この世には、「全国大学入試問題正解」なる素晴らしい書籍が存在します。
これはどんな本かというと、名前通り全国の大学の入試問題とその正解、あと軽い解説がぎゅっと濃縮されて掲載されているという本です。
これを使えば現地に行かずとも、また受験料を払わずとも、全国各地の入試問題を解くことができてしまいます!すばらしい!!!
私は毎年この全国大学入試問題正解を使って、夏休みのまとまった時間を使い、北から南まで大学入試版日本縦断旅行を満喫しています。
本来の目的は勿論受験生指導に向けた教材研究だとか自己研鑽だとかであるべきだと思うんですけど、個人的には単純に楽しいのでやっている節があります。ある意味趣味ですね…
というのは、
- 大学入試問題から各大学の雰囲気や傾向が滲み出るのが面白い!
- 生物学のどこまでの新知識・新技術が入試問題として採用されたか、またはどういう知識は消え去っていきつつあるか時代の変遷を反映していて面白い
- 自分が知らなかったような知識や実験題材があったりして、勉強になる
そして何より
- 美しい問題を解くと心が豊かになる
からです!!!!!!これが一番大事。
美しい問題は、まるで芸術作品のように、見ると心が昂り、浄化され、「学問って楽しい!!」という気持ちを湧き上がらさせてくれます。わぁー!!!って気持ちになります。私だけかもしれませんが…
問題を作るのって実はとても大変で、良い問題を作問するには
- 無数の論文や知見、身の回りの事例から良い題材を選ぶ
- 知識を単に問うのではなく「真の理解」があって初めて解答できる設問を作成する(問い方も、選択式か、穴埋めか、論述か考えて、一番効果的で受験者の理解度を引き出せるものにする)
- 問題を解くことで「学び」や「気づき」があるものにする、そのためにストーリーや流れを組みながら相応しい設問を立てる
- 受験生に与える条件は「最低限」であり、それは「判断に必要な条件は全て必ず提示する」とともに「情報過多となって無駄があるものではいけない」ということである
- 高校生物の知識で必ず「解ける」問題でなければならない
…とまぁ、大体これくらいのことは必ず考えます。
勿論こちらが誤った知識を持っていては絶対いけません。その場合作問できませんし、受験生も正解を選べない問題になる可能性があります。
同時に不確定要素も出してはいけません。「今の生物学でわからない」所については答えを求められません。研究されていないものについては尚更です。(最近は仮説を立てるという問い方で時々出されていますが…)
そういうわけで、入試問題などは何度も何度も、何人もの人の目に晒され審議されながら練り上げられてくるものなのですが、その労力や知力がぐぐっと凝縮された「良い問題」を見ると感動するのはもう当然と言っても過言ではないわけです。わかりますか?
しかもトップレベルの頭脳たちが己の知の結晶を注ぎ込んで血を滾らせながら議論して煮詰めてるんですよ?これはもう昇天レベルですよね?わかりますか???
前置きが長くなりましたが、そんなわけで私は今年も大学入試全国行脚を行いました!
まずは各旧帝大から紹介し、その後良いなと思った部分があった問題についてちょこっと紹介したいと思います。
旧帝大概観
【北大前期】
大問1は木原均先生推し、コムギゲノムの話から3倍体、5倍体作出まで繋げていく感じが味わい深い。
探究心も刺激され、難易度も程よく良問。
大問2以降は基本平易な問題で、奇をてらわず優しく問いかけてくる北大のイメージが保たれている。時々本質を突いて理解を問う姿勢も◎!好き。
個人的には大問4でeyeless遺伝子とPax6遺伝子の話と、ミクロネシア島のボトルネック現象(大型台風後1色覚人口が増加した)の話を取り上げているのも胸アツ。センスがいいよね。
【東北前期】
東北は絶妙に細かく、嫌らしく、サラッと解けない練られた問題or面倒な問題が多い。
化学式とかも聞いてくるので地力を着けるのには便利。
目新しいものは特にないが、大問3でカエル卵に紫外線照射→ディジェベルド移動阻害したとき、人力で卵を傾けても表層回転を再現できるのは驚いた。そんな力技でいけるのね?
