方や基礎中の基礎の文についてはちょこっとだけ習得ができました。

今まで意味がわからなかった韓国語の看板が音として読めたり、

ロシア語が音として読めたりするのは感動がありました。

とはいえこれらも本腰を入れてやっているわけではなく、お遊び程度になってしまっているので、もっと頑張りたいなぁというところです。

 

シンガポールに来た

シンガポールに移住しまして、異文化の中でもみくちゃにされながら生きることになりました。

英語の街かと思ったら案外中国語の街だったり、英語は英語でもシングリッシュで聞き取るのが超大変だったりと、来た当初はめちゃくちゃ面食らってサバイバルのような日々でした。

が、さすがとだいぶ落ち着いてきた上に、普通に生活するだけだったらそうそう固定パターン外の英語を話すor聞き取るタイミングもないので、最近はゆったり生活をしています。むしろ、こんなんじゃ英語も中国語も上達しないが??という焦りすら感じます。海外行ったら英語ペラペラになると思ったのに、全然そんな気配がありません。やばし。

 

こちらの文化は多民族であるが故にひたすら自然体でいられる雰囲気があって、とても楽にいられるなぁなどと思っています。

また、年がら年中暖かいので、衣替えも要らないし、気温のせいで風邪も引かないし楽だなぁとも思っています。

日本と違って熱帯ということもあり、植物・動物を含めた自然も本当に魅力的なので、思う存分味わって楽しんでいます。自然を沢山エンジョイしたいですね。

そしてブログに書き付けていきたい。これね。

minesg.hatenablog.com

 

お薬の勉強をちょっとし始めた

自分も夫も薬のお世話になることが増えてきつつあるので、そろそろ真面目に薬について知識をつけてみるか~と思い、ちょこっとずつ勉強をし始めました。

とはいえ、お薬の勉強って大変ですね!覚えることが多すぎるし、横文字だらけで簡単には記憶に定着しないです。困ったものだ。

その上一個一個の成分に注意(何mg以上1日で摂っちゃだめとか、緑内障だと相談して使用とか)があったりするんだもの、たまらんですね。

とはいえ、大事な知識なのでちょろちょろ身につけていけたらなぁと思います。

 

あと漢方と生薬面白いですね。

「こんなものをこんな風に使うんだ」という驚きがめちゃくちゃあって、感動しています。

最近はマオウという生薬にエフェドリン覚醒剤であるメタンフェタミンヒロポン)の原料で、類似の神経興奮作用がある。具体的にはアドレナリン受容体の刺激をする。)が入っていて、そのせいでマオウが入っている葛根湯とか飲むとそういう効果も得られると知ってびっくりしました。面白いね。

地味に自分が持っている生物学の知識につながることが多々あって、おぉーってなりながらマイペースにやっています。役にも立つし、続けていきたいところ。

 

哲学の勉強をし始めた

色んな本を手当たり次第読んだ1年でもあるんですが、今年特に顕著に読むようになったのが哲学関係の本です。

哲学マップという本が安くなっていたので軽い気持ちで買い、積んでいたのですが、それをようやく今年読みました。読んで、細かくまとめて勉強してみたら、中々面白そうだったので、もっと詳しく知りたい!となって色々読み始めました。

とはいえ、哲学の世界は自分ひとりでは歩くのが難しいと思われたので、Twitterで声をあげたところ、哲学関係の思想書読書会というものが立ち上がりまして、

現在は定期的に課題図書を読んで、discordで集合しては疑問や確認を行って整理していく……というのを行っています。

こんなめちゃくちゃありがたい機会を作ってくださった協力者の方々には感謝しかありません。

 

哲学をちょっと真面目に学び始めたことで、なんだか色んなものの見方や考え方が豊かになりました。

哲学そのものに対するイメージや見え方、アプローチの仕方は勿論のこと、今まで興味がなかった本や人に興味を持ったり、人生の色んな局面での考え方が膨らむようになったりして……

哲学の勉強は人生に必要なものだな、もっと早くからやっておけばよかった、と思うなどしています。

 

○○を語る会 をスペースやツイキャスで実施した

色んなものを言葉にしたいな、コアな話題について人と共有したいな、という思いから、時々○○を語る会を実施するようになりました。

中身は本当にシンプルで、何かについて誰かと一緒にお喋りするだけです。話題についても多様で、

オモコロ、藤井風、フレデリック、高校生物、実験生物、培養実験……などと、本当に気の赴くままにやってきました。

でも、この会を通して物凄く得ることが沢山あって、

例えば定期的に集まってワイワイできる場が派生的に出来上がったり

例えば今まで見えていなかった面白い研究室の面白い研究について知れたり

例えば自分が何に対して良いと思っているのか新たな発見があったり

例えば同じ現象でも違う人から見た時の見え方を知ってハッと気付かされることがあったり

と、個人的には本当に素敵なことばかりでした!何より喋るのも楽しいし!!!

