あいまいまいんの生物学

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まいばいお25 寄生関係雑まとめ

先日授業で「個体群間の相互作用」の学習をしました。

そこで寄生について扱ったのですが、生徒にとっては寄生関係ってあまり知らないものが多くて衝撃的なようですね。

名前は知ってても詳しい実態は知らない…なんていう人も多いみたいです。

ありがたいことに生徒から非常に興味を持ってもらえ、ある生徒は自分で調べようとしてくれたみたいです。非常に意欲的で嬉しいです。

しかし中々調べるのが難しいらしく、実際自分も軽くネットで調べてみましたがまとまっているようなサイトって案外ないんだなという印象でした。

そこで、自分が知っているものだけでもちょっと紹介しようかなと…もちろん授業では扱いきれないので、いつもネタの持ち腐れみたいになっているし、少しぐらい出してみようかなというのが今回の記事のモチベです。

簡単に寄生関係にある生物名(または寄生する生物として有名な生物名)と、ざっくりした紹介を羅列していこうと思います。興味あれば是非調べてみてください!最近は素晴らしい動画や画像も沢山ありますし、きっと楽しめるはず…笑

 

 

ロイコクロリディウムとモノアラガイ

ロイコはもう動画を見てくれという感じですね。

こういうのはナショジオがつよい。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150219/436285/

ロイコのうにょうにょ動いているものは、実は幼虫そのものではなく幼虫が入った袋…筋肉でできた袋です。幼虫自体は米粒みたいなやつで、動いていません。

https://twitter.com/parasitology_as/status/1153965069782282240

どうやって動いているんだろうという疑問が凄い…。

 

サナダムシ

皆一度は聞いたことがある寄生生物ですよね。ヒトに寄生するヒモみたいなやつをこう呼びます。

寄生するのにぴったりの形態をしているので、消化管もなく、口もなく、上皮組織もなく…と、完全にお邪魔にならないような超絞りきった設計をしているのが特徴です。

このサナダムシ、最大10m程度にもなるとかで、目黒寄生虫館には本物の標本とその同じ長さのヒモが丁寧に展示してあります。身体に巻き付けて記念写真撮れるのでおすすめ。

で、このサナダムシに寄生されると、ダイエットできるとか、アレルギーがなくなるとか、色んな噂があるわけです。つい最近の研究でダイエットの効果は検証され、本当らしいということが明らかになりました。でもそれは栄養を横取りするからとかではなく、サナダムシから出る物質が腸内細菌叢を変えることや、交感神経に影響することで生じているのだそうです。謎ですね…

 

エメラルドゴキブリバチ

これも動画を見て実物を見てくれたらいいんじゃないかと思うんですが、とっても綺麗なハチさんです。

http://www.nikkei-science.com/201702_086.html

ゴキブリになにか注入→ゴキブリの触覚を切って誘導→穴の中でゴキブリに対し産卵&閉じ込め→幼虫がゴキブリを食べて出てくる というやつです。

ゴキブリが全然抵抗しなくなるのは、注入する毒が神経系に効くかららしいということが最近の研究で分かっています。

 

ハリガネムシ

カマキリのお尻を水たまりにつけると出てくるやつですね。

ハリガネムシに寄生された昆虫は、川に身を投げるようになるといって一時期話題になりました。

実際には川に誘導されるのではなく、視覚の系などを乱すことによってふらふらとした行動をさせ、たまたま川の近くにたどり着くとそのまま目がくらんで(?)川に落ちるという仕組みらしいですね。

ハリガネムシによって川に落ちる昆虫が、川に住む魚の餌の6割も占めるという報告もあり驚かされました。

 

エキノコックスとキツネ 

北海道のキツネを触ってはいけないとよく言われる原因です。

エキノコックスはイヌ科動物を終宿主としています(終宿主とは、成虫が寄生する対象の宿主のこと)。終宿主は寄生する側にとって死ぬと困るからなのか、あからさまな症状が出ない場合が多く、この場合も大抵症状が出ません。

しかし、終宿主としてキタキツネや犬などが感染すると、糞と一緒に虫卵が多量に排泄されるようになります。

その虫卵がヒト体内に入ると、ヒトはエキノコックスにとって中間宿主なので、ここでは成虫になれません。エキノコックスにとっては成虫になれない環境は早く出たい対象でしょう。大抵中間宿主は使い捨てのような扱いをされる場合が多い印象です。

今回の場合も、ヒト体内でエキノコックスは嚢胞というものを形成していき、それがヒト体内にどんどん増えていきます。5~10年は無自覚なのですが、嚢胞の拡大と転移とともに、臓器に障害が出始めます。肝臓内の胆管や血管が塞がれて肝機能障害が進み、