あいまいまいんの生物学

あいまいまいんの生物学

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今日は人生で一番つらい授業を経験しただろう

…と昨日記事を書きたかったのだけれど疲れすぎて書けなかったので今日書きます。

 

昨日から分散登校が始まりました。

簡単に言うと本来の授業の半分の人数に対して授業をする感じになります。

半分の人数に対して授業をするということは、1クラスにつき半分+半分の2回の授業を同じ内容について行わなければならないスタイルです。

ただ、そうは言っても対策は怠ってはならんということで、生徒も教員もマスク必須で授業を行ったり、生徒については休憩中の私語をなるべく抑えたりするなどの対処がとられています。

 

これだけ長い休校期間の後に授業を行うのは、人生でも初めての経験です。

教員人生が長い人にとっても初めてのことではないでしょうか。

しかも様々な対処をとることを様式として決められており、かつクラスの生徒達は新学期にシャッフルされたばかりで生徒同士が「ほぼ初対面」の状態です。

そんな状態のクラスにこれだけの休校期間後、このような体制で行った初めての授業を体験して、私は「これはきっと人生で一番つらい授業だったな…」と感じたわけです。

きっと今後一生こんなことは体験しないと思う(ちがう。「と願っている」のが正解)ので、今日の授業がどうして辛かったかを個人的に振り返ってみました。

で、以下のようになりました。


①ずっと授業がなかったせいで活性化エネルギーがでかい

休校長すぎたんですよね。

正直夏休み明けも割と活性化エネルギー高くてちょっと授業やるのに躊躇いがあったりするんですけど、今回はすんごかったです。

休校だけじゃなく、部活動もなく、在宅勤務まで後半ちょっとだけ体験しちゃったしね。片道1時間半かけて職場に通う私には、在宅勤務は捗って仕方ありませんでした。めっちゃ教材作りの仕事とかできるもん。

だから授業に臨む心構えもどうしても後ろ向き気味に。

教員ならこうね、「久々に授業を対面でできる!生徒にも会えるんだ!うれしい!待ちに待った授業!頑張るに決まってる!!」みたいになって欲しいかもしれません。ごめんなさいこんな姿で…でも人間だもの…。

いやでも最後はちゃんと、「よし頑張るしかないぞ…!」と気合い入れましたよ。そこでこれです。


②頑張るぞと意気込んで教室行くも、教室内は新クラスのせいでよそよそしい空気&間隔空けて座ってるせいでとても微妙な空気。私のアウェー感もすごい

入って教室めっちゃ静か。もうすっごい静かで、試験中より静かなくらい。

皆が新クラスで初対面ぽいの、すっかり忘れてました。だから「なにこの空気…」ってなっちゃった。すんごい空気だった。

自分からしたら皆知ってる子のクラスだから、私は割と「おひさ!」みたいなノリで教室入っちゃったんですよね。大失敗だわ。本当に自分が馬鹿。

もうこの時点でだいぶダメージ喰らいました。


③皆マスクで表情見えない

授業が始まります。頑張って喋るじゃないですか。

今回たまたま運悪く、トーク力が試されるような(?)内容だったんですよね。

テンション高く喋るじゃないですか。

…マスクで一切反応がわからん。

もしかしてだだ滑り?この話全然面白くない?不安になっちゃいます。

教育ですから、別に真面目な顔でちゃんと内容が受け止めてもらってればそれでいいんですけど。だとしても受け止められてんのかどうかもマスクだとわからん。わからんぞ…


④なんなら皆だるそうに見える

そんな心理状況だとどんどん授業中に不安になってきちゃうんですよね。

結果見え方も歪んでくるんですよ。いや真実かもしれないけれど…

マスクつけてて唯一見えてる目が、虚ろに見えてくるんですよね。

あれ?これ皆だるい?もしかして私の授業だるい??ってなってきた。泣きそう。

そもそも生徒たち、「授業受けるの本当たりぃー!めんどー!」と私の存在や再開された学校を疎んでいるのではないか?という疑惑もうっすら心にあって、余計にこの想像が捗っちゃう。自分で自分の首を絞めてるぜ!

