あいまいまいんの生物学

あいまいまいんの生物学

生物学が好き。勉強したり遊んだり。

日頃感じたこと思ったこと、出来事など

勉強して面白かった話

授業で使えそうな生物学の知識・雑談・小ネタ

などなどを紹介していきたいと思います

コメント大歓迎!気軽にコメントして下さい

ゲームサイトはこちら

まいばいお8 合成生物

 

 

✿Total synthesis of Escherichia coli

2019年5月、「Total synthesis of Escherichia coli with a recoded genome」というタイトルの論文がNatureに掲載されました。

www.nature.com

 

直訳すれば、「ゲノム再コードによる大腸菌の完全合成」…

とても強気なタイトルです。

一体どんな研究で、何が行われたのでしょうか?

 

✿自然界では64個のコドンを使ってタンパク質を作っている

私たちが持つ遺伝情報DNAは、A, T, G, Cというたった4つの塩基から構成される塩基配列というものを持っています。

特に「遺伝子」と呼ばれる領域の塩基配列は「どの種類のアミノ酸をどの順番で並べてタンパク質にするか」という情報を持ち、

ここでは3つの塩基の並び(コドン)が1つのアミノ酸を指定するようになっています。

4種類の塩基が作り出す3つの塩基の並びは43 = 64種類ですので、コドンも64種類。

タンパク質合成に使われるアミノ酸は20種類ですから、重複して同じアミノ酸を指定するコドンや同じ意味を持つコドンがあるという風になっています。

File:Codon-Sonne Aminosäurenamen deutsch.svg

f:id:I_my_mine:20220222144548p:plain

CC0

しかし、この「重複」は本当に必要なのでしょうか?

64種類全てのコドンを使わなくても、生物体は論理上生きられそうなものです。

 

 

✿一見「無駄」なものを省いても生物は生物か?

最近ではDNA合成技術や編集技術が安価かつ容易に実行できる環境が整ってきました。

ですから現在ゲノム合成によって生物体を理解しようという新たな研究領域が盛んになってきています。

この分野の先駆者たちによる研究の1つに、生物のゲノムサイズを小さくするというものがあります。

彼らは「ゲノム中にある一見無駄な配列を除いでゲノムを今よりコンパクトにできないか」と考え、コンピュータを用いてゲノム断片を再設計し、化学的に断片を合成、

それらを組み立てるアプローチで、M.mycoidesのゲノムサイズを約50%縮小することに成功しました。

 

今回の研究者であるフレデンスらは、ゲノムの無駄を考えるのではなく、

「コドンの無駄を省いても生物は運営されるのか?」を考えました。

64個のコドンを全て使わなくても、一生物が合成されることは可能であると示すために、大腸菌のゲノムを人工的に合成したのです。

 

彼らが今回減らそうとしたのは、セリンを指定する2つのコドンと1つの終止コドン(TAG)。

これにより、計61個のコドンしか使わない大腸菌ゲノムを作ろうと考えました。

変換対象となるコドン数は18,214個で、合成しなければいけないゲノムは400万塩基対という大きさです。

 

彼らはまずコンピュータを用いてDNAを設計、化学的に断片の合成を行いました。

作った断片は、S.cerevisiaeがもつベクター(小型の環状DNAで、細胞体同士でやりとりができる)に組み込み、これを大腸菌に与えました。

大腸菌では、与えられたこれらのベクターに含まれる塩基配列が、ゲノムの等価な自然領域に直接組み込まれます。

このプロセスを五回繰り返すと、50万塩基のDNA断片が合成DNAに置き換わりました。

f:id:I_my_mine:20190616140352p:plain

 

A~Hの8株の大腸菌がこの方法で生産され、各株はゲノムの異なる領域をカバーする合成DNA断片を含んでいる状態になったため、

これらの切片を組み合わせて完全合成ゲノムが作られました。

 

作られた完全合成ゲノムをもつ菌株は生存可能であることが証明され、

天然のものよりもやや弱いながらも、典型的な実験条件の範囲で増殖することができることが分かりました。

つまり生物は、コドン数を減らされても生きられるということなのですね…。

 

✿この研究の先にあるものは

そもそもなぜこんなことをしたのか?