できれば2022年も語る会はやっていきたいですね。

 

ResearchatLTに参加した(2回目)

2020年も出させていただいたResearchatLTですが、今年も出させていただきました。

今年は新しい参加者も殺到するのであろうし、去年やった私は身を引いて枠を残しておこう……などと最初は思っていたのですが、

2022年にはやらないかもしれない、枠も余っている、という話を聞いてそれならば、と発表者枠で申し込んでしまいました笑

そんなわけで今回はあんまりガチガチのものではなくて、

「たのしい立体化」という立体錬成の導入編みたいな発表にさせて頂きました。

LTの模様は以下のリンクから観ることができます。


www.youtube.com

今回のLTも大変魅力的な発表内容が多く、終始楽しませて頂いた反面、

自分のももっと凝った&研究したような内容にできたらよかったなぁ、などと終わってからちょっと反省致しました。2022年があるのであれば、是非かっこいい発表を作ってみたいものです。

懇親会も勿論とっても楽しかったです。

企画・運営してくださったResearchatの方々には感謝しかありません。2011年も素敵なPodcastのエピソードの数々とともに、素晴らしい企画まで作ってくださり本当にありがとうございました。

 

あんまりできなかったこともあった

上で色々並べ立てはしたんですけど、時間があるのに全然できなかったな~と思うことも多くてちょっと残念な気持ちになってもいます。

例えば、ふじバイオの更新はほとんどできませんでした。生物系のニュースを読んでも、深追いして記事を書く……という行為を頻繁にできなかったですね。もうちょっと定期的にやれるように、自分に制約をつけていきたいなと思います。

あと競プロやプログラミング方面もあんまりできなかった……。Androidアプリ開発とかもちょこっと触ってみましたが、結局ちょこっと触っただけで終わってしまって。M5Stackもからっきしでした。

解剖学の勉強も全然進められなかったですね。なんかもはや忘れてしまっていたな。1年間ずっと揺り動かされてきたような状況だったので、しょうがない気もするんですけど、でも時間があるのに何もできなかったというのはさすがと消化不良感があります。

時間を活用するって、難しい。誰かや何かに縛られた中でのスキマ時間の活用ならまだできる気がするんだけれど、自由度がかなり高い中で、縛る人が自分しかいないとどうしても緩んでしまう。

長い時間がある分、活用が難しいなぁと改めて感じる1年でもありました。

 

2022年はどんな年にしたいかな

2022年は自分を縛ることを学ぶ1年にしたいですね。

色んなことに挑戦もすればいいんだけど、何かを着実にレベルアップさせることもちゃんと並行してやっていけたらな、って思います。

そういう意味で、2021年に始めた色々な良いことは継続していきたい。

 

ざっくり目標立てをしていくと

  • 中国語を頑張る!HSK5級レベルを目指す&実生活で使う
  • ロシア語の初歩の初歩をマスターする
  • 韓国語の初歩の初歩をマスターする
  • フランス語の初歩の初歩をマスターする
  • 薬の勉強を一通りやって、本の知識の半分以上を記憶する
  • 解剖学をやる
  • 哲学の勉強を継続する(何か記事も書く)
  • 語る会をやる
  • ふじバイオを月1で必ず出す
  • シンガポールの行きたい自然スポットを全制覇する
  • シンガポールで色んな挑戦をどんどんやる
  • Blenderでヒト型モデリングを新たにやり、新たな勉強もする(スカルプトとか)
  • 競プロを思い出し程度に一度は触る
  • M5Stackで何かを作る
  • モチーフ編み作品を作る
  • セーターみたいな上級のものを編んでみる
  • 刺繍をやる
  • 積本の消化
  • 大学入試問題データを作成していく
  • Ring Fit Adventureで運動をほぼ毎日する(長期間途切れさせない)
  • 溜まっているブログ下書きを完成させていく(考える系のやつ)

こんな感じかな。

プラスアルファで、今思いもよらなかったようなことに沢山取り組める一年だといいなぁと思います。色んな経験をして、色んなものを吸収して、色んなことを振り返って、そうして育つ一年にしよう。きっとそうしよう。

 

ということで、

今年もよろしくお願いいたします!!

*1:一応言っておきますが無償です

中島さんの培養話を聞く会を振り返る 後半

前半はこちら↓

i-my-mine.hatenablog.com

 

後半も内容盛りだくさんですよ!!