 

⑤久々で全然声出ない

一生懸命授業するのに、神は試練しか与えません。

久々の発声すぎて、声が出ないんですよ。

というかマスクだから余計に声張らなきゃいけないのに声出ないんです。

声届けられてるのこれー…と気持ちは焦るばかり。反応ないしな。


⑥マスクで息できなくなって呼吸が辛くなる

マスク本当に辛いです。私を守ってくれて同時に生徒も守ってくれてて偉い。本当に偉いけど、マスクつけて授業は普通に地獄です。

息が吸えないんですよ…

声出すから余計吸わなきゃいけないのに、吸うたびに吸えなくて呼吸困難になりそう。空気が吸いたい。新鮮な空気を肺にたっぷり吸い込みたいよぉ…


⑦マスクでこもった熱でとても暑い

マスク内、こんなに熱こもるんだ!?ってくらい授業の後半はヒートアップ。

喋れば喋るほど、焦れば焦るほど熱がこもる。あつい。つらい。でも喋らなければならない!!

自分の極限に挑戦する企画か何かか?


⑧生徒同士の議論がさせられないので考えるお題の時は無言の時間になり謎の空気が流れる

普段自分の授業が生徒との対話や生徒同士の議論で進めていくスタイルで組んでいるのがいけないんですけど(あと授業までに方向転換できなかったのが余計いけないんだけど)、本来議論する時間になったとき感染症対策で議論させられないんですよね。

どうしよっかなと思って、安直に「自分で考える時間をとる」ことを選択したんですが、これがまたね、やってみたら謎の時間になってしまったわ…

静まり返る教室内。何を考えているのか分からない生徒たち。考えてるの?思いついてるの?分からないけど待つ。じっと待つ。アウェーの空気。耐えられんぞ…

自分で魔の時間を錬成してしまいました。大反省だね。

 

⑨授業終わった時も皆休憩時間中会話基本ナシなので余計に授業に対する反応が分からない

こんな感じで頑張って授業やりきるじゃないですか。もう私のライフはゼロですよ。

そこで更に追い打ちね。授業後の休憩時間、皆自由にしゃべれないし初対面もいるからまた静かなんだよな…

普段だと、授業後に生徒たちが「あれ面白かったよね」とか「だるかった」とか色々生徒同士ですぐ喋り始めるので、それで今日はどうだったかを感じるのが結構あるんです。

でも今回は無だからね…無だともう自分の妄想が正解になっちゃう。

綺麗に息絶えた感じでした。コンナハズデハ・・・

 

⑩久々の授業で立ちっぱなしのせいで足が痛い

授業終わって気づいたら足がめっちゃ痛いのね。もうぷるっぷるよ!

自分の体力?筋肉?いかに弱体化していたか気付きました。

立つのって大変なんだぁ…

帰ってからめっちゃマッサージしたけどまだ今日も痛い。


⑪同じ内容を×クラス×2繰り返さなければならないと思うと気が重くなる

こんな授業を経験したのに、同じ内容をまた何度も何度も、普段の2倍繰り返さなければならないと思うともうどんよりです。

仕方ないのは分かってる!分かってるけどどうしても感じる。

周囲のある先生もおっしゃっていたんですが、「オンライン講義なら一回で済む」のを、クラス数分、更にその2倍分やらなければならないの、なんかちょっと構造的に変なんじゃないかと思う面もあって。

クラスでしかできないこと、対面でしかできないこと、そのメンバーでしかできないこと…こういうのを授業でやるならまだしも、普通の授業って何度もやる意味あるのかな、とちょっと考えさせられています。

勉強って、極論自分ひとりで教科書と参考書とにらめっこしてれば(ついでにインターネットもあれば)できちゃうじゃないですか。そこで敢えて重たい荷物持って学校に通って、決まった時間に自分でも勉強できる内容を授業受けて、ってやる意味ってなんだろう。

私としては、授業の意味の一つは書かれた言語より音声言語の方がすんなり頭に入るから音声化すること、理解の助けになるイラストや動画の視覚刺激を提供すること、一人で勉強してると中々届きにくい知識そのものやそこへの手がかりを提供すること、人と対話することで自分の考えや理解を確認する機会を作ること、何かをアウトプットする行為によって学習内容を定着させるだけでなく「使う」機会も与えること などなど…色々ありますが、真面目にそういうことを考えた上で授業を練っていかなきゃいけないよなと改めて思わされました。

 

 