 

1つは勿論単純に、コドン数を減らしても生物が生物として成立するか、という興味でしょう。

 

しかしもう1つ実は目的があります。

今回合成された菌では、終止コドンTAGまたは二つのセリンコドンTCGおよびTCAをもはや使用していません。

ということは、これらを認識する細胞機構は、細胞内に残ってはいるけれどもはやいらない存在です。

 

この空いた枠に、例えば非標準アミノ酸―天然で使用される20種類以上にこの世界に存在するアミノ酸―を再割り当てすることができる可能性があり、

もしこれが可能であれば非標準アミノ酸を所望の配列位置にコードさせることが人の手によってできてしまいます。

そのように合成された「天然では作られ得ないタンパク質」は、

本来自然界では関与しないような化学反応を触媒するものになったり、

生命体の中でも今まで起こらなかった反応を起こし生物体に新たな能力や働き・形質を与える可能性もあるでしょう。

つまりは「人が所望する能力を持つ生物を作り出す」ということが目的なのです。

 

また、非標準アミノ酸が再割り当てされたコドンを持つ生物は、既存のウイルスに感染しなくなります。

なぜならウイルスは現在の64個のコドンとアミノ酸の対応を基に自身を設計するための遺伝情報を持っており、

それをコドンによる指定物が違う合成生物に注入したところで目的のタンパク質が合成されてこないからです。

つまり合成されたコドン再割り当て生物は病原菌感染に対して勝手に強力なバリアを持つのと同じ状態になるわけです。

 

更に、非標準アミノ酸が与えられている人工環境下でなければ生育できない細菌、というものも作れるでしょう。

つまりは人間が細菌の生きる場所、死ぬ場所を局所的に管理できるような

そんな生物を作り出せる可能性があるわけです。

まいばいお7 液体のりで細胞培養

www.u-tokyo.ac.jp

これについてまとめたので紹介しておきます。

ほぼプレスリリースと一緒ですが…

 

 

✿「献血って必要ですか?」

iPS細胞の分野を学習すると、よく出てくる質問が「献血って必要ですか?iPS細胞から造血幹細胞を作って赤血球や血小板を作れば血液は手に入るんじゃないですか?」というものです。

確かにそう思うのに、実際はそうじゃない。なんででしょう?

 

✿細胞培養って案外大変なんです

iPS細胞でも造血幹細胞でも、体外で増殖・維持するためには「細胞培養」という行為をしなければなりません。

この細胞培養が実は曲者です。

細胞を培養するためには細胞ごとに、様々な細かい条件が要されます。

例えば、組織間液を模した液体を培地と呼びますが、この培地も細胞によって必要なものが異なり、使い分けがいります。

 

更に、培地だけでは足らず血清を加えなければなりません。

血清には培地サプリメントだけでは補えない種々の細胞増殖促進物質、細胞障害保護因子、栄養因子などの成分が含まれるためです。

血清にはウシ胎児血清(FBS)を使用されることが多いですが、FBS は高価で、更にはロット差(ボトルごとに微妙に中身が違うこと)があり、

対象細胞に最適な血清は予備実験を通してしか分かりません。

 

✿血清が造血幹細胞の未分化性に影響する

実は造血幹細胞を細胞培養すること自体は以前から取り組まれていました。

しかし、血清成分にある微量な混入物が、造血幹細胞自身を分化する方向へ誘導してしまうという現象が発生し、造血幹細胞を未分化なまま増やすことは非常に困難な状況でした。

更に、血清中に含まれるアルブミンが、細胞培養の間に酸化され、細胞老化を誘導してしまうということも明らかになりました。

 

そこで造血幹細胞を未分化なまま培養するために、混入物の除去と、アルブミンを酸化しないような化学物質で代替することが求められてきました。

この課題に取り組んだのが東京大学です。

 

2019年5月30日、東京大学は「PVAがアルブミンの代替物質として有効である」という研究結果を報告しました。

PVAとは皆さんがよく知る「液体のり」の成分です!