 

 

イルカの口内細菌の研究

中島さんがサブテーマとして取り組んでいる研究についてもお話を伺いました。

1つめは温泉の細菌叢について。関東某所の温泉に、どのような細菌が生息しているのかを調査しているそうです。どんな性質を持つ細菌がどれくらい住んでいるのか、私も気になります。

2つめはイルカの口内細菌について。

私は知らなかったのですが、世界ではウシ、ウマ、ブタ、イヌ、鳥など様々な生物の口内・腸内にどんな細菌がいるのか、よく研究されているのだそうです。

上で挙げた動物は身近であったり家畜であったりするので、研究されても当然かなという気がしますが、

動物園のカバやハゲタカといった生物についても、腸内細菌が調べられたりもしているらしいんですね。

 

そんな世界的な調査対象のひとつに「イルカ」があるのですが、

先行研究において、イルカの口内細菌を調べたところ、当時、新門相当の新種が2種も見つかったというのです!

実際、海水、イルカの口内、アシカの口内からそれぞれ細菌をとってきて、出てきた種を比較すると、

勿論それぞれに特有の細菌がいるのですが、イルカの口内はその中でも非常に特徴的な口内細菌叢を持っているらしいことがわかるそうです。

となるとやはり気になるのが、「その特徴的な細菌たちはどこからやってきたの?」「どうしてイルカの口の中だけが特徴的になるの?」ということで……

それはおいおい研究成果が発表されるかもしれません。わくわくしますね!

 

淡水中の細菌の謎

中島さんが博士課程の時に行ったサブテーマには、琵琶湖の細菌の分離培養というものもありました。

海水ではなく淡水だという点で勿論海とは異なりますが、湖は「孤立している」という点でもかなり海とは違いますよね。それぞれの湖の細菌がどれくらい違うのか、はたまた同じなのか、どういうものが培養できるのか……というのは、とても興味深いテーマだな、と思いました。

ある研究者の方なんかは、日本中の湖を巡って細菌を調べあげる……みたいなことをしているそうで、その成果でカタログが作れるくらいのものになっているのだそうです。すごいですね。

 

ちなみに、バイカル湖(すごく深い湖)の深いところでは、なんでも深海と同じような細菌たちが生息しているらしいです。えっ、淡水と海水なのに?なんでそんなことができるんでしょう。不思議です。

 

 

真核生物のロドプシンは大変?

古細菌や細菌の話を今までしてきましたが、真核生物はどうなのでしょうか?

なんと、真核生物の場合はもっとすごい場合があり、ロドプシンを10個も持っているような藻類までいるそうです。凄まじい!

しかも、10個の内訳はプロトンポンプが2個も3個もあったりと、それって必要なの?何がいいの?と一瞬では理解できないような構成です。

中島さん曰く、例えば同じプロトンポンプでも、補助色素やアミノ酸配列の違いによって吸収波長をずらして、

光合成では活用できない波長の光を最大限活用できるようにするとか、そういう可能性があるそうです。

とはいえ、10個も持っていたら解析は大変そうですし、ノックアウトやノックダウンを組み合わせても本来の役割が見出だせるのかはよくわからないですよね……。

なかなかアプローチが難しそうです。

 

途中から佐藤さんにも参加してもらった

途中から、中島さんのお友達である佐藤さんにもスペースに参加していただきました。

twitter.com

佐藤さんは、なんと知る人ぞ知る「TEMPURA」という素晴らしいデータベースを構築していらっしゃる方です!

私はTEMPURA自体は存じていたのですが、まさかそれを作った方とお話できるとは思っていませんでした。超びっくり。

ちなみにTEMPURAというのは、原核生物の生育温度データベースのことです。原核生物について解析したり研究したりする際に、温度のデータがどこにもないなぁと思って作り始めたのだそう。

togodb.org

温度データベースがあれば、培養の時の条件検討で参考にできたり、遺伝子発現や代謝機能の理解のために役に立ったりと、大変便利だと思われます!!!

 

佐藤さんが参加してくださったことで、話はリボソームRNAのことにシフトしました。

というのも、佐藤さんがかつて取り組んだ研究テーマが、好塩古細菌リボソームRNAだったからです。

 

リボソームRNAといえば、前半の記事でも少々触れましたが、細菌と古細菌を見分けるだけでなく、それぞれの種を判別する際に重要になるRNAです。

通常の原核生物においては、16S, 23S, 5Sという3種類のrRNAが存在し、この順で並んだオペロン構造を形成しています(オペロンというのは、一括で転写される単位のことだと思ってください。DNAを見ていくと、16S, 23S, 5S rRNAを作るための塩基配列が順に並んでいて、転写されるときは一気に全てされていく……というイメージです)。

16S rRNAはリボソームの中でも小サブユニットと呼ばれる、だるまの頭のパーツみたいなところを構成するのに必須なRNAです。これはリボソーム運営のためにも特に重要な部位であり、細菌・古細菌ではよく保存されています。逆に言えば、重要が故に変異が入りにくいため、塩基配列を見比べることによって系統解析を行うのに重宝される存在でもあります。

 

そんな16S rRNAについて、なんとある種の好塩古細菌の場合、配列が異なる2種の16S rRNAを有しているというのです!*1

なんのために?