ということで、最後なんか真面目っぽいことを言ってますが、結論めっちゃめちゃつらかったです。

昔教育実習である人に、「授業は自分との戦いだから…」みたいなことを遠い目をしながら言われたことを、走馬灯みたいに思い出しました。先生、自分との戦いですね…。

 

とはいえこういうのって大抵初めてのときが一番きっついので、初日を乗り越えたここからは頑張れる気がします!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!謎の元気を奮い起こしてがんばります!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

あと、Twitterで弱音吐いたら何人かの生徒が授業の感想とか送ってくれて胸いっぱいになりました。人格優れすぎじゃない?泣いていいかな??この場を借りてその生徒たちに御礼を申し上げます。ありがとう。

 

あ、いいこともあったよ!やっぱ少人数は全員の顔が見れていいね!!(言い忘れてた)

 

 

さて、こんな話だけで終わるのもなんですからちょっとした最近思った話をついでにしておこうかと思います。

先日Researchatのep57を聴いていて、生物に関し「教科書一行ごとにリファレンスがある」「その主張に至るまでの実験背景を意識して学んだ方がいい」という話が出ていました。

聴きながらめっちゃ激しく頭振ってしまった。激しく同意でした。

私も一応、生物学の最初の授業では、「生物の教科書は『正しい』ことが書いてあるわけじゃない」という話をします(大抵の人は忘れていると思うが…)。

教科書に載っているのは、多くの人の実験事実から導かれた最もありそうな仮説であると。

恐らく何年か後には完全な誤りになっている記述もあると。

生物の知識は最初からあるわけではないというのも、授業の中の色んな場面で、特にある知識が発見された背景のストーリーを話す時に強調したりします。

昔はなんにも分かっていない時代があったのだ。

生物学の教科書は色んな人の思考と実験の結晶であり、まさに血と汗でまみれたものなのです。

…が、ただの暗記教科に成り下がってしまいがちですね。

私はそういう血と汗を感じるためにも、また、ロジカルな考え方やエレガントな解決法を知って何か将来に活かせるようにするためにも、実験背景はなるべく説明すべきだし、教科書でも重く扱ってほしいと思っています。

しかし国と教科書の方針は真逆で、実験背景の説明は煩瑣で理解しづらい面があるからなのか、どんどんコラムに追いやられるか消えていってる現状があります…

確かに、私達が日本語をしゃべる時には最初日本語の単語やら文法やらの知識を暗記していくように、基礎的な生物学の知見は何も言わずに暗記しろ!というのも一理あるのかもしれません。実際基礎的な知見が頭に入っていないと、生物学の中身は全く理解できませんし、機能的な議論もできませんし。

でもだからといってそっちに全振りしてしまうのもまたおかしいわけで、ある程度勉強したら可能な限り生物学の知識を作り出す背景にある人の営みを感じて貰うのは大事だと思います。それが研究者を志すのにつながる一端にもなるわけで。

そんなことで、「教科書に載っている色んな知識について、実験背景やリファレンス、なんなら研究者の人となりやストーリーまでが分かる」ような何かがあるといいな~と個人的には思うのですが、これが案外難しい。

一つひとつの知識を調べていけば勿論かなりそういう情報にアクセスできる場合が多いのですが、割と大変ですし、何よりまとまった場所にはないのです。

あと最近一番感じているのは、「高校生の段階で自力で情報にアクセスできる力も持つ子が案外少ない」ということ。「ググれ」と言われることが多い世の中ですが、実際ググるのはとてもむずかしいんですね。調べ方が分からない、どういうソースを信用したらいいか分からない…そういうコツがシェアされていないこともまた、上で述べたような情報にアクセスするのを困難にしていると思います。ネット、めっちゃ有意義な情報沢山流れてるんだけどね。

基本はブルーバックス→キャンベル→CELL(tadasuさんの高校ではCELL原著読んでないと軟弱と言われていたらしい)なんかが良い入り口になるんでしょうが、それでもこれらの本にすべて上で述べた情報が載っている訳ではないので、なんかうまいことまとまったサイトとか、調べるための確立した方法なんかないんかな、とぼんやり思っている今日このごろです。自分でまとめたり、方法確立したりすればいいんだろうけど、もう既に誰かがやっているなら是非恩恵にあやかりたい……

時代とともに教育に求められるものも変わっていきますね(ググる方法なんて昔は必要性なかったと思う)。色々手探りでもやっていかないとな。