PVAは培養液中で酸化されない安定な物質であり、造血幹細胞の老化も抑制しつつ数ヶ月間にも渡る長期間増幅を維持することを発見しました。

細胞もちゃんと増殖することが明らかになりました。

 

更に、マウスから1つの造血幹細胞を採取し、1ヶ月間培養・増幅させた後、複数の放射線を照射したマウスに移植するという実験が行われました。

通常造血幹細胞に異常をもつ患者に対して造血幹細胞を移植する際、放射線によって骨髄を破壊してから移植を行います。

つまりこの実験は実際の患者にPVAで増やした造血幹細胞が移植できるかの試験ですが、

結果すべてのマウスで移植した増幅造血幹細胞の骨髄再構築が確認できました。

この結果は、ドナーからごくわずかな造血幹細胞を得てその得られた造血幹細胞を増幅することで、複数の患者へ移植可能な造血幹細胞が準備できることを示しています。

 

更に、上で述べたように「造血幹細胞は骨髄破壊的な処置を行わなければ骨髄への生着は難しい」と今まで考えられてきましたが、

「大量の造血幹細胞を個体へ移植すれば骨髄破壊的な処置を用いずに造血幹細胞の生着が可能である」という可能性が最近あがってきていました。

この方法はドナーから得られる造血幹細胞の数に限りがあるため無理だと思われてきましたが、今回のPVAによる培養を使えば大量の造血幹細胞が準備可能です。

そこで研究者は、50個という少ない造血幹細胞から充分量の造血幹細胞をPVA培養によって得る、骨髄破壊的な処置を用いないでマウスに移植を試みました。

結果、回復が確認できたのです!

 

✿命を救うのは医者だけじゃない

今回の研究により、今までより安価で、献血に頼らず造血幹細胞が得られることで、救われる命がどれだけ多いことでしょう…。

私たちは普段、命を救う存在は医者だけだと考えがちですが、私はそうじゃないと思います。

このような研究をして生命活動の原理を探ること、

このような研究を促すような機器やシステムを開発すること、

これらの仕組みを運用するための経済的方法を考えること…

いろんな方法で人は命を救うことができる、救うことに関われるのだと私は思います。

今回の技術についても、実用化には今後多くの時間と様々な役割の人の手間がかかると思いますが

なるべく早期の実用化に期待したいですね!

まいばいお6 睡眠

 

✿ちゃんと寝てますか?

「睡眠」って一体なんなんでしょう。

勉強時間が睡眠のせいでなくなってしまった・・・なんて睡眠のことを憎んだことがある人もいるのでは。

私もよく睡魔が襲ってきます。他の動物も睡眠しますよね。

睡眠って必要なものなんでしょうか。

 

 

✿睡眠の基本知識

一連の睡眠は2種類の睡眠からなります。

レム睡眠」と「ノンレム睡眠」です。

レム睡眠時は「目玉がキョロキョロ動く(rapid eye movement(REM))」からきています。

レム睡眠

項目

ノンレム睡眠

活動

休む

動く

目玉

動かない

不規則

心拍

減る

変動

血圧

下がる

休む

身体

休む


眠っている間、浅い眠りであるレム睡眠と深い眠りであるノンレム睡眠が交代していくのですが、

いきなり変わるわけではなく段階的に眠りの深さが変化していきます。

その状況は脳波の変化によって分かります。

f:id:I_my_mine:20190606203325p:plain

 

 一連の眠りの深さや他生体反応の変化は以下のようになります。

f:id:I_my_mine:20190606203340p:plain

例えば成長ホルモンなんかは「ゴールデンタイム説(夜10時~2時に出る)」なんてのが昔流行りましたが

最近では入眠後3時間で出るという研究結果が出てますよね。

あとは、このグラフで面白いのはコルチゾールメラトニン、そして体温の変化でしょうか。

私たちは起きる前から起きる準備をしているんです。面白いですよね…

 


