あいまいまいんの生物学

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ギンブナの話、外来カマキリの話、植物の発生の話

・ギンブナの生殖方法

ギンブナというのは魚の一種です。

この魚の生殖方法の面白さは、「雌性単為生殖」を行えること!

 

まず、ギンブナには2倍体、3倍体、4倍体が存在し、2倍体は通常の有性生殖を雄と行うことができます。

単為生殖を行うのは3倍体の雌です。

3倍体の雌は、卵形成時に通常の減数分裂は行わず(2回連続で起こる分裂が1回で終わる?)、核相が3nの卵を作ります。

そして、この雌はフェロモンを放出し、近縁種の他の魚の雄に放精をさせます。

他種の魚から出てきた精子と、自身の卵を受精させる・・・と思いきや、実際は発生開始のための刺激として受精を使うだけで、精子由来のDNAは排除されます。

結果として、3nの卵が単為発生し、親と全く同じ遺伝的性質を持つ個体・・・つまりクローンの子供が生まれてくる訳です。

 

とても面白い機構だと思います。

元々、自身も高校生物を学んだ時に、ガードンの実験やらドリーの実験やら、核移植を未受精卵に行った後電気刺激によって発生を開始させることを知り、「えっ、そんなことってあり!?」と非常に衝撃を受けました。

その後も、ただの未受精卵でも刺激さえすれば発生が開始される(ただし途中で止まるが)という話を聞き、「精子ってDNA情報と発生開始の刺激ぐらいにしか必要とされていないんだな」と感じました。今でもその事をはっきりと覚えています。印象的だったので。

今思えば、卵には母性因子があり、初期の発生は母性因子として貯蓄してあるmRNAをタンパク質に変えることを中心として進んでいくため、DNA情報は必要ないんですよね。だから「受精しなければ個体にはならない」はずなのに、精子抜きで開始の刺激だけでも個体になりそうな発生が進んでいってしまうのかなと思います。

 

ただ、このギンブナの話で一番気になったのは「減数分裂をしない」という所です。あるサイトでは「減数分裂が1回のみで終わる」と書いてありましたが、「ん??????」と。

だって、もし本当の減数分裂ならば、3倍体では第一分裂さえできないはずではないですか?

体細胞分裂では、各染色体が二倍に太り、二手にひとつずつに分かれ、結果として同じ染色体組成の細胞が二つできます。

一方減数分裂では、各染色体が二倍に太ったら、相同染色体同士が対合し二価染色体を作るはずです。3倍体だと、三価??????

そして、減数分裂第一分裂後期では、相同染色体が対合面で分かれ、二手になります。2倍に太った染色体はそのまま一方の極に行くのです。結果としてできた二つの細胞内では、今まで相同染色体が2本1セットであったはずですが、2倍に太った一方のみとなるので、核相がnになります。

つまり減数分裂第一分裂を終えた細胞は、母細胞のクローンになるわけがないのです。

もっと言えば、3倍体は三価・・・どうやって二手に分かれるのか????他の生物ではここで不可能になるので、結果として卵や精子が形成できず、不妊となり、種無しになるのですよね。

ギンブナの3倍体雌が作る卵からは、クローンの3倍体ギンブナが現れることから、恐らく減数分裂第一分裂を行っているのではなくて、むしろ体細胞分裂を行っているのではないのでしょうか・・・。

 

※ 現在では、第一分裂がスキップされて第二分裂のみが実行されることがわかっているそうです!

 

・外来カマキリの移入ルート

カマキリは低い木の枝や竹に卵を産み付けます。

なんと人間が作る竹箒に、そのカマキリの卵つきのものがあるそうですね。

更に、外来カマキリの移入ルートとして主たるものが竹箒なのだそう・・・。

今度、ホームセンターに行ったら竹箒を見てみると、見つかるかもしれません。ちょっと、怖いですが。

 

 

・植物の受精卵における極性

植物が受精卵を作り、最初の分裂を行うとき、とても偏った分裂(不等分裂)が生じることはみなさんも知るところだと思います。

上下を二分する偏った分裂により、上部の小さい細胞が胚になり、下部の大きい細胞は胚柄になります。

この不等分裂について、自分が大学生の時には「オーキシンなどの物質の濃度勾配によって頂端基部軸が形成されるため」と説明を受けました。

最近の新たな研究では、これに加え、受精卵形成後に一旦細胞内の細胞骨格が崩れ、二種類の細胞骨格を用いて上部と下部が分けられるよう再構成されるためだという可能性が示唆されたようです。その二種類とは微小管とアクチンフィラメントです。

まず、受精前は上下軸に沿って並んでいた微小管が、受精後一旦崩れます。そして次にリング状の構造が現れ始めます。微小管のリングはまず伸長方向を指し示すかのように並び、受精卵がその方向に細長く伸びるのに伴って、次第に細胞分裂予定場所で境目を作るかのように集合していきます。

アクチンフィラメントも伸長方向にキャップ状構造を作り、後に細胞分裂予定場所で境目を作るかのように集合します。

微小管のはたらきを阻害すると細胞伸長に失敗するため、微小管は細胞伸長の役割を、

アクチンフィラメントのはたらきを阻害すると伸長方向への核の移動に失敗するため、アクチンフィラメントは核の上部方向への移動の役割を担うことが分かったそうです。

生物学は本当に日々更新されていきますね。喜ばしいと同時に、どこまで教えれば良いのか?どこまで紹介するか?どう教材として効果的に使うか?が考えどころになるかと思います。

生徒を見ている限りこういった実験への思考力がまだまだ不足しているなぁと思います。覚え込ませることしかできていないのですよね。

新学力テストでは実験に関して考察するような思考力が重要視されるので、培う方法を模索し、少しずつ掴んで行きたいものです・・・。

http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20161122_itbm.pdf