2025年度大学入試共通テスト追試 生物 所感
本試はこっち↓
追試問題はここ↓
一応答えはここ↓
追試生物基礎に関する記事はここ↓
本当なら上の記事で生物も一気にやってしまいたかったが、生物基礎を解き終わった時点で言いたいことが溜まりすぎたので今年度は別記事にした。
第1問
リード文はタンパク質の立体構造とシャペロンの話。シャペロンは教科書で扱うんだっけ……?進学校なら必ず触れられる役者だろうが。
問1は(理解を伴う?)知識。
問2はシャペロンについて知っていればまぁ解けるかなという気がするが、シャペロンが何者か全く分からない人にとっては選びにくいのでは??リード文で「高温などにより異常になった立体構造を……」とあるので、高温で異常になるなら一次構造より上かなぁとあたりは一応つけられる気がしないでもないが(というか多分それを狙って出題しているが)。個人的にはこんな風にあまり馴染みがないタンパク質の機能を推定させて絞らせるのはあまり好きではない。タンパク質の可能性は無限なので(?)、むしろ「こういう機能もあるかも」と思える方が好き(??)。
問3はエキソン・イントロンの話も絡めた遺伝子発現に関する計算問題。簡単な部類だとは思うが、mRNAの3'末端と5'末端について開始コドンと終止コドンの存在する位置関係から推定させる(空欄ウ)問題は「へぇ、こんな出し方もあるのか」と思った。個人的にこういう問題は好き。
問4は実験を見て考察&実験デザイン(2択しかないが)。順当かつさっぱりしていてよいのではないか。これ以上の詳しいストーリーは紙面にはないが、想像するに遺伝子Xはヒートショックでエキソンを抜いてタンパク質Xuを作る→シャペロンAを作る→ヒートショックで変性したタンパク質の立体構造を直す 的な流れだろうか。
第1問自体に特に問題はないと思われる。題材としてシャペロンが出るのも、シャペロン周りの温度でスプライシングが変わる遺伝子が出るのも面白い仕組みの紹介でいいなと思う。
第2問
植物の窒素利用と物質生産がリード文にくる。リード文自体は目新しい内容もなく、概論を語っている感じ。
問1は代謝経路の問題。光合成と呼吸の電子伝達系の比較で、ただの知識。
問2は異なる窒素濃度の培地で育てた植物の色んな情報を調べて、その違いの理由を考察するというもの。なのだが、(1)③について「培地中の窒素濃度が高いと葉の光合成速度が大きい理由を選べ」という問題に対し、「窒素同化に伴って産生されるATPとNADPHの量が増加し、光合成の反応を促進した。」が本当に✕でいいのか?と若干気になる。「窒素同化に伴って」というのは恐らくイメージとして窒素同化反応の副産物的にADP+Pi→ATP等の反応が生じ、ATPやNADPHができて……ということを伝えたいのだと思うが(そしてそれなら✕でいいのだろうが)、窒素同化によってATPやADP、NADPHやNADP+の元々の量が増えるという可能性はないのだろうか。ATP(ADP)もNADPH(NADP+)も窒素が含有されていると思うが果たして……と思うなどした。
問3は大量の窒素肥料が生態系に及ぼす影響を選ぶというもの。正直授業内で説明される内容だと思うので、考える必要もあまりなく知識だけで答えられそう。
第2問は以上。かなりあっさりしているなという印象。窒素利用がテーマだったのでちょっと捻った実験等が来るか?と思ったらそんなこともなく、基本は全部知識だった。資料読み取りの能力もほぼ要求されていないし(問2(2)で若干要るか?というくらいだがただの棒グラフ読み取りだしな……)。
第3問
リード文は目の発生について。特に目新しい情報はない。
問1はヒトの視覚に関する適切な記述を選ぶ知識問題。捻りもなくストレートな知識。
問2は水晶体分化について色々な部位を組み合わせて調べる実験。選択肢も比較的単純な上、実験も単純なのでそこまで難しくはないと思うが、どうしてこういう結果になるのだろうと純粋に興味がある。
問3(1)は視交叉の問題。視交叉をちゃんと分かっていればそこまで説明文を読み込まずともあっさり答えられそう。知らないと読んで理解するのに時間がかかりそう。(2)はその視交叉を生み出す仕組みについて考察するものだ。これは「へ~」となりながら解いた。耳腹側の網膜から伸びた軸索に対してのみ反発因子として働くタンパク質を交叉している部位に配置するとは、賢い仕組みだなぁ。
第3問はこれで終わり。ほぼ知識と単純な思考なのだが、個人的には問3(2)はシンプルながら面白いなと思った。こういう「教科書で説明されている事象がどのように成立しているか」を解き明かす感じの問題は好き。いいと思う。
第4問