✿睡眠は記憶固定化に重要

レム睡眠時にもノンレム睡眠時にも、覚醒時のリプレイ現象が行われることが脳波から分かっています。

ノンレム睡眠時は実際のタイムスケールを数10分の1に圧縮した形でリプレイが起こるのだそうです。

どちらも脳波を抑えたり乱したりすると、睡眠前の学習で獲得した記憶の減弱や、記憶の獲得レベルの低下が起こることが知られています。


レム睡眠では特に「エピソード記憶」の整理に寄与します。

いつ、どこで、誰が、何を・・・というのがエピソード記憶です。

更にレム睡眠には「嫌な記憶の消去」という役割があるらしく、安定で健康的な精神が保たれるにはレム睡眠が欠かせません。


ノンレム睡眠では技術やノウハウに関する長期的な記憶である「手続き記憶」の定着に寄与し、

例えば自転車の乗り方や、数学の公式の使い方など…いわゆる「解き方」やそのコツは睡眠時に脳内で復習され強化されます。

また、ノンレム睡眠時には「言葉で表せる記憶」の中でも特に、英単語と意味とのセット等の「意味記憶」の整理も行われます。

古典単語、英単語、専門用語・・・意味を覚えねばならないものは人生において沢山存在しますが、これらがごちゃごちゃと頭に詰め込まれた状態で寝た際、深いノンレム睡眠は記憶整理を勝手にやってくれるのです。

これは、私も高校時代とってもお世話になった効果でした。頭に寝る直前にめちゃくちゃ詰め込んでぐっすり寝ると、本当に綺麗に整理されます。効果は私のお墨付きです。

 

 

✿寝ないとどうなるの?

無理矢理断眠をさせたマウスは2週間で敗血病を発症し死んでしまいました。

睡眠しないと免疫系が弱まることや、神経細胞にダメージが貯まることが知られています。

 

また、覚醒時、脳では老廃物清掃機構がうまく働きません。

通常、生体内ではリンパ管というものが張り巡らされ、

筋肉の動きによってリンパ液が動き、リンパ管内を移動することで、老廃物清掃が行われます。

しかし脳にはそれがありません。だから普段老廃物を流せません。

そこで睡眠時、「グリンパティックシステム」といって、脳内を埋め尽くす細胞が縮むことによってリンパ液の流れを生み出し、老廃物を押し流すと言われています。

睡眠不足になるとこの掃除がうまくいかないため、脳内に物質の蓄積が生じ、結果としてアルツハイマー病になる可能性が示唆されています。

 

更に睡眠障害はホルモン分泌の異常も引き起こします。

オレキシンというホルモンは食欲推進のホルモンなのですが、同時に睡眠からの覚醒状態を引き起こすホルモンでもあります。

ということは睡眠障害が起こるとオレキシンはダイレクトに異常になるのですが、

結果として摂食障害に繋がります。

 

 

✿「寝ない」を習慣化しないこと

やっかいなのが「寝ない」ということは「やみつき」になることです。

動物は辛さを幸福に変える術として、エンドルフィンやドーパミンといった物質を持っています。

これらは辛い時に脳内で作られ、人に多幸感や精神ストレスからの逃避・全能感を与え、いわゆるハイな状態にさせるものです。

これら物質には依存性が存在し、もう一度味わいたいという気分にさせると同時に、普段の生活への物足りなさを与え、無気力・倦怠感を生み出します。

 

「徹夜しちゃったー」なんて自慢げに言ってては駄目!しっかり寝ましょうね!!

私は何のプロ?

生徒の人生相談を受けた。

 

自分は教師になりたいと思っているけれど

そうやって親に伝えたらじゃあ教育大学だねと言われた。

でも自分は教師はプロフェッショナルでなければならず

専門的な学問をするにはそこじゃない、もっとレベルの高い国公立だと思っている。

先生はどう思うか?

実際どちらの判断が正しいと思うか?

 

みたいな相談。

 

で、私は勿論

教師はその学問のプロフェッショナルとして学問を伝えていくべき存在だから

高校教師という学問専門性の高い職業を選びたいと思っているのであれば尚更

しっかりと学問をできるレベルの高い大学を目指すべきだと思う

と伝えた。

教師は、私が考えるに

教師にやっとこさなるような人がやるものではなく

色んな可能性を秘め色んな経験をし様々な道が拓けているような人の中でも

そういう方向に生徒を導いていこうと思える人がやるような仕事であるのが理想だろうと思っている、とも伝えた。

だから大学に入る時、入った中で学ぶ間は

教師になりたい!と思うのはいいけれど

常にその道を極めたい!と学業に真摯であり、深く探求する人であって欲しい。

その専門性高い知識をもってして、専門性高い経験をもってして

教師を選んでくれたら素晴らしい、と言った。

 

 

でも自分がそうやって言っている傍らで

自分は本当にプロフェッショナルなんだろうか?という疑問を感じずにはいられなかった。

自分は…

生物の知識を極めているかといえば、勿論極めきれてなんかいない。

一生懸命勉強はしているけれど、全然足りていない。

知識だけでなく、実技面でも足りていないと思っているし

物理、数学、化学…そういう知識も足りない。

英語も全然大したことない、よくできてはいない。未だにネイティブのリスニングが不完全だし、語彙数も少ない。

プログラミングも中途半端で、極めきれていない。活かせてもいない。

人間としても…まだまだ未成熟で、考え方、振る舞い、経験、何もかもが不足しかないように感じてくる。

こんな人間が教師だ。

こんな人間が教師でいいのか?