 

その好塩古細菌の生息場所は、名前からもわかるように塩濃度の高い環境です。

塩濃度が高い環境ということは、恐らく周囲に植物が生えにくい……

すると、植物がないことによって、砂漠みたいな環境、すなわち寒暖差が激しい環境になっているのではないか?

だとすると、2種類の16S rRNAは、温度が高い時と低い時で使い分けをされているのではないか?佐藤さんはそう考えたそうです。

そこで、検証を行うために各温度で古細菌を培養し、2種類の16S rRNAの量を調べました。その結果、温度によって2種類のrRNAは発現量が違うことがわかりました。高温で多いrRNAをrRNA①、低温で多いrRNAをrRNA②と便宜上置きましょう。

さらに、変異株を作成してrRNA①のみを持つ株(株①)、rRNA②のみを持つ株(株②)を手に入れて各温度で培養してみると、

低温では、株①も株②も野生株より世代時間が長くなり、

高温では、株①の世代時間が野生株とほぼ同じになることがわかりました。

ということは、低温の増殖にはrRNA①②どちらも重要だけれど、高温の増殖では特にrRNA①が重要な役割を担っていると考えられるわけです。面白い!

 

周囲の温度が違う時にどのような応答が生じてrRNAの発現量の変化が出るのかも気になるところです。

プロモーターの配列のせい?rRNAは一度作られるけれどその分解速度が速かったり保護機構があったりする?などなど、想像が膨らみます。

 

色んなrRNAの持ち方

rRNAの話をしている中で、生物によってrRNAの持ち方にはバリエーションがあるのだということも学びました。

例えば、上で述べた16S, 23S, 5Sのオペロンがちぎれて、一つの要素が遠くに離れて配置されてしまっているものがあったり……(unlinkedと表現されるらしい)

16S rRNAの中に超大なイントロンが入ってしまっているものがあったり。それって大丈夫なの?って感じですが……。

とにかく、典型通りではなく、色んなものがいる!というのがミソですね。モデル生物だけやっていたら、そういうバリエーションにはなかなか触れることはできません。非モデル生物というか、生物全体を見渡す目があると、「それでもいいんだ?」という機構に出会って、面白い発見につながるのかもしれません。

 

unlinkedなrRNAについてもっと知りたい方はこちら↓

qiita.com

 

 

巡り巡って戻ってくる

今回の話を聞くことで、科学的に面白いと思うところは大量にありましたが、

中島さんの研究歴というか、辿った道のりも大変おもしろいなと個人的には思いました。

スタート地点は極限環境の古細菌と細菌、

そこから水産と微生物に行って、

ロドプシンというテーマに沿って様々な発見と研究を繰り返し、

その結果JAMSTECという極限環境と隣の場所に来ている……。スタート地点で夢見た場所とほぼ同じところにたどり着いている、というのがすごいですよね。

 

まとめ

今回の会では、私があまり知識のない古細菌・細菌について、

特に「非モデル生物」を使って研究をする、ということに焦点を当てながら、多くのことを丁寧に教えていただきました。

会を通して古細菌や細菌の解像度が少し高まった(まだまだだとは思いますが)だけでなく、

思った以上に思ったとおりではない、というか、

まさに「モデル生物」ではモデルになりきれず、見つけられないものもある、という、そんな当たり前だけど重要な部分について、実感を伴って知ることができました。このような感覚は、モデル生物を扱った実験しか経験していないとなかなか気づかないというか、思い及ばない領域だったのではないかと思います。

その、モデルを外れていく知識がこんなにも興味深いもので、面白いものだということも知りませんでした。

 

とはいえ、非モデルには苦労もあるわけで、通常思いつくようなアプローチ―RNAiしよう、とか、ノックアウトしよう、とか―があっさり適用できないもどかしさというのも会を通して少し感じることができました。

培養条件ですら検討が必要なのですから、研究手法なんてなおさらですよね。

改めて、この世には掘り残しがまだまだいっぱいあること、でもそれを掘るにはある種のガッツがいることを感じられました。

 

 

この文字起こしでどれだけスペースで感じた面白さや楽しさを伝えられているのかはわかりませんが、少しでもみなさんに伝わるといいなと思います。

*1:後から佐藤さんにお伺いしたところ、実は塩基配列の異なるrRNA遺伝子をもつ原核生物は珍しくないそうです。また、好塩古細菌よりも塩基配列の違いが大きいrRNA遺伝子をもつ微生物も存在するとのこと。本当に色々いるんですね