あいまいまいんの生物学

あいまいまいんの生物学

生物学が好き。勉強したり遊んだり。

日頃感じたこと思ったこと、出来事など

勉強して面白かった話

授業で使えそうな生物学の知識・雑談・小ネタ

などなどを紹介していきたいと思います

コメント大歓迎!気軽にコメントして下さい

ゲームサイトはこちら

Netflix版三体を観た

※この記事は三体原作とNetflix版のネタバレをおおいに含みます。

※原作も読みNetflix版も観た人でないと何を言っているかちんぷんかんぷんの可能性があります

 

三体という最高のSFがあります。

現在三体は三体、三体Ⅱ上下、三体Ⅲ上下、そして三体0が出版されており、全てつながったお話になっています。三体0が三体シリーズの前日譚で、三体~三体Ⅲが本編です。ほかに三体Xというものもありますが、これは著者が劉氏ではなく、三体ファンによる同人作品が公認となって出版されたものになります。

私は三体シリーズが大好きで、胸を熱くして読み耽った人間です。三体の分厚さを見て「こんなに長いの?」という人も多いのですが、正直足りません。もっと欲しい。読み始めたら分かると思うのですが、ストーリーというか展開が面白すぎるのです。キャラクターも良すぎる。常にジェットコースターに乗っているような気分で、文章を読んでいるだけだとは信じられないくらいのアトラクション感があります。心拍が変わりっぱなし、感情揺さぶられっぱなし、頭フル回転しっぱなし……みたいな。言葉通り「のめり込む」ような感覚があります。

特に三体Ⅱ!!三体Ⅱの羅輯(ルオジー)という登場人物が大好きなのです!!!どうしてそんなに好きなのか?答えは簡単、かっこよすぎるからです。

この記事をこの段階まで読んでいる方には大いに賛同して頂けると勝手に思っているのですが、羅輯は三体シリーズの中で最重要人物といっても過言ではないと思っています。羅輯がいなければ三体ⅡとⅢは成立しませんし、人間は滅んでしまう。切れ者で、でもか弱い人間で、面倒なことが勝手に寄ってきてしまう体質で、「俺が人間を守る!」みたいなアツさはなくて、等身大の人間の悩み方をしたり、かと思ったらすべてを放棄してしまったり……時に大胆で、時に繊細で、時に気だるげで、そのバランスが最高で!!あぁ、なんて素敵な人物なんでしょう。彼の性格、振る舞い、その他もろもろがすべて好きなのです。

 

 

で、三体最高!!ってなって読み終わっても満足できず、bilibili等で三体動画を漁りまくり、中国語版三体まで購入した私のもとにある日、Netflix版実写三体がくるという情報が来たわけで!!!!!!!これは観ないわけにはいかないですよね。満足度を上げるために敢えて前情報をほとんど入れないように遮断しまして、公開の日を今か今かと待ったわけです。すべては最高の羅輯と出会う日のために……。

 

ということで3/21の17時、遂にNetflix三体が公開されました。

これを観るためだけにNetflixに加入しました。

www.netflix.com

パッと見た時点で「あれ、もしかして舞台が中国じゃないのか?」と思ったのですが、それでもね……羅輯がいないわけがないので!!と思いつつ、早速どきどきしながら視聴を開始……!!!倍速視聴せず、じっくりと、2日間かけて鑑賞しました。

 

ということでここからは自分の、大変個人的な感想を並べていきたいと思うのですが……、

結論から言いましょう。

 

これは三体だけど三体じゃない。

いや本当に。三体だけど三体じゃないんですよ!!!一言で言うならこれしかない。

 

細かく色々言っていきましょうか……。

 

まず演出。これはすごいよ。ここぞという場面に関しては、三体という本を読んでいて頭に浮かんでいた情景が、頭に浮かんでいた以上にリアルに再現されています。例えばVRゲーム三体の様子、例えば船が切られていくシーン……文革の場面も、葉文潔が宇宙と交信する場面もそう。こういう所はすっごく再現度が高くって、本当に……言葉で言い尽くせないほど素晴らしい映像です。こんなに再現度高くできるとは。正直期待以上で、それ故かなり怖くて。でも三体ってそういうストレートな怖さがあるからこそ成立するお話でもあると思っているので、ここをオブラートに包まずストレートに恐ろしく表現したところは素晴らしいと思っています。色んな意見があるとは思いますが。

 

で、ストーリー。これが大改修されておりまして……前情報を断っていたせいで全然知りませんでした。三体~三体Ⅲの内容を組みなおして作られているんですね。その上最初にも触れたように舞台は中国ではなくイギリスとなっております。中国からイギリスに変えたことで今回の三体は成立している、そんな印象すら受けます。すごいバランス感覚で驚きです。国が変わって成立させられるなんて……。