教師は、プロフェッショナルじゃないのか?

私は、何のプロフェッショナルなんだろうか?

 

ちょっと教師という仕事に慣れて

ちょっとだけうまく振る舞えるようになっただけで

中身は全然生徒にとっての教師…素晴らしい教師になんか、なれてないじゃないか。

でも、どれだけそれに焦りを感じたところで、絶望を感じたところで、

一瞬でどうにかなるものなんかじゃないって、

今までのことはどうにもならないし、これからを根気強くどうにかしていかなきゃいけないだけなんだけど

なんだか途方もないし自分のこんなちっぽけな能力で本当の教師という存在になれるのかな、なんて思ったりして…

 

 

私が教壇に立っていていいのだろうか、とちょっと考えさせられた人生相談だった。

それでもここで立たなくなる方が無責任だから立つし、

立てる資格があるように努力はするけども。

それでも、ちょっと心がぐさぐさきた。勝手に。

私は何のプロなんだろうな。

まいばいお5 脳の機能局在

久々になってしまったまいばいおです。

最近、作りすぎて、最新の情報を記事にしたと思ったのに

発行できずに遅くなっていく現象に困っています。

前倒しで発行するしかないな…

 

今回は脳の話

 

✿脳は均質ではない

皆さんは脳において物事を考えたり、処理したりしています。

脳とは、主に神経細胞と呼ばれる細胞が沢山集まってできた構造で、脳全体では千数百億個の神経細胞が存在すると見積もられています。

聞いたことがあるかもしれませんが、脳は「機能局在」といって、脳全体で同じことを皆がするのではなく、複数の領域に分かれてそれぞれが各行為を担当するように分担制になっています。

 

✿脳機能局在が分かった経緯

元々脳はどの部位をとっても同じ働きをしているという主張の方が広く信じられていました。

しかし、1861年にブローカという医者が、ルボルニュという患者を解剖するところで転機がやってきます。

 

このルボルニュという患者は、言葉は喋れないがその他知能は良く保たれているという状態でした。

ブローカはこの患者の脳の左の下前頭回に脳梗塞を見出し、この領域に言葉を話す機能があると睨んだのです。

その領域は現在「ブローカ野」と呼ばれていますが、そこに損傷を抱える別の患者の例を挙げましょう。

 

ブローカ野損傷による失語症の具体例

典型例:David Ford。もともと沿岸警備隊のラジオ通信士。

私はFord氏に入院以前の仕事について尋ねた。

F: 「私は通…いえ,士…ああ,ええと,…いえ,もう一度」

私:「お手伝いしましょう。あなたは通信…」

F: 「通信士…そうです」

私:「沿岸警備隊にいたのですか?」

F: 「いいえ,いや,はい,はい…船…マサチュー…チューセッツ…沿岸警備隊…数年(両手を挙げて“19”という数字を示す)」

私「Fordさん,病院でどのようなことをしているのか,話していただけますか?」

F: 「ええ,もちろん。私を行く,あのー,うん,理学療法9時,話すこと…2回,読む…うう…か…,えー,買う,あのう,書く…練習…うまくなる」

私:「週末家に帰ったことはありますか?」

F: 「もち,はい…木曜日,ええと,あのう,その,いいえ,ええと,金曜日…バー・バ・ラ…妻…それと,ああ,車…運転…パーンパイク…わかるでしょう…休息…それとテレビ…」

私:「あなたはテレビを見ていて内容をすべて理解することができますか?」

F: 「おお,はい,はい…ええと…だいたいは」

 

 

ブローカの発見後、1870年にフリッチュとヒッチッヒが、ごく弱い電流で大脳皮質を刺激するとごく限局された筋肉群のみが活動することと、

電極をわずかにずらすと別の筋肉群が動くことを確かめました。

これらの知見から、脳の機能局在が明らかになったのです。

 

