あいまいまいんの生物学

あいまいまいんの生物学

生物学が好き。勉強したり遊んだり。

日頃感じたこと思ったこと、出来事など

勉強して面白かった話

授業で使えそうな生物学の知識・雑談・小ネタ

などなどを紹介していきたいと思います

コメント大歓迎!気軽にコメントして下さい

ゲームサイトはこちら

2021年度入試問題 生物 所感まとめ

今日までで気になっていた大抵の大学の入試問題が出揃いまして、全て解くことができました!

解いたのは北海道、東北、東京、岐阜、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、そして慶應です。

 

解き終わった証として(?)、毎度誰に需要あるのかはわかりませんが、解いた各大学について簡単な所感と、

あとは総まとめみたいなことをしていこうかなぁと思います。

東大と名大については過剰な力量で書いた記事がありますので気になる人はそちらを参照してください↓

i-my-mine.hatenablog.com

i-my-mine.hatenablog.com

 

 

各大学 所感

東大と名大は記事があるので、それ以外の大学の所感を軽く書いていきます!

北海道大学

ネタとしては、

1 血糖濃度調節(チャネルと電位を絡めた話)、腎臓

2 カエルの発生、ガードンの実験、ショウジョウバエの発生(分類含む)

3 マイクロサテライトで親子鑑定(進化含む)

4 樽前山のバイオームと遷移

という感じでした。

難易度はそう高くなく、どこかで見たなという問題が集まっている感じです。

北大と言えば木原均からのゲノム問題!という感じだったのに、今年はそれはなかったですね。一応ゲノムと進化の話はありましたが……

3では、親候補の大人たちと、その子ども候補の幼少個体たちのマイクロサテライトPCR電気泳動の結果を提示され、

今回の子どもたちに関して、親は決まった配偶者としか交配してないのか、それとも自由交配してるのか、どちらなのかを見極める、みたいな問題は良かったですね。そうか、そういうことも読み取れるなぁという。

いつもほどの綺麗さや感動はなかったかも……?

 

東北大学

ネタは、

1 異化経路の調節

2 ヒトデの卵成熟とホルモン

3 腎臓と循環系(血液・心臓)

でした。

東北は毎年ちょっと解きにくい、堅い問題を出すイメージがあるのですが、今年もそんな感じがあります。

とはいえ2と3はどこかで見たことがある典型的な問題で、特に2は易しいなと思いました。経験のせい?

ちなみに2はろ胞細胞とGSSの話ね。これ知ってるわ〜って思いながら解きました。問題文読まなくても分かっちゃう……(あかん解き方だ)。

しかし、個人的には1のグラフ選択問題とかが、なんかこう、腑に落ちない……綺麗さに欠ける気がします。

河合でも別解が出ていますし、別解出る生物の問題(しかもグラフ選択問題)ってどうなん?という……

あと、「化学浸透圧説」は単語として問うていいのか?という疑問もある。

教科書をあまり逸脱しすぎないで欲しい……。

 

岐阜

ネタは、

1 体内の恒常性、性ホルモン周囲の濃度調節

2 植物の光周性、春化に関する実験

3 ALDH2PCR電気泳動(プライマー設計から)、ALDH2の各国遺伝子頻度に対する考察

4 C4植物とC3植物の比較

5 正のフィードバック機構による遺伝子発現調節、マウス筋芽細胞の分化と調節タンパク質

という感じでした。

ネタはまぁ、どこかで見たことあるなぁというものが多いのですが、聞かれる形があまり見慣れないというか、

「これって本当にこれが答えでいいの……?」と不安になるような聞かれ方だったりして……

ちょっと解くのが険しい気持ちになりました。ウーム。

自分の解く力が足りないだけかもしれないが……一部が所謂「日本語ムズカシイ」状態な気がします。

 

静岡

ネタは

1 性決定と選択的スプライシング(明言はされていないが、ショウジョウバエのSxl周りの話だと思われる)

2 呼吸の分子機構

3 血糖濃度調節と糖尿病の種類

4 植生の遷移と光量(光周性)

といった感じ。

中身は何も迷わず解ける、順当に正統派な問題という感じで、ストレスなくさらっといけます。

程よい応用問題が差し込まれているのも好感が持てます。

2の呼吸の所なんかはくどい程基礎基本を聞いてくれるので、これは問題集で標準問題として重宝されそうな問題たちです。

 

京都

ネタとしては、

1 転写開始点選択とフィトクロム

2 疾患遺伝子のマッピング

3 イネの品種改良と栽培環境、受容器の情報処理と応答

4 植物の根を食べる昆虫と葉を食べる昆虫の関係性(食害応答)、生態系中のエネルギー

という感じです!各テーマごと使う知識が横断的なものになっている、所謂京大の生物といった感じの問題たち。

ネタも程よく馴染みがなく、かつ「へぇ~!」となるものを織り込んでいて素敵ですね!転写開始点選択とか、イネの品種改良とか、根食昆虫と葉食昆虫の関係とか……興味深いです!