で、ここが一番大事なところなんですが、主人公たち含め主要な人物の名前がすべて変わっています。

変わっているだけならいいんですが、変わっているのに加えて本来三体でいたはずのキャラクターが分割されたり統合されたり……つまりは元々一人のキャラクターがしたことや仕事、行為が二人の人物に割り振られていたり、逆に別の人物がしたはずの仕事や行為が一人の人間の行為にまとまっていたりするんです。これには本当に驚きました。上では羅輯の名前をひたすら連呼しましたが、羅輯以外のキャラクターひとりひとりに自分の思い出というか、三体というストーリーをなぞって培ってきた愛や想いがあります。それが、その人自身の存在が消え、その人がしたことが別の人に配分されているという。最初は戸惑い、「あぁ、これ三体のそのもののキャラクターは消えちゃってるんだ」と気づいたときには物凄く切ない気持ちになりました。もちろん羅輯もいません。羅輯のやったことをしている人はいる、羅輯と同じ悩みを抱え同じ考えを辿る人がいる。でもそれは決して羅輯ではない。羅輯とまったく同じ行為をしているわけでもない(羅輯の役割+別の役割が物語の改修の結果ついてきているので)。この人は誰だ?私が愛した羅輯の「立ち位置」を持つ何者か、完璧に別のもの。それがとても悲しい。

……いえ、物語の改修の仕方や人物への割り振り方は本当に見事なのです。Netflix版三体で活躍するキャラクターたちひとりひとりにまた新たなストーリーがあり、苦悩があり、ちゃんと文脈があって成立していて。それはとてもすごいことです。これだけ元の三体の人物を解体してもちゃんと「キャラクター」として危ういながらも成立しているのだから。感情移入すらできてしまいます。出てくる人たちがちゃんと人間なので。それなのに「あのキャラクターのあの仕事だ」「あのキャラクターのここをとってるんだ」とはっきりわかる。そんな凄まじいことよくできるな、と本当に驚きです……だからこの改修力には脱帽せざるを得ません。

でも、それでも……私は三体のキャラクターを愛していたんです。汪淼を、史強を、丁儀を、雲天明を、そして羅輯を……。愛しきれなかったけれど程心のことだって一人の人間として共感できる部分があり、ともに悩んでいる気持ちになった時もあった。ささやかな役でもその感動や落胆をともにしてきた気持ちがあった。それこそその時代に生きた人々の気持ちや流れみたいなもので感じるものも多くて。なのにいない。ほとんどいない。私の愛した人々がいない。私の過ごした時間の流れがない。

これは間違いなく三体なのに、間違いなく自分が愛し自分が文字を追った三体ではないのです。

本を読んだときに似たアツさ、興奮、恐怖、こういうジェットコースター感が味わえる。素晴らしい再現度だけれど、三体ではないのです……。

 

人物がした仕事を解体されて別の人物に割り振られたとき、そこには何が残っているのでしょうか?そこに羅輯の影はあるのでしょうか。私は一切感じませんでした。羅輯はここにいないのです。欠片もいない、存在がない……。他の人がどう感じているかは分かりませんが、羅輯の「仕事」が、「役割」が垣間見えるたびに心がキュッとなってしまいます。私は三体には羅輯がいてほしかった。紛れもなく羅輯そのもの、その人がいてほしかった。ただのわがままですが。

 

加えて言うのであれば、本の場合は三体~三体Ⅲという順に読むため、それぞれの話を読む時間が被りません。その結果話が一方向で流れていくので面白く感じる仕掛け等もありましたが、Netflix版では同時進行で話が見えるせいでそこは失われているのかなという気もしました。本の三体は見かけ上とても長い(分厚い)もので(実際読めば一瞬なのですが)、その分じっくり時間が進む面もあるのですが(突然飛ぶこともありますが)、Netflix版はなんというかタイパ版といいますか、お手軽三体……という印象も若干受けました。三体のうまいところだけぎゅっと濃縮した感じ。うまいところだけぎゅっとするのが正解なのでしょうか。もっと苦しんで、考えて、じりじり進む技術や全然変わらないように見える世界に対してもがいて、そんな中対照的に光速で向かってくる三体艦隊に歯がゆい思いをして、……みたいな心の動き。科学の死への絶望の深さ。と、そこからどうにも脱することのできないもどかしさと更なる絶望。これも三体の本の面白みであり醍醐味だったんじゃないの?もちろん映像化するにあたって無限の時間は使えないので、切り捨てる等の工夫は必要でしょう。その時切り捨てる対象がそういう有象無象になってしまうのは仕方のないことだと分かっている。わかってはいるけれど三体にはそれが必要だ!と心のどこかで叫ぶ私がいる。

 

そんなわけで。Netflix版三体はすごいし、素晴らしいと思う。三体だとも思う。でも三体じゃないよということで。自分の心の中はそんな感じです。いつまでも受け入れられない……。

もはや別物として自分の中では存在させようと思っています。三体リスペクトの実写作品だと。三体そのものではないのだと。そう思えば普通に素晴らしい作品として楽しんで観続けられる。そんな気がします。あんなジョークで置き換えて、この先暗黒森林の話はどうなっちゃうの??原作をどう改変し、同時にどう再現するのか気になるので、きっとシーズン2も観ます。

 

 

想いの溢れるままに書き綴った文章なので読みにくいところも多かったかと思います。すみません。

ちなみに羅輯を観たい……!という方には前々から言っていますがこちらの同人作品を推したいと思います。中国語だけどすごく、すご~~~くいいです。羅輯がいます。羅輯がいるんだよ。羅輯ファンには観てほしいな。

www.bilibili.com