✿複数領域のはたらきが一つの行為を作っている

私たちは何気なく話したり、運動したり、考えたり、呼吸したり・・・

それら日常行為に対し難しさを感じたことも、どういう風に形成されているのかも気にしたことがないでしょう。

実際はそれら行為は全て複雑なものであり、脳機能局在について学ぶと「そんな風に分解されるのか・・・」という驚きの連続です。

脳は、複数領域で細かい役割分担を行っており、それらが正しいタイミングで協調しなければ普段の行動というものはできないのですね。

 

ブローカ野を損傷された患者は、言語理解やその他の認知機能は比較的保たれていたものの、喋ることがとにかくできなかったですね。

だからブローカ野は「言葉を話す」ための領域であると推察されました。

ここで別の「ウェルニッケ野」と呼ばれる脳領域が損傷された患者の例を出しましょう。

ウェルニッケ野のはたらきが推察できるでしょうか?

 

ウェルニッケ野損傷の具体例

患者名:Philip Gorgan。

私:「どうして病院にくることになったのですか?」

G:「おい,私はひどい目にあっているんだ。私はとても緊張している。ほら,時々私は巻き込まれちまって,私はタリポイについては言えないね,1か月前,ほんのちょっとだけどね,私はたくさんのことをうまくやったんだ,私はたくさんだましたんだ,でも,反対にね,私が何を言いたいかわかるだろう。私は付き合わなくちゃならない。もう一度見てみろ,トレビンとそのようなもの全部を」

私:「(肩に手を置いて一時休止させてから)ありがとうGorganさん。あなたにちょっと聞きたいのですが…」

G:「おお,もちろん,さあどうぞ。聞きたいならなんでもいいよ。もし私にできるならやりましょう。ああ,私は間違ったやり方で言葉を選んでいる。このすべての散髪屋はあなたを止めるときはいつもそいつはぐるぐる回っている。もし私の言いたいことがわかるなら,それはリピューサーと互角で同点だ,リピューサレーション,ええと,私たちは別の時に一番の方法を試していた,それは向こうのベッドで同じことが…」

一度話し出すと止まらず、合いの手が入れられないほどに喋る。

 

 

ウェルニッケ野の損傷患者は、流暢に発話はできますが、言い間違いも多く、他者の言葉も理解できていないようです。

つまりウェルニッケ野は他者言語理解に必要なんですね。

 

他にも、音声情報と語彙意味情報の統合を担う部位、読字処理を担う部位、書字を担う部位、談話・ユーモア・皮肉・比喩の理解を担う部位、発話のための筋肉活動を担う処理など言語関係だけでも本当に細かく分かれています。

 

 

ただ、最近は逆に、脳の機能局在を強調しすぎていたのがおかしかったのではないか、

やはり脳の機能には冗長性があったのではないか、という議論も上がってきていますね。

まだまだ脳については未解明な部分が多いので、続報を待ちたいところです。

INSTANT WORD POWERはパワー系だった

いろんなところで評判が良いボキャビル本、

INSTANT WORD POWERをやっとこさ試しました!!!

(買ってきてだいぶ放置してた…)

 

買ってきたよ記事はこれ↓

i-my-mine.hatenablog.com

 

で、実際やってみた感想。

 

パワー系だこれ。

ゴリッゴリのパワー。

きらいじゃないよ。むしろ好き。

 

 

まず、最初の導入のところに、やり方が書いてあるんですが(勿論全部英語)

簡単に要約すると

「お前ら1歳の時どうやって単語覚えたよ??

聞いたろ?練習したろ?ミスって直したろ?

喋れなきゃ死ぬって気持ちでやったろ??

それだけじゃん!!!!!!

やる気出せ!聞いて言え!練習しろ!単語を使え!間違って直せ!!