Aのリード文はナメクジの感覚受容。触角の先端に嗅上皮があるらしい。触角で色々感じるということは触角の先に受容体やら何やらがあるのだろうとは思っていたが、嗅上皮があるのか……。
問1は神経と効果器の知識問題。かなりストレート。
問2はナメクジの触角に関する実験デザイン問題……で、一見面白そうだなと思うのだが、誤答があまりにも誤答なのでなんだか拍子抜け感がある。
問3はナメクジの味覚も絡んだ学習に関する実験を読み考察するもの。実験は面白いと思う。回答はそこまで難しくなさそう。
Bは打って変わって群れの一般論。
問4は群れの挙動について予測する問題。なのだが、b「メダカの群れの近くに天敵を置いたとき、その天敵を避ける個体の割合」が増えるか減るかはなんだかちょっと判断しにくい気がする。ちなみに答えは「増える」なのだが、これは恐らく「群れの形成は、~捕食される危険を的確に回避することに役立つ」というリード文の文章を参考に、群れが大きいほど天敵に気づけて、群れの中で情報が伝播し、回避個体の割合が増える……というのをイメージしているのだろうと思う。が、群れが十分に大きかった場合に、天敵が近くにいたとしてもその天敵付近にいる個体が食べられる危険にあるだけで、天敵から少し離れた群れの構成員たちは回避する必要がない、むしろ「天敵は近くの個体だけ食べて満足して去っていくだろう」という考えの元に回避しない可能性もあるのではないだろうか……?むしろ群れが小さい時の方が全個体が回避するような動きになり(回避個体の割合が高い)、群れが大きい時の方が一部個体のみ回避するような動きになるのではないか(回避個体の割合が低い)?と思ったのだが実際のところはどうなのだろうか。
問5は群れのサイズ等の思考問題。文章に乗っかって考えて選んでいけばいいだけなので難しくはなさそう。
ということで第4問はナメクジの話は面白いと思ったが、Bの問4に疑問が残った。
第5問
リード文は進化について。鯨偶蹄目には頭部に角をもつもの、もたないものの両方があるという話が述べられ、角の進化について注目する流れになっている。
問1はDNAの塩基配列と進化についての知識問題。かなりストレート。
問3は角の進化が系統樹のどの段階で生じたか考える問題。簡単。
問4はアカシカの子を作る数と生存曲線とを見て考察するというもの。生存曲線をちゃんと理解していれば特に問題はなく答えられそう。
リード文の段階で角の進化について……とあったので壮大な話になるのかなと少し期待したのだが、結果的にはかなりこじんまりした問題だった。そこまで発展性もない。最後の問題の表はアカシカの生態として少し面白いなとは思ったが、問題自体はどれも難しくなく結構単純だなという印象。
完走の感想
まずストレートに、生物基礎も生物も本試の方が面白かったなと思った。題材が。面白い新規題材をちゃんと持ってきていて、ワクワクしながら終始解けるような構成になっていたように感じる。対して追試はあまりそういうワクワクを感じられず、一部の問題でときめいた程度で終わってしまった。共通テストらしさが薄いというか、堅いというか……もっと楽しめる問題を期待したい。あと妙に追試はリード文が簡潔で、一般論が多い気がする。その方が話題を広げられるというのもあるのかもしれないが、具体的な事象に突っ込んだ記述が少なめではないか?読むのに苦労する、設定を理解するのに読解力がいる、資料を読み取り関連づける力が要求される……みたいな本来あるべき障壁があまり感じられない。それはリード文だけでなく問題それぞれの中身でもそうだが。なんだか妙に知識も思考もストレートで少しの捻りもない感じ。本試より簡単なんじゃないか。あと知識に内容が偏り気味かなとも若干思った。
そして今年度の本試験はそこまで違和感を感じる問題はなかったはずだが、追試は引っかかりを感じる問題があった(具体的には生物の場合第2問の問2、第4問の問4)。自分の不勉強故だとは思うが、誤答は誤答とちゃんと判断できるようになっていなければならない気がする。教科書で学んだことを地盤にしてもいいし、問題文中の設定でもいいのだが、それらを動員しても違和感が残るものは誤答ではなくグレーだと思っている。そういうものを選択肢に入れ込むべきではないと私は思う。ただし何度も繰り返すが今回の違和感は私の不勉強故の可能性もあり、なんならその可能性が高いので、勉強しなきゃなとも思う。勉強した上でちゃんと吟味したいところ。
ということで、あくまで個人的な意見と感想を書き連ねた。違うことを思っていただいても全然構わない。「私はこう感じた」というだけなので、そこはご理解頂きたい。
さて、次のときめきがあるとしたら二次試験の問題だ。東京大学の問題が早く見たくてしょうがない。面白い題材を必ず出してくれると期待しているので……待ち遠しいな。