ただ、今年はあまり凶悪なものはなくて、割と素直な気がしました。なので解けちゃいます!これは嬉しいですね。

教科書逸脱も、一箇所怪しいけれど無かったのではないか……?という気がします。過敏感反応……じゃなくてファイトアレキシンで答えればいいから、きっとだいじょうぶ……。

 

大阪

ネタは

1 プラスミド作成(制限酵素選択など)とセレクション

2 免疫とシグナル伝達

3 動物の発生過程(分化、アポトーシス、基礎知識)

4 LDH活性測定法

5 増殖因子のシグナル伝達と抗がん剤設計

といった感じ。1と3(2も?)は基本に忠実な標準問題ですが、4と5はちょっと楽しい題材ですね。全く見たことはない、という訳ではないですが……(特にLDHのやつは一回見たことあると簡単に解けちゃうんじゃないかな)

解くのはストレスなくさらさら解けます!良い問題構成だと思います。

 

神戸

ネタは

1 赤血球と酸素と呼吸

2 遺伝子の基本(発現、スプライシング、コドン、突然変異)

3 光発芽種子の基本

4 進化の総合説と血縁度(包括適応度)

という感じ!

基本的な問題が多いですね。問題も、1がちょっとムムムとなる以外は(日本語とか計算とか)、基礎基本なのでサラサラ解けるのではないかと思います。

 

慶應

ネタは

1 視覚、HubelとWieselの視覚野に関する研究

2 毒を持つ生物の進化、抗毒素抗体の作成

3 アメーバに感染する細菌類とミミウイルス

でして、いや~これは良いですね!!!

慶應は毎回ネタが良いです。歴史的変遷とか、権威ある実験とか、真新しい未知の事象とか持ってきてくれます。

古典実験が題材になると、授業でも使えてハッピー!

出題される問題自体も、聞かれることはちょっとオーバーキルなものが入ることがあるんですが、基本は良い意味で「難しい」ものが多く、ほどよく頭を使います!基礎のしっかりした理解も必要です!好きです!

特に今回のネタの中でも2と3はいいですね!1はそこそこ他大学でも過去に出題されているので。個人的には3が好きでした!

アメーバとマクロファージの関連性を考えると両方でレジオネラが増えることを解釈できる……というあたりは、おぉってなりました。

(私がミミウイルス大好きなだけというのもある)

 

 

個人的なおすすめ良問大学

今年の問題だと、まぁまずはやっぱり東大ですよね!

東大はずば抜けて今年も良かったです。

次は京都、名古屋、慶應 かな!

完全に個人的な趣味ですが。学びがあるし、面白いという意味で、これらをおすすめします!

 

出題分野の状況

各大学を解いて、国公立大学9校における今年の出題分野の傾向をざっくりですが出してみました。

割とメインを張っている出題のみに注目しています。

とはいえ個人的な価値観でラベリングをしているので(ラベル項目も自己流で立てているので)そこまで情報として価値があるとは思えないが……。

とてもよく出たもの(今回4大学以上で出たもの)

  • 性決定・生殖・受精
  • 遺伝子発現調節
  • 異化
  • 植物の光周性(長日、短日、発芽etc)
  • ホルモンと恒常性
  • 進化(そのものを問われる場合もあるが、最後の締めとして使う場合が多い)

よく出たもの(今回3大学で出たもの)

  • 遺伝(連鎖・独立・複対立)
  • 植物ホルモン
  • バイオテクノロジーPCR、泳動、制限酵素、遺伝子組み換えetcそのものに対する基本問題) ※手法としてはバリバリに使われるので無視

そこそこ出たもの(今回2大学で出たもの)

  • 発生
  • 遺伝子のマッピング
  • 酵素(グラフ、阻害剤など)
  • 植物の屈性
  • 植物の食害応答
  • ハーディ・ワインベル
  • 光-光合成曲線
  • 腎臓(濃縮率などの計算)
  • 植生・遷移・バイオーム
  • 遺伝子・ゲノム
  • 生態系

という感じ。

 

ほか 解いた感触的な話

上で出てきていないのですが、「神経」の所で学ぶイオンの移動と膜電位の変化が、神経ではない細胞において発生するものを用いた出題が多数ありました。

神経のことは知ってて当然、って感じかな……?

とはいえそれらの出題は一応現象自体を知らなくても解けるようになっているのですが。神経の所でイオンの移動と膜電位の変化の原理を知っていれば大丈夫です!

 

あとは分類と地質時代の話全然出なかったな!?ってなりました。

進化は出てたけど。なんならいい感じの締めの問題としてめちゃくちゃ使われてたけど(最近流行りですよね)。

分類と地質時代が出なかったのはなんでだろう?昨年度出したから?それとも今年の配慮?わからないですね。

 

遺伝はちゃんとやらなきゃ駄目だな~。マッピングも、授業で一回実践してもいいかもしれないな。うおー、大変だなぁ……。

 

なんにせよ、生物基礎からも生物からもちゃんと出るねという印象です。どちらもまんべんなく出ます。

ちゃんとどっちも勉強しようね!

 

東大・京大だけで見ると……?

これは完全に個人的興味なのですが、東大と京大を解いていてなんか被ってない??って印象が強かったのでどれくらい分野が被っているか見てみました。

東大・京大で被っていたのは

  • 遺伝
  • 遺伝子発現調節
  • 植物の食害応答

の所でした。

遺伝、遺伝大事だよ!遺伝やらなきゃ駄目ですわ。

あとやっぱり問題を多段階で発展してくような組み方をしようとすると、どうしても遺伝子発現調節とかシグナル伝達みたいなのは出るのかなという印象ですね。

たくさんの資料を組み合わせて考えるには都合良いからね……。

植物の食害応答が被ったのは意外でしたが、ホットトピックだったからかなぁ。

 

 

ということで、大学入試問題にずぶずぶに浸った3日間でした。

お疲れ様!!!!!!!