あいまいまいんの生物学

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2024年度大学入試共通テスト 生物 所感

基礎はこっち↓

i-my-mine.hatenablog.com

問題のリンクはここ↓

 

edu.chunichi.co.jp

 

やるぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

第1問 糖代謝(キシロースオペロン)

納豆菌がエネルギー源とする稲わらの中にはグルコースだけじゃなくてキシロースもあり、納豆菌に近縁の細菌Nではキシロースも使えるよ、という導入。題材自体はそこまで知名度が高いものではないので、キシロースオペロンのことを知らない受験生は結構多いのでは?そういう意味ではとても共通テストらしい。

問1

ただの知識ではあるんだけど、代謝の関係でよく見られる若干細かめの、かつ理解を要する知識問題。私も「エネルギー代謝で一問め作って!」って言われたらこういう系統で出すだろうな。

問2

ここから実験に入る。オペロン発現量と糖濃度の遷移を一緒に示すやつ。これを見ることで「先にグルコースを使い切って後でキシロースを使うようになる」ということと、「キシロースオペロンの発現量はグルコースを使っている時(=キシロースを使っていない時)には低い」ということが読み取れる。細胞数の増え方の傾きを見るとグルコースの時の方がキシロースの時よりも増えるテンポがいいらしい(しかもキシロースにバトンタッチするところでは一回数が一定化する様子までグラフに現れている)。どうして世の生物はグルコースを好む傾向があるのかな?謎。

野生株とは糖の利用の仕方が異なる変異株Mのグラフも提示されるのだが、こちらはキシロースを先に使っている……という解釈で合っているのか?両方ともだらだら微量に使っているのだろうか。最初の挙動がよくわからない。開始400分くらいまでどちらの糖も消費せずに増えている気がするのだけれど。

で、問2ではこれらを踏まえて適語補充をする。「イ」の選択肢はただの「リプレッサーってなーんだ?」という知識問題だが(たぶん深く考え始めるとドボンするタイプの……)。

問3

キシロースオペロンの発現には2つ仮説が立てられるよね?ということで、その2つが提示される。

①キシロースオペロンはキシロースが存在すると発現するが、グルコースが存在するとキシロースが存在しても発現は抑制される。

②キシロースオペロンの発現はグルコースのみによって制御される(キシロース有無は関係なく、グルコースがあれば発現せずグルコースがなければ発現する)。

ふたつの仮説をまとめるとこういう違いがあるはずだ。


で、このふたつの仮説どちらが正しいか見分けるためにどういう実験を比較したらいいかな?という問いである。まぁストレートに考えれば②の仮説が「グルコースの有無だけでスイッチされる」というものなんだし、グルコースの有無だけの条件を変えて実験結果を比較したいなと考えたい。その上仮説①は「キシロースの有無でオペロン発現が変わる」をベースとしているから、キシロースがいると話がややこしくなるのでキシロースはない方がいい。そんなわけでaとcを比較するのが妥当だろう。実験結果も仮説①と②で変わると予想されるので、ちゃんと見分けられそうだ。仮説が複数立ち、それを選別するという行為はとてもリアルに即していて個人的には良い問題だなと思う。

※Xで指摘してもらって自分もそうだなと思ったのだが、この問題については仮説①はキシロースが関係ある、仮説②はキシロースが関係ない、という風に読み替えることもできて、その場合bとcの比較でもふたつの仮説の可能性検討は可能になってしまうと思われる。問題文が「グルコースの有無」に着目させたがっているので誘導に乗っかってaとcにしてしまったが、よく考えたらbとcでもいいのではないか……?と私も同意の気持ち。実際どうなんだろう?共通テスト側はこれも答えとして認定するのだろうか。

 

総評

題材の適度な新規さと展開の仕方の滑らかさ的に共通テストらしい良い一問だったと思う。特に問3のような「仮説が複数考えられる」という提示は、グラフや結果を「こうだ!」と決めつけて見てしまう視点を反省する良い気づきを与えるのではないだろうか。思い込みではなく疑い、なんとなく感じる違和感と「これもあるんじゃないか?」という寄り道から新たな発見につながることもきっとある、し、結構重要なことだと個人的には思う。加えてその思いついたことを検証する系を自身で導けることも大事な能力だと思う。良い能力を測ろうとしているな、と思う。

 

 

第2問 生体膜(イオンの移動、孔辺細胞、神経)