【東北後期】
前期とは雲泥の差で簡単。知識問題がかなり多くて考える問題はそこそこになり楽…
…かと思いきや最後ハーディ・ワインベルグの捻った計算をさせている辺りに性格の悪さを感じる(ちゃんと価値はある)。
苦手な人にとっては大問1の電気生理学でよく出るチャネル関係の電圧-電流関係のグラフも嫌かもしれない(私は割と好き)。
大問2の系統樹はヒトが一番偉いみたいになっていてちょっといただけないけれど仕方ないかなという気持ちもある。歯の形成過程が誘導によって生じるのを紹介しているのは面白い。
【東京大学】
東京大学の生物学入試問題は芸術作品なので味わいしかない。凄い作問力だなと思う。真似できない。今年もとても良い味わいであった。
題材の選び方、その発展のさせ方も素晴らしく、何よりちゃんと理解が深まっている高校生ならば「解ける」というのがまた素晴らしい。これは巧妙な設計がないと達成し得ないものである。
学びあり、感動ありの作品なので是非全国受験生に解いてほしい。
今年度は大問1が「がんの成因(染色体相互転座)と分子標的薬(TKI)」、大問2が「ストライガの寄生及び植物の生存戦略」、大問3が「混沌としている分類体系(珍渦虫を中心に)」という構成だった。どれも最高に素晴らしい題材ではないか?そして全てがストーリー仕立てである。知識を答えたり問題を解いたりしている「だけ」のはずが、知らないうちに物語に投げ込まれ、解き終わる頃には新たな視点を得られるようになっている。これが凄い…
【名古屋大学】
適度に知識を問い、適度に実験やデータ処理・理解・考察力を問う感じの可もなく不可もない…というのがいつもの名大の問題である。
題材はどこかで見たことあるやつをすこし捻ってる。多分10度くらい捻ってる。
問題運びはあまり上手ではないのでプロのシェフの味を期待してはならない。
真面目にコツコツやってきた子を助けてあげようという姿勢が見える。ちょっと不器用でも真面目に頑張れば大丈夫だ!
【京都大学】
京都大学は毎回謎の教師力を試される面があり、「これ教科書外知識だけど授業でちゃんと扱ったよな…?」と不安になる設問が幾つかある。
深い授業をしていれば扱う言葉や題材だな、というものを何故か出してくるのだ。
まぁ京大受ける人なら勝手に受験者が勉強するでしょう感もあるが…。
問題は往々にして斜め上からくる感じ。めちゃ難とかではないのだが…うん、斜め上からだ。毎年感じる謎の感覚。嫌いじゃないけど。
問題運びは悪くなく、小綺麗でスムーズに解き進められる(勿論理解できていれば、の話)。その点で他大学よりもやはり秀でている所を感じる。
目新しさはあまり無いのだけれどどこかで見た問題がかなり深まっている、熟成された問題感が漂う。正しい理解がないと進められない…。
【大阪大学】
ちょっと東北大学寄りのちみちみさを感じるが、こちらのほうがさっぱりしていて後味が良い。
しかし問題文では「説明した割に使わない…」という無駄がそこそこある。
こういう無駄は大概、先に沢山設問を作っておいて後で問題を削っていく時に削り残しとして発生する。飛び抜けて優れた大学は削り残しがそうそうないが、大阪大学は割とそのまま放り投げてくる。問題作るの大変だったんだろうなとか、こういう問題を出したかったんじゃないだろうかとか、ちょっとした背景に思いを馳せられて面白い。
大問3のノックアウトマウスと見せかけてごりごりの遺伝学は堪らない。よい。脳でGFP出るやつかわいそうだけど。
上の問題でも見られるが、基本トランスジェニックマウスを作る時にDNA断片がどこに入るかわからない体なのはかなり当たり前化しつつあり、大学入試でもそこを簡易化してあげる優しさはなくなりつつある(他大学でも共通の傾向が見られる)。
大問4は腎臓におけるリン酸の再吸収制御についてで、これは授業であまり触れられない所なので面白いのではないだろうか。他大学でも最近リン酸に着目した問題が増えつつある(植物の収支しかり、動物の収支しかり)が、なぜかリン酸は高校生物の授業内では存在が薄く、あまり教えてもらえない。大事な要素なのに…リン酸が不足したらATP作れないし、膜も作れないんですよ?でも扱われない。これはなんでなんだろう?
