前回↓
今回は本題の計算問題に取り組みながら、前回の復習をしつつ進めたいと思います。
一番簡単でスタンダードな、ひねりのない問題をまずはやっていきましょう。
1問目
さて、どうアプローチしましょうね。
まずは状況を確認します。みなさんも、まずは情報整理から始めるといいと思います。落ち着くので。
わかっていることは、
- ハーディ・ワインベルグの法則が成立する集団
- A, aが対立遺伝子である(A, a以外を想定しない)
- 100人の集団がある(ヒトなので2倍体である)
- 表現型[A]、すなわち遺伝子型AAかAaが91人いる
- 表現型[a]、すなわち遺伝子型aaが9人いる
- 求めたいのは、各遺伝子型の人数とA・aの遺伝子頻度
ということです。ハーディ・ワインベルグの法則が成立しているということは、自由交配の集団ですね。
ハーディ・ワインベルグの法則を満たす集団は、世代を経ても遺伝子頻度が変化しません。それは、「ハーディ・ワインベルグの法則を満たす」という言葉を見た瞬間に思い出すと良いでしょう。
どうせ求めたいものの中にもAとaの遺伝子頻度がありますので、今世代および親のAの遺伝子頻度をp、aの遺伝子頻度をqと置いて、なにかできそうか考えてみましょう。一応書いておくと、対立遺伝子はAとaしかないのでp+q=1です。
さて、親集団はどうやってこの世代を産んだのかを思い出します。自由交配です。親集団のAの遺伝子頻度p、aの遺伝子頻度qから、以下の表が作れます。
ということは、次世代(今回の集団)において各遺伝子型の比率は
AA:Aa:aa=p^2:2pq:q^2 ということになります。
今回の集団は100人集団なので、
AAの個体数は 100 × p^2/(p^2+2pq+p^2) = 100p^2 ※p+q=1なので
Aaの個体数は 100 × 2pq/(p^2+2pq+p^2) = 200pq
aaの個体数は 100 × q^2/(p^2+2pq+p^2) = 100q^2
になりますね。
さて、上の問題を見てみると、AAとAaの個体数は足して91人、aaは9人であることが明記されています。aaが一番すっきりしているので、ここから攻めます。
aaの個体数について、遺伝子頻度qを用いた式と与えられた個体数数値をイコールで繋いで 100q^2 = 9
q^2 = 9/100
よってq=3/10。
p+q=1より、Aの遺伝子頻度p=7/10と出ました。
上の問題で求められていたのは、Aとaの遺伝子頻度だけでなくAA, Aa, aaの個体数だったので
AA = 100p^2 = 49
Aa = 200pq = 42
aa = 9
ということで収まりました。
答え
Aの遺伝子頻度7/10、aの遺伝子頻度3/10
各個体数は AAが49人、 Aaが42人、 aaが9人。
ポイント
- 解く前に情報を整理しておく方がいい!落ち着くから!
- ハーディ・ワインベルグの法則を満たす集団は親世代も次世代もいつの世代も遺伝子頻度が同じとして良い。また、自由交配するのも変わらないので、AA:Aa:aa=p^2:2pq:q^2になる。が、最初の頃は丸覚えではなくて、導出しながらやっていこう。
- 表現型[a]はaaのみしかいないので数式処理が楽。わかるところから攻める。
2問目
これもまずは整理しましょう。
- 対立遺伝子はAとa。
- 集団における遺伝子型aaの頻度が0.16。
- ハーディ・ワインベルグの法則を満たす集団。
- 求めたいのは、遺伝子型Aaの頻度。
ハーディ・ワインベルグの法則を満たす集団なので、今回の世代でもその親の世代でも遺伝子頻度が変わりません。ということで、適当にAの遺伝子頻度をp、aの遺伝子頻度をqと置きましょう。今回も対立遺伝子がAとaしかないので、p+q=1が成立します。
で、こう置くと今回の世代におけるAA、Aa、aaそれぞれの存在比もさくっと出ます。さくっと出なければ、また表を描くところから始めればいいです。何度でも表は描きましょう。描けば描くほどいいので。
これね。
ということで、今回の世代でも勿論、
AA:Aa:aa=p^2:2pq:q^2 です。
その上、問題文で「aaの頻度が0.16」だと提示されていますね。ここから立式ができそうです。
aaの頻度を求める式を、pやqを使った式で作って、それを0.16の数値とイコールで結びましょう。
aaの頻度 q^2/(p^2+2pq+q^2) = q^2/(p+q)^2 = q^2 = 0.16
q=0.4
p+q=1より、p=0.6が求まりました。
あとはAaの遺伝子型の頻度の式を作ってはめるだけ。
2pq/(p^2+2pq+q^2)=2pq=2×0.6×0.4=0.48。
答え
0.48
手元の問題集の問題に取り組んでみよう
ということで、一番スタンダードなタイプは解けそうな気がしてきましたでしょうか。
大事なのは、
整理すること
文字で式を思い起こすこと
文章で式の意味を指し示すこと
これです。あとは遺伝子頻度のとき、「1個体がもつ遺伝子の数は2個」であることを忘れないことかな。
とはいえ、こういう問題ばっかり解いてると、今度は
「ハーディ・ワインベルグっぽいやつは全部遺伝子頻度p~とかやればいいんでしょ?」
「どうせ遺伝子頻度全部いっしょでしょ?」
「aaの頻度はq^2なんでしょ?」
とかいう偏った思い込みと雑な処理が始まって、大体崩れていくですよね。だめだよ。毎回ちゃんと確認して、確信の上で式を進めようね。
次回は上のようなダメな思い込みを形成し始めた人が太刀打ちできなくなる、ちょっと捻った問題をやっていきたいと思います。
更新までちょっと時間がかかるかもしれませんが、いつか出す……。