あいまいまいんの生物学

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2023年度入試問題 生物 所感まとめ

東大の問題を解いてからはや2ヶ月以上経過してしまっているらしい。

i-my-mine.hatenablog.com

いやはや、時間が経つのは本当に早いものだ。

 

タイトル通り、ぷち全国行脚と称して前期の北海道、東北、名古屋、静岡、京都、大阪、九州、慶応(看・医)を解いたので、所感を本当に軽~~~~く書き留めておこうと思う。

今回はかなり気楽めで!あんまり分析とかもせず、良い問題だ~とかへ~ってなったものだけ書き留める!!!!!!!雑に!!!!!!!!!!!

 

 

北海道大学

北海道らしいやわらかさ&難易度で良いな~と思いつつ解いた。解きやすいので良い。

大問1問5

多能性幹細胞がテーマになっている問題群だが、特に好きだったのは問5。マイクロサテライトが扱われているところが好き。体細胞核移植の場合のバンドパターンをマイクロサテライトで考える問題は良い。簡単だけど理解が問える。

 

大問2

植物の受精についての問題だが、ウルチとモチの花粉がデンプン量で(ヨウ素液で)区別できる、ということを知ってびっくり。Rrがそんなところでわかるの!?花粉が持ってる一遺伝子がそんな簡単に判明するなんてすごい。なんだか感動してしまった。

後半の文章(Ⅱ)問6では、「花粉の正常な発達に必要な遺伝子に異常が生じる」(ただし卵発生は正常に行われる)という特殊条件での遺伝を考えていて、これもいい。注意力を問える問題。問8では遺伝子重複についても考えていてよかった。

 

大問4問4~

大問4は血液型とマラリアの話について。問4では蚊帳を使用することにより蚊に生じる「進化」は何か、と聞きながら、選択肢には「学習」の説明文も混ぜた問題になっている。世代を経て変化していないと進化にならない……という結構当然なことを聞いてはいるのだが、高校生の中には学習を進化と混同している(まさに進歩や変化はすべて進化だと思っている?)人も多いと思うので、良問なのではないかなと思った。大人が解いても引っかかるのでは?

問5、問6についても進化についてしっかり考えられる問題で良き。特に問6-2とか。ちゃんと理解してないとグラフが選べない。

 

東北大学

大問1問(2)

シロナガスクジラの中枢神経系の細胞が、脳から尾部の脊髄までにわたって軸索を伸ばしていて、長さが30 mくらいあるらしいという。ほんと!!?!?!?!?すごいね。初めて知った。で、能動輸送で物質を軸索内が2 μm/秒で動くと、細胞体から末端まで174日かかるんだって。運搬に。凄まじいなぁ。

 

大問1問(3)

まさかの量子仮説が出たんだが???????量子仮説はここらへんを見ればわかる……だろう。たぶん。調べたら沢山出るし。

量子仮説 - 脳科学辞典

http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/065030089.pdf

量子仮説を大学入試問題で見て、しかも仮説を答えないといけないとは思わなかった……。本当にそれでいいのか?とも若干思うけど、題材としてはびっくりさせられた。私が知らなかっただけで、今までもよく出題されてたのかなぁ?見覚えないな……。

 

大問3問5

モンシロチョウのオスがメスを探す仕組みについての問題。実験が丁寧にならべてあっていいなと思った。よくある問題ではあるけれど出会うたびに良い題材だなって思っちゃう。単純に好きなだけな気がする。

 

名古屋大学

名古屋大学は毎回「本当にその答えでええんか?」「これ何を聞いてるんだ??」と思う問題がぽつぽつ出る。今年もちょっと出た。なんとなく腑に落ちないけどいい問題も出てるので悩ましい。

大問1

ノーベル賞ネアンデルタール人問題をいきなり持ってくるとは……。ちょっと問題の選択肢が気持ち悪いところがあるとはいえ、コロナの感染と絡めるなど、結構ナウい(死語か?)話題を持ってきているのが面白い。

 

大問2

線虫の化学走性しかも脳神経系!!?!?!?!まじか……。AWA, AWC, AWBをここで見るとは(神経環の図も!)。情報処理能力を求められる問題で、結構たいへんだったが楽しい。最後の問題が実験デザインになっていて好き。

 

大問3設問(3)

スクロース輸送体の正体をつきとめるために野生型酵母の性質を改変しておこうぜ!というやつ。良い問題だと思う。

 

大問3文3

ジャガイモとタバコで接ぎ木すると、ジャガイモの塊茎形成とタバコの花芽形成が色々起こるのが面白い。ふたつは短日・長日という別の刺激でドライブされる現象のはずなのに、おそらく両方とも共通の?またはとてもよく似た植物ホルモンを使ってそれらの事象を制御してるんだろう。だから連動するんだろうな。想像力が刺激されてとてもよかった。

 