【九州大学】
大問一つ一つがコンパクトなのが好感度高い。楽。解きやすく、難しくない。ちゃんと演習してれば全部解ける良い難易度の問題構成。サクサクっとつまめるスナック菓子のようにすら感じる。個人的には大問3の血友病家系図の問題はちょっと違和感があるが…。
大問5の最後のヤマトシロアリの血縁度に関する設問は良い。よく血縁度の授業の後質問を受ける、「女王と女王の子供の雄が交尾したら血縁度はどうなるのか」や「交尾相手の雄はどのように選ばれるのか」問題に踏み込んでいる。
良問・おすすめ問紹介
北海道大学前期大問1
木原ワールドにようこそ問題。コムギの研究に関する軽い研究史に加え、それら研究で得られたどう発展してきたかを追えるストーリー仕立て。
発展先が3倍体問題なのが個人的には良いセンスだと思う。3倍体作出方法について色々提示しながら、「胚乳からのカルス形成」を導かせるのも面白い。
バランスよく、知識を基に思考させていく感じも良い。
同志社大学
大問2
同志社大学は、相変わらず微妙に「そんな単語聞く?」みたいなのを聞いてくる。価値ある単語というより、重箱の隅をつつく単語質問だ。
そういうのは嫌なんだけど、今回の大問2はよかった。TRPV1は最近本当によく題材化するようになってきた。知名度の上昇を感じる。それを発展させて、
- 熱いカレーライスは辛いが冷たいカレーライスは辛くない。なぜ?
- ミラクルフルーツを食べたあとでトムヤンクンを食べるとどうなるか?
という日常の疑問を解決していくスタイルが良い。
大問3
大問3は低酸素応答を題材とし、ノーベル賞を確実に反映した内容になっている。こういうのは良いね。どれだけ普段サイエンスに意識があるかは大事。設問難易度も程よい。
福島大学大問1
大問1それ自体は全く奇をてらっていない普通のホルモンと恒常性の話なのだが、問4の題材が良いなと思った。
問4では、心臓移植を受けた人の心臓(自律神経が接続されていない)をテーマにとって、運動を行った時の心拍数の変化について考えさせる。健常者と心臓移植を受けた人では心拍数変化が違うのだ。
言われてみればそうだなぁと思うけれど、普段こういうことまで頭が巡らないので、問題として出されて初めて気づいた。
群馬大学
大問2
これは良問とかじゃなく「ん?」と思った問題なのだが、「過敏感反応」は回答させていいものなのか…?
大問4
ミカヅキモの接合子形成の問題。案外たのしい。無性生殖型生物が環境危機になったとき、有性生殖型に切り替えるのはやはり接合子や種子・卵といった状態が環境変動に対して強いとか、休眠能力があるからなんだろうか?
この問題では派生して葉緑体二次共生と膜の数についても問われた。最近この手の問題が増えたが、教科書でしっかり扱っているわけじゃないのになぁ…という気持ちが少しある。
東京大学
全部面白いから全部解いてくれ。
お茶の水大学
お茶の水大学は毎年全て面白いというか、題材が目新しくて凄いなぁと感心する。
今年度も良い題材だった。
A大問1
液胞内に見られる謎の構造物についての問い。
最初何を問われているのか全然わからないのだけれど、解き進めていくと「なるほどなぁ…」という所に落ち着く。液胞って面白いね。液胞がもにょもにょ動く様子を想像できて面白い。
A大問2
集団の蛾の雌雄比が妙におかしいという所から始まる。なぜか雌ばっかりだと。
これは自分の採集方法が悪いのか?それとも現実を反映しているのか?という葛藤の末、
このおかしい性比が「あり得る」という所に繋がってくる。
ある種の原核生物が雌の蛾に寄生すると、蛾の子供が全て雌になるというのだ。
なんでそんなことをするんだろう?…と話が進んでいくわけだが、このオチがまた大変興味深い。
ここで言っちゃいたいけど…興味がある人は「ボルバキア」で検索をどうぞ。または解きましょう。
B大問1
ヒカリメダカは肛門より後部において背側構造が腹側構造に置き換わってしまっている。
これを分子生物学的に解明しましょうというストーリー。とても興味深い。
B大問2
assisted migration/evolutionを題材にとった問題。生態学の新素材を作れるの尊敬するなぁ…
これが保全生態学の新ツールとして期待されているのに、一方で危険性もあるとされていて、どういうことが起こりうるか考えようという方針になっている。
全てのネタについてオチがちゃんとついているのでお茶の水大学はえらい。
東京医科歯科大学大問3
いきなり「失われた地平線」という小説の話から始まりなんじゃこれはと思ったら、中身は老化現象とサーチュイン遺伝子のお話だった。
そこまで突っ込んだ問題にはなっていないんだけど、リード文が読み物として楽しいな?
