あいまいまいんの生物学

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まいばいお21 エボラ

びっくりするほど更新しないまま20日近く経っていました。

なんでや…

理由は忙しかったからなんですが、幾ら何でも放置しすぎですね。反省しています。

色々報告したいこともあるけれど取り敢えずまいばいおです。

今回は感染症をテーマにしました。

最近中国で新たなコロナウイルスが怪しい動きを見せていますね。

本当はその情報をまとめたりできればよかったですが、中々まだ信ぴょう性もなく、変に行動してはダメだと思い、

一方で危機感を持たないでぼーっとしている生徒たちを見ると不安にもなってくるので、

エボラをモデルケースとしてちょっと教訓的な紹介をしたいと思いました。

 

 

✿伝染病は突然現れる

1976 年 6 月末、南スーダンにあるヌザラの綿工場。

突如倉庫番の男性が出血熱の症状を示し、続いてほかの部署の男性 2 人も同じ症状で倒れました。

誰も見たことのない病気でした。

更にこの3名の家族、そして彼らがかかった病院に元いた患者そして医療関係者・・・彼らの周囲でどんどん同じ症状を呈す人が現れ、合計284人が発症、151人が死亡しました。

ほとんど時期を同じくして、約1000km離れたコンゴ民主共和国北部のヤンブクでも、唐突に同じ症状の病気が出現しました。そして318例中280名が死亡しました。

 

両国の流行地域の住民がこの未知の病気出現に対しパニックに陥ったことは言うまでもありません。

このようなセンセーショナルな登場をしたのが「エボラ出血熱」でした。

 

エボラ出血熱とは

エボラ出血熱RNAウイルスの一種、エボラウイルスによる病気です。

エボラウイルスはコウモリが元々持っていたウイルスであると考えられています。

エボラウイルスの形は非常に特徴的で、写真のように「糸状」をしています。

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パブリックドメイン

エボラウイルスに感染した際の一般的な症状は、突然の発熱、強い脱力感、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどに始まり、これはインフルエンザの症状に非常に似ていると言われます。

その後、嘔吐、下痢、発疹、肝機能および腎機能が低下し、多臓器不全が主な死因となります。

エボラ出血熱」という名前の所以は勿論、感染すると出血傾向が出現するからです。

エボラ出血熱の死因のもう一つは、出血によるショック症状です。

 

エボラウイルスが出血傾向を引き起こすメカニズムを紹介しましょう。

エボラウイルスは細胞内で増殖し、その細胞を破壊します。

すると、破壊された細胞の断片が刺激となり、全身の血管で血小板の凝集が発生、止血に必要なフィブリノーゲンが凝固します。

つまり局所的なフィブリノーゲンの乱用が発生するのです。

結果として血液中の未使用な血小板やフィブリノーゲン残量が極端に減ってしまい、血液は血ぺい形成能力を失います。ですから血管が塞がらず出血してしまうのです。

肝臓が既に冒されている場合は血液凝固因子を作る能力も落ちているので尚更です。

また、エボラウイルスに感染すると炎症性サイトカインの過剰産生が起こることが知られており、

サイトカインの効果によって血管透過性の亢進が生じることも出血に繋がると考えられています。

 

エボラウイルスが体内に入った後、最初の感染標的となるのがマクロファージや樹状細胞などの免疫細胞です。

これらは体内を広く移動することができるので、エボラウイルスが体内に広がるのに都合がよく、同時に免疫系も弱められるという利点があります。

普通ウイルスは免疫機構によって排除されるものなのですが、エボラウイルスは免疫機能の異常をもたらすことで免疫による排除を巧妙に逃れています。

例えば、エボラウイルスの構造タンパク質であるVP24 やVP35 は、インターフェロンという生体内で免疫機構を促すために必要な物質を抑えることでウイルス排除機構を抑制することが報告されています。

また、エボラウイルス感染に伴ってリンパ球(NK 細胞やキラーT 細胞)のアポトーシス誘導が見られることも免疫弱化の原因であると考えられています。

 

エボラ出血熱の急速な拡大

エボラは元々アフリカ中央部で度々流行る、局地的流行しかしないような病気でした。

しかし2014年、突然西アフリカにおいてエボラは大規模かつ急速に流行が拡大し、更に初めて流行地以外の国にも飛び火しました。なぜこんなことが起こったのでしょうか。

実はそこには「死者を埋葬する宗教儀式」が関わっていました。

西アフリカでは、肉親や友人が死者との別れに当たって、死者の身体を抱擁したり手足をさすったりします。

これが感染拡大の原因でした。

エボラウイルスは血液のみならず汗腺、唾液中にも存在し、身体に触れれば意図せず感染してしまいます。

触れれば感染するということは、エボラ患者を診た医療従事者にも感染するということです。

ここに航空機の発達も合わさって、このような感染拡大が生じてしまいました。

感染拡大を防ぐため、正しい知識を携えて国境なき医師団やWHO等の医療・支援関係者が流行地に入りました。

白い防護服を身につけた彼らに対し、住民は追い返したり、病院から患者を力ずくで奪還したり・・・葬儀方法についても中々改めませんでした。

白い悪魔が病気を広めている」と信じた住民の無知・誤解に基づく行為が、感染を必要以上に拡げました。

 

エボラウイルス自体はそんなに強くないウイルスなので、「触れない」という簡単な対策の徹底的で感染を防げます。

しかし、敵を知らなければ、知識がなければ、私たちは無力なのです。

今の時代、「知ることよりも考えることが大事」とよく言われ、知識は検索すれば得られるものだから頭に入れる必要はない、なんでも既に分かっているから研究する必要もない、という風潮すら少々ありますが、私はそれは違うだろうなと思います。

知識は武器なのです。

知るという行為を疎かにしてはいけませんし、どんな微かな知識でも得るための研究には価値があると思っています。

 

現在中国で新たなウイルスが突然現れていますが、これについても同様です。

知ることを疎かにせず、最新情報を追って自分の身を守って下さい。