大問4

従属栄養生物を独立栄養生物に作り変えれると思う!だからやってみるね!!という問題。中身は代謝がメインなんだけど、その心意気が普通におもしろい。「Nさんの理論はこうだ。」から始まる理論説明も面白くてウケてしまった。なに?最終的に指向性進化(これまたノーベル賞)を持ってきて作り出しちゃうのもすごいし、その種明かし(何が起こったのか)まで考えさせるのも良いと思った。全体を通して結構面白くて、ワクワクする問題だった。

 

静岡大学

大問1

GFP導入株と八重咲き株を交配して個体を得る……みたいな問題なのだが、素直に良い難易度の問題だと思った。適度に頭を使うし、適度な注意力が必要。

 

大問4問5

有利な突然変異と中立な突然変異の世代数に関して、遺伝子頻度推移を表す適切なグラフを選ぶ問題。よく見るものではあるけれど、選ぶとなったら理解が必要な気もする。

 

 

京都大学

全体的に今年も「京都」って感じで、そんなところ聞くんかいとか良い題材ですねぇいい着眼点ですねぇを何度も感じる問題群。でもなんとなく例年より解きやすい?と思ったのは気の所為だろうか。

 

大問1実験4

まず気に入ったのがこれ。調節タンパク質がDNAにくっつくと電気泳動の移動距離が小さくなる……というよくあるやつだが、オートラジオグラフィーを使うのにも関わらず非標識DNA断片を混ぜた場合について考える問題が出題されている。こういう実験原理を理解できているかどうか考えるというか、何が起こっているのか把握できているのか問う問題は結構好き。

 

大問2(A)

マイクロサテライトの問題で、全体的にとても好き。子供のマイクロサテライトの単位配列反復数と両親の反復数から、どういう染色体が子供に受け継がれたのか考えるのはただのパズルだけどいい。後半では家系図を用いつつ、X病の原因遺伝子について、マイクロサテライトの遺伝を見ながら染色体上位置を推定する……という実践的な問題が!処理するのがとても楽しかった。

 

大問2(B)問6

Hox遺伝子のよくあるやつ……と思ったら、一風変わった出題方法で、「なんだこれ!」ってわくわくしちゃった。結局そこまで大きなひねりの問題ではなかったが、遺伝子発現の抑制と促進を図示される、っていうのは結構面白い。し、Hox遺伝子の理解にもつながってこの図示方法はいいな~と思った。

 

大問4問3~

分子系統樹を理解しながら光合成する生物たちの関係性を読み解いていくという問題だが、フィコビリソームというものについて初めて聞いた上に、それが遺伝子重複によってできたことで集光性アンテナ色素タンパク質複合体化していて役に立ってる……という仕組みに痺れた。説明文を理解できていないと系統樹が読み解けないようになっていて、その難易度具合も良いなと思うなど。

(B)では区画法標識再捕法について理解できているかを問われていましたが、最後の問7の連撃が面白かったです。問題が生じた際過大評価になるか過小評価になるかを判定していくものですが、とてもいい問題だと思います。

 

大阪大学

大阪は相変わらず計算がえぐい……という気持ち。計算というか計算的な処理?なんていえばいいんだろう。

大問2

CAR-T cellの問題ももうよく見かけるようになったなぁ。当たり前になってきたんかな。

 

大問3

ミカエリス・メンテン式ィ……こういうの好きだよね大阪大学。どうしてこんなことさせたがるの?そりゃ生物学やるには計算式をうにゃうにゃする力も必要だけども。こういうのを見るとビビってしまう人もいるんだよ?私とか……解けるけどさ。冷静にやればいいんだ、と分かっていても見かけで一瞬怯んでしまう。

 

大問4

特に実験2で、ウシと大腸菌両方のDNAが混じった状態のものにPCRして、出てきた電気泳動のバンドパターンを解釈するやつが良かった。問5の問題もいいところ突いてるなと思った。

 

九州大学

めちゃくちゃ単語を埋めるのが九州大学クオリティ。基礎!!!!って感じでよかった。応用の問題も手堅い問題で良き。良い訓練になる。

特に目をひく題材はなかったが……。

 

慶應義塾大学看護

大問1

敢えて2つの塩基でコドンができている生物を考えよう、という問題。ただのパズルではあるが処理するのはたのしい。

 

大問2

特に後半、陽イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーで抗体を回収する仕組みやその応用問題が良いと思った。

 

慶應義塾大学

大問1

慶応は「権威ある昔ながらの題材」を更に掘った問題が結構出るなという印象があるが、大問1はバーバラ・マクリントックの名前から始まって「やっぱりな!」という気持ちになった。中身はDNA型トランスポゾンとレトロトランスポゾンの問題で、生徒にとってはそういうものがある!というだけでも楽しいだろうし、問題としてもとても良かった。

 

大問2

植物の全身獲得抵抗性の話なのだが、実験が結構面白い。その上それぞれの実験を考察すると、微妙に矛盾する結果が出ていて(直感的にそう思う)、「なんで?」と思ったことについて最後綺麗に解決していくという構造がまた美しかった。