岐阜大学
大問1
呼吸の問題ね~と解いていたら、いきなり「ブタカイチュウ」の話が出てきてびっくりした。
ブタカイチュウはフマル酸呼吸というのを成体時にしていて、その場合酸素分子を使わずフマル酸を使用、水を出すのではなくコハク酸を出す。成体は消化管内にいて、酸素をうまく使えないからこれは都合がよい。
卵殻中で成長する幼体は空気を使えるので、普通の酸素使用型呼吸をする。中々巧妙だなぁと感じた。
大問4
サクラマスのフェロモンの問題。もしかしたら割とあるやつなのかもしれないけれど、実験系が面白い(分子ばっかりやっていた人間からするとでかい系はなんでも面白い…)
浜松医大
大問1
腎臓の問題なのだが、「腎動脈からブロモフェノールブルーと墨汁を注入して顕微鏡観察すると、ブロモフェノールブルーは試料全体に広がっているが墨汁の黒い粒子の分布は特徴的なパターンを示す」とあり、この実験は面白いな?と思った。普段の授業でも使えそうだし、考察もさせられる。良いネタを貰った。
どうでもいいけれど大問4の最後の最後で「カルタヘナ法の目的を答えよ」とあって、カルタヘナ法の目的!?ってちょっと動揺した。高校生に聞くには規模がでかすぎなのではないか。いや答えられるだろうけど。
滋賀医大大問4
この問題を見た時一瞬目を疑った、というのは、自分が過去に作問した問題そっくりそのままだったので…同じ論文から作ったんだろうな…(自分のやつは難解すぎてボツになった記憶がある)
マウスMHCと免疫系による小分子認識の問題。良い頭の体操になるぞ。
岡山大学
大問3
線虫の塩化ナトリウムに対する化学走性の問題だったので、ちょっと感傷にふけってしまった。なつかしさ…
線虫が化学走性行動を示すときのニューロンの活動を記録して、ある条件での行動を予測させたり、青色光で反応するロドプシンをニューロンに埋め込んで実験したりするやつだ。
…どうでもいいけど今回全部の問題解く中で線虫扱ってたのは2,3個しかなく、そのうち1個はC.elegansじゃなくて肉食の線虫だった。悲しい。もっと線虫出そうよ。
大問4
問題文読んでてなんか既視感あるな~と思ったら2019年代に出てるNature論文から引っ張った題材っぽい。
生態系におけどトカゲの移入実験で、ブラウンアノールがもともといたところにキタゼンマイトカゲとグリーンアノールを入れるやつ。流行に敏感だね!素晴らしい。
慶應義塾大学
慶應義塾大学、毎年良問を作ってくれるので割と重宝している。絶妙に気持ち悪い問題が多いけど…
医学部大問2
ボネリムシの性決定から始まりフトヒゲアゴトカゲの性決定で終わる。なんでそんなことになるんだ。どういう発想があるとボネリムシとフトヒゲアゴトカゲが繋がるんだろう?
中身は至って良問。特にフトヒゲアゴトカゲが、性染色体による性決定と孵化温度による性決定の兼ね合いで、ZZメスが出てきているよという話になっている。このまま地球温暖化が続けば、ZZメスが更に出、ZZメスとZZオスの交尾になれば、W染色体は淘汰されていくだろう。W染色体がなくなれば勿論性決定は温度一択になるわけだが、地球温暖化の世界でそれが成立するのかというと………
良問だなぁ。
医学部大問3
タンパク質のフォールディング解明の歴史が振り返られる良い題材。どうやって「タンパク質の立体構造はアミノ酸配列によって決まる」ことが解明されたか(Anfinsenら)、フォールディングがなぜ瞬速で終わるのだろうか(Horwichら)をテーマにとって考察させている。
古典的な実験を題材にとるやつ、かなり好きなので、慶應はそういう所ちゃんとしてていいなって思う。よきよき。
早稲田大学大問2
若返りとパラビオーシスと衛星細胞の話。
パラビオーシスのマウスの絵に哀愁漂う感じがあり、すき。
若い血を…からだに入れると…若返るのじゃ…へっへっへ……
他にも良問は沢山あると思うのだが、個人的な判別基準でこれらだけを挙げておく。
どれも難しくなく、適度な難易度で、面白いと個人的には思う。
番外編として、以下の2つを難易度的にちょっと…でも良いな…というので挙げておく。
【番外編】北海道大学前期大問3
動物発生(神経管形成)をメインに据えた問題。