リード文は当たり障りのないよくある生体膜のお話。チャネルやポンプが生体膜にはあって、それが選択的透過性を担うというやつ。それに関連するものとして挙げられた植物の孔辺細胞と動物の神経細胞が問題のメインになってくる。

問1

知識!だが、これは結構細かめだ。例えば「担体は受動輸送に関わらない」はもちろん正しい記述だが、グルコーストランスポーター等を正しく理解していないと一瞬詰まる受験生も多いのではないか(変形するよな?エネルギーはどうしてるんだ?とか……)。

正答である「水の透過性は特定の輸送タンパク質の働きにより高められる」もストレートとは言えない文章だ。アクアポリンは確かに輸送タンパク質だし、それによって透過性は「高められる」が、こういう文章の形態で事象を理解しておく必要性は本当にあるのだろうか……?むやみに難しくしているだけではないか?と若干思わないでもない。

問2

孔辺細胞とカリウムチャネルと光の関係を探るべく実験する。表でまとめてしまえば決して難しいものではないだろう。

細胞が膨張する=細胞内に水が入る=水が入ってくるくらい細胞内のイオン濃度が濃くなる=K+が細胞内に流入している ということさえ分かれば難しくはない。というかこの辺については高校でも教えているはずなので、この場でいきなり処理させられる問題でもないだろう。たぶん……。とはいえめちゃくちゃメジャーな内容というわけでもないので、よく勉強しているかどうか、理解できているかどうかが分かれ目になりそうだ。

問3

ニューロンの膜電位変化(活動電位)とその周辺のイオン関係の動きを理解しているか?というやつ。そもそもニューロンのこの辺の現象に関しては、知識と理解両方を必要とされるものなので、知識と理解どちらもあるか測るにはもってこいの問題だろう。

問4

ただのニューロン関係の知識。

 

総評

新規題材とかではなく、ものすごく共通テスト感がある問題というわけでもなく。ほどほど、という印象の問題だった。知識のウェイトが若干重い上に、その知識の保持の仕方として「本当にそれを求めているのか?」という問い方が見受けられる。単に難しくしようとするのではなく、こう、理解していてほしいことを理解している、ということを確認するためにストレートではない問い方をするのはありだが、単純な見掛け倒しのための変形はあまり好きじゃない。

 

 

第3問 骨格筋(体節の分化、グリセリン筋)

リード文で体節の分化(背側表皮に近いやつは筋肉になっていき、腹側の方は脊椎骨などになっていく)に触れていておぉー!?となる。こういうのは嬉しい。個人的に発生は好きなので。それに学校でもあまり取り上げられない内容だろうしね。

問1

筋肉の知識問題。また若干細かさを感じる……けどまぁいいか。そこまで酷いものはない、と思う。

問2

グリセリン筋とスキンド筋の実験!受験生にとっては「見たことはあるけど沢山は解いてない」部類の問題だろうなぁ。しかも今回の問題ではある条件での結果予測が求められているのだが、この結果予測のためには実験結果解釈だけでなくグリセリン筋とスキンド筋の理解(リード文をちゃんと読む)に加えて筋肉の構造理解、収縮の仕組み理解という元々の知識も必要になる。し、正直自分はふたつを事前に知ってたから解けたけど、よく知らない状態でこの問題文の説明や実験だけで本当にすっきり解けるのかな……?と若干疑問。瞬時にみんな解けたんだろうか?

問3

体節分化のよくある移植実験。脊索を移植したり、神経管の背側断片を移植したり。で、それら結果を踏まえての実験結果予測。いいね。私はこういうのが好き。

 

総評

実験結果予測がふたつも連続するとは……という感じだが、きっと新傾向的なことをしたいのだろうなぁと思うなどした。問3はまだしも問2は若干牙をむいてる気がするが。
なんにせよあまり馴染み深い題材ではないので受験生は頭をフル回転させただろうなと思う(または最初から放棄したか……)。こういう自身の知識と頭を駆使する即応力を求められているのだとしたら、模範的な出題なのだろう。

 

 

第4問 植物(ジャガイモの塊茎形成と短日条件)