見ろ!言え!書け!!!!!!」

って感じ。

ここからパワー系だぁ…

 

言え!!という強制があったせいで、

職場とかでこまこま進められなかったので手をつけるのが遅くなってしまいました。(声出せないもんね)

 

やっと休日が来たので家でゆっくり声出しながらやってみよう!と意気込んで着手。

こういうのは言われた通りにやってみるのが良いのだぜ。

 

 

一回で1セッション分やるのが理想的だなーということも導入に書いてあるので

取り敢えず1セッションを目指してやってみました。

 

セッションの中身は最初簡単な問題から始まります。

文章を読めば自ずと答えに導かれていく感じの作りになっていて

空欄に答えを埋めていく。

この時点で既に語源とか言葉の意味とかに繋がるようになっていて、

「あーなるほどなぁ」と言いながら発音しがてら埋めていきました。

発音も一応発音記号が単語の横についていて、

初見単語もちゃんと意味が文中でわかるようになっているので親切です(勿論全部英語)。

 

で、やっていく内に気づいたんですが…

 

繰り返し多くない?????

何回聞かれるのこれ?????

 

同じことめっちゃ聞かれます。覚えてるか?覚えてるか!?って感じ。

嫌でも覚えていくわ。

更に多方面から攻める。

接頭語の意味、ここから推測できる単語の意味、単語の残りの部分の意味の推察、スペリングチェック…みたいな展開が何度も何度もあって、

知らない内に沢山の単語が紐付いている…これ凄くない…????

 

中だるみしないように、20問程度やったところで

REINFORCEパートが来ます。強化だ強化だ!!

いわゆる単語テストみたいな感じで、今まで出てきたスペルのチェックをやらされる。

うん、強いぞこれは…

 

何がいいって、答えがとっても近くに書いてあるから

さくっと答え合わせができてすぐ修正できるところ。

間違えて直す、に重きを置いているなぁというつくりをしています。

 

REINFORCEが終わったらまた問題が始まって…REINFORCEで…終了!

丁寧に発音とかをネットで調べながらやったりすれば30分~1時間くらいかな?

 

普通に単語を勉強しようってなった時には、

まず発音しなかったり…

意味を分解して確認せずぼやっと捉えて終わってたり…

そもそも意味すら確認してなかったり…と

中々定着しないというよりも、印象に残らない。

 

けど、INSTANT WORD POWERは

書く分自分の手でちゃんと紡いだ単語、っていう感じが出るし

発音する分単語の印象が音でも残るし

分解されている分パーツを思い出しながら単語を組み立てることも可能になるし

手で書き、耳で聞き、目で見た分様々な感覚が駆使されて単語を獲得しに行っている感がある。

何よりもやはり「間違えて直す」が凄く効果的で、

間違えた!!って思ったことも印象に残り、

更に直す時に改めて単語をちゃんと見て、スペルを獲得することができる!!!!

「くどいよ~」というくらいゴリゴリにやってもらえたことが

自分にとってはプラスに感じますね…

さらっと語源解説されるだけのやつよりよっぽどいいよ!!

前評判どおり!!!お金出した甲斐があったぜ!!!!!!

 

今日一日一回分だけでどれだけボキャビルできたんだというレベルで自分の充足感があります。

パワーってすごいな…(?)

EIGO!

さて

最近英語を勉強しています。 

 

まず、毎日これを聞いてます。

www.bbc.co.uk

これは、BBCが配信しているれっきとした英語教材。

6分間で面白い話題について学べるだけでなく、

英単語の意味も教えてくれるというスグレモノ。

非常に聞きやすくて楽しいので良い!

scriptもついているし、最強ですね!!

 

そしてこれも使っている。「英語物語」。

eigomonogatari.com

これはアプリなんですが、

某クイズアプリの英語版みたいなもの。

これ、めちゃくちゃ勉強できる。

単純にクイズを解いていけば勉強できるけど、それだけじゃなくて

物語も英語表示にできるし、

間違えた問題は復習のストックにちゃんと入って復習できるし、

体力が回復しない間は発音記号と穴あき問題に無限に挑戦できるし。

これはね、凄いですよ。

解説もしっかりしててとてもおすすめ。楽しい!

 

 

更にこれも買った。

 

Instant Word Power

Instant Word Power

 

 いわゆるボキャビル本で、

語源から単語数を増やすことができるというもの。

中身はゴリゴリのトレーニング系だけど、なるほど感が強く、

しつこく復習してくれるので良い!

沢山のブログで取り扱われている信頼実績ある一品なので、

紙質とかは抜きにして中身はしっかりしていると思う。

(高かった…)

 

 

ということで、EIGOを頑張って勉強していこう!