前半は普通の問題だが、後半の実験に関する処理問題が少し煩瑣(特に問6)。
実験設定としては、
- 遺伝子Pの変異型ホモ接合体が神経管閉鎖不全を示すため、遺伝子Pの役割を調べたい
- 野生型雄マウスゲノムに遺伝子PとGFP遺伝子を接続したDNAを組み込ませ、遺伝子Pのある常染色体と異なる常染色体に組み込まれた系(系統1)、遺伝子Pのある常染色体と同じ常染色体に組み込まれた系(系統2)、X染色体に組み込まれた系(系統3)の3種トランスジェニックマウスを作出
というもの。3種トランスジェニックマウスができる時点で嫌な予感しかしない。本物の実験をしているようで鬱になりそうだ…
で、これら3系統を遺伝子型Ppの雌と交配し、それぞれのF1同士をかけ合わせてF2マウス胚を得る。遺伝子型ppかつGFP発現が生じるマウスを選り抜き、神経管発生を観察する…という流れで計算をさせる。中々鬼畜な流れだと個人的には思う。
【番外編】東北大学後期大問3
自家受精と自由交配とハーディ・ワインベルグについての問題。
ハーディ・ワインベルグの法則では自由交配を前提として遺伝子頻度を見ているが、これが自家受精になったらどうなるか?という比較をさせる。どれくらい遺伝子が残りやすいか等…
大変有意義で学びのある問題なのだが、計算が慣れてない人には苦痛だろう。
全てを振り返って
例年の傾向をちゃんと覚えている訳ではないので、あんまりはっきりした比較はできないが、今年の問題を解いていて思ったことを少しだけ挙げておく。
- 皆カドヘリン好きねぇ…(これは割と相変わらず
- ポリAテールは知らないともう駄目な問題ばっかになってきた。逆転写酵素からのcDNA作成、プライマーはTTTTTTT、これ普通ですよ!
- 遺伝の問題は普通に出る。なんなら致死遺伝とか出るし母性遺伝も出るし。連鎖・独立は最低限、遺伝の演習はしておいた方がいいぞ。素直に出ないぞ。
- 遺伝子重複が進化にどう効くかを知ってて当然の問われ方をするようになってきた。
- 典型問題・典型実験を知ってるの大事。特に「発生」と「植物の反応と行動」は本当に典型が多い。「系統と分類」は知識がっつり聞かれるので細かい知識が絶対必要。
- テクニカルな障壁…悩まされる事例を逆手にとって問題に出すものが多くなってきた。上でも挙げたがノックアウトマウス作成あるあるや、PCRかからないぞとか本来視えないバンド出るぞとかプラスミド変なのできるぞとかタンパク指示通り出ないぞとか。優しくない世界だ…。それだけ即応力が求められているというか、実際の実験ができる力が求められている気がする。
- DNAマイクロアレイも3大学くらいで前面に取り上げられていた。一大学では「説明しろ」と出た。中々ですね…もう当たり前の技術なんですね。
- 生態系は最近絶滅の渦の理解がかなり問われている気がしている。
- 神経の問題、活動電位の重ね合わせやきもい接続問題(EPSPとIPSPを混ぜてあるニューロンでの波形を想像するやつ)が多い気がする。Nernstの式も出てた。Nernstの式はなんだか根強い人気で最近毎年どこかで見かける気がする。物理系苦手な人には厳しいだろうな…
- 計算問題のひねりが今年少し激しめの所が多かった。どんな問題でも対応できるようにならないとね
- PCR、電気泳動、制限酵素処理は当然。というかもはやテクニックなのでそれを問題として問うて貰えない所も多し(バンドパターン見て理解できないと解けない、とか…)。
- なんやかんや言うけど結局ちょっと前にも言ったように「典型問題・典型実験を知っている」のが一番強い。80%以上の問題に見覚えがあるんだから間違いない。どこかで出た問題がほぼ同じ形で出、どこかで見た実験が同じ形で使われる。論述の聞かれ方やポイントも大体被っている。何も怯むことはないな。
- 教科書に書いてある知識に対し、ただ単語を覚えるだけじゃ本当にだめだ。「理解」がないといけない。どうしてそうなるの?どうしてこうなったの?何が嬉しいの?…これが沢山論述で聞かれている。授業では気をつけて伝えてるつもりだが、生徒にどれくらい伝わってるんだろうと思いながら解いていた。生徒諸君、大事なのは「ロジック」だよ。単語も大事だけど、ロジックも大事にね。