ジャガイモの塊茎(無性生殖)は短日条件で作られるんだよ~というリード文。身近なものが自分の知識と結びつくと楽しいだろうな。良い題材。

問1

無性生殖と有性生殖の特徴の知識問題。ふつう。ひねりもない。

問2

フィトクロムと照射光を理解してるかどうかの問題。ジャガイモver初めて見た。楽しい。知識だけど丁寧に処理しないと間違えちゃうので要注意。

問3

「ジャガイモは塊茎作ろうとすると同化物をより地下茎に分配するようになるんじゃない!?」という思いつきからの検証実験を考えるもの。いいぞ!すごくいいと思う。素直に考え方もいいし、検証方法を考えさせるのもいいし(どの重量を測ってどういう計算をしたらいいか考える)、かなり好き。計算式の立式、生物で受験する人はすぐに捨てたがるやつだけど本当は大事だと私は思うよ(冷静に考えればわかるし、今後研究とか考えたり手法理解したりするときにも大事だもん)。共通テストが測りたい能力に即していると思う。

 

総評

上でも述べたので繰り返しになるが、身近な題材が自身の知識と結びつくのは楽しいので題材がとても良いなと思った。加えて最後の問題で疑問提示をし、それを検証しようとする。すごく実生活の中での実践感があるというか、生物学で培った知識や考え方を「活かす」ってこういうことだよな、と……。個人的にはかなり好きな出題だった。

 

 

第5問 陸上生態系(各気候帯での森林と農地)

森が主に農耕地利用のためにどんどん消えてって蓄積された有機物が消えているよというリード文。

問1

森の生産構造図を選び、ついでに森の相対照度のグラフとして正しいものも選ぶ問題。森の非同化器官って本当に多いね。そんなに難しい問題ではないけれど、グラフ選択という意味で少し新傾向っぽい。

問2

森林と農耕地に蓄積されている有機物の量と純生産量の推定値を見て、その表の値を処理して正しくない考察文を選ぶ……というやつで、本来は計算をちゃんとやっていく必要があるのだろうけれど、どう考えたって②の文章が直観的におかしい。ので終わり。

問3

森林から農耕地にするとどうしてだめなの?という文章に適語補充をするもの。別に難しくない。ストレート。

 

総評

特にこれといった感想もないが、問2の誤答は表をもうちょっと使うものだったら表の処理力をちゃんと計れたのでは?という気がしないでもない。

 

 

第6問 

A 海の生物(分類)

結構平凡な磯観察の会話。ハイパー知識ありまくり高校生の会話ではないらしい。

問1

動物の定義の問題。知識。でも聞いてるのは「生物学の」というよりは「五界説の」ではないのか?

問2

カメノテ、イソギンチャク、ウニが動物の系統樹のどこに配置されるか判断する問題。ただの知識!

 

B 遺伝子の動きのシミュレーション(無性生殖)

サイコロを振って、その出た目から6匹の親それぞれが何個体残すか決め、それを繰り返すことで世代とともにどう遺伝情報が変わっていくかを見るというもの。初めて見る系で最初若干戸惑ったが、理解すればどうということはない。例えば6個のサイコロを振って1の目が2個出たら、親1が2匹子を残せるというシステムで、それを繰り返していくだけ。やってみると全ての親が平等に遺伝情報を残していけるわけじゃないということがよくわかり、大変面白いシミュレーションだなと思った。

問3

前提をちゃんと理解していれば分かる問題。問われているのは読解力……というべきか。

問4

現実の生物集団で起こる遺伝子頻度の変動についての知識問題。特に難しくもない。

 

総評

Bのシミュレーションは大変面白いアイデアだった。どこから引っ張ってきたアイデアなのだろうか?加えてこれで本当に集団中の遺伝情報伝達モデルとしていいのだろうか。自分は進化にあまり明るくない人間なので、これがどれくらい良いモデルなのか少し気になる。自分の目から見る分には面白いが……。

それ以外は純粋な知識問題。やはり知識のウェイトが高いような気がする。シミュレーションをもっと活用したらいいのに、実際には1問しかなかったのも少し残念だ。面白い題材を深堀りする問題には中々しにくいのだろうか(連動すると困る、とかかな……)。

 

 

完走の感想

全体を通してなんだか妙に知識のウェイトが上がったような気がします。しかもその知識の問い方(文章)が若干いじわるな気がしました。結局は細かい知識を捻った言い方されても冷静に判断できる力が欲しい、という方向になりつつあるのでしょうか。それってなんかちょっと違うな、と思わないでもなく……。

「絶対に覚えてほしいこと」をちゃんと覚えているかどうか、それを測ることは大切なことだと私は思うんですよね。センター試験みたいに知識について執拗に確認するのだって私は大事なことだと思っています。でもわざわざ「共通テスト」というものに変えて、求める力と問う力を変える、と明言して、その結果がこれでいいのか?とは思うわけです。これで測ることのできる力が本当に求められているものなのか?と。

言い方を変に難しくすれば勿論点はとりにくくなります。ある意味で「正しく読解できる」「知識がちゃんと定着している」なんなら「横断的な理解や知識のつながりが意識できている」子が正答できるものでもあるでしょう。でもこういう問題ばかり解けることを目標にされたらそれってなんだか違いませんか?とちょっと思うんですよね。
点数差をつけるためには仕方のないことなのかもしれないけれど、確かめるべき知識をちゃんと確かめられる形にしてもらえたらいいな……。

 

で、もうひとつ気になったのがときめきの少なさ!

生物基礎も今年度の問題はときめく題材や問題が少ないなぁと思いましたが、生物も同様にときめきが少なかったです。なんかもっといつも「わー!!これめちゃいい!!!」みたいな気持ちになる問題があった気がする。今年度はちょっとテンションが上がって終わり、というものがちょいちょいあるくらいで、全体的なときめき度は低かったなと……。解いた後の高揚感が全然なくて、ちょっと残念でした。目新しい題材を全く使ってない、というわけではないんだけどなぁ……新傾向的な問題だってちゃんとあったのに。なぜだろう。こればっかりは個人の趣味なのかもしれない。し、私の趣味に合う問題が良問だとも限らないのでね……。

でもでもでも!生物基礎でも言ったんですが、やっぱり問題を解いたらおまけで面白いことが知れたり、感動できたり、自分の知識とバチッとはまる感覚に興奮したり!そういうのが欲しいんですよね!!!「こんな身近なことなのに全然知らなかった!」とか、「こんなことも世界には実現し得るのか!」って感動したい!!センター試験にはそれを求めないけど共通テストなら求めてもいいと思うんだけどな!?

 

とはいえ昨年度の生物共通テストが「ふさわしくない」の評価1をつけられたという話もありますし、作問側としては何がいいのか未だに迷走気味というところもあるのでしょう。「問題分量を減らさなきゃ……」「解ける情報量にしなきゃ……」と苦心した結果が今回のものなのかもしれません。新規題材を出そうとすると背景だったり骨組みだったり色々導入をしてあげないといけなくて、その分情報も読む量も増えて受験生の負担は増えちゃうもんね。なかなか難しい問題です。

 

ということで作問側の苦労もわかるぜ……!!!!と思いながら解いた生物の問題でした。難易度は去年に比べたら易化だろうな、酷いひねりもなかったし、知識多いし。

 

 

なんの能力があったらいい?

ほぼコピペになりますが。

  • 知識
    • 明確な定義
    • 関連付け(直立二足歩行→骨盤の変形、みたいな)
  • 実験手法理解(なんのために何をしているか)
    • 穴についても理解をする
  • 測定手法などの理解
    • 前提は何か
    • 現実と前提との乖離、そこで起こりうること
  • 実験デザイン力
    • 仮説を検証する実験
    • ある結果を求めるのに必要な実験
  • 「この実験・知である結論を出すのに足りるか」という過不足を認識できる力
  • グラフや表、図の読み取り力
    • 新規でも対応できる力
  • 複数の情報を同時処理する力(大量の実験、大量のデータ)
  • 論理的思考力(ロジックを組み立てる、矛盾を見つける)
  • 数学的処理能力
    • 計算式から逃げない
  • 典型を押さえていること
    • 身近な出来事に精通していること
      • かつそれを調べられている、疑問に思えていると尚よし
  • 冷静に文章を読み、処理する力
  • 読解力(どれだけ自分が知っている知識から乖離した文章でも、ちゃんと同じ意味だと結び付けられる力も含む)

とはいえ来年度はあれですよね、教科書改定後の初共通テストになるわけで。そうすると問われる問題の種類も若干変わりますし、どんな感じになるのかなぁと今から若干そわそわします。

まぁ、教科書が変わったところでやることは同じなんですが。

 

ということで、あくまで個人的な意見と感想を書き連ねさせて頂きました。違うことを思っていただいても全然構いません。「私はこう感じた」というだけなので、そこはご了承ください。

 

追試はどんな問題が出るか今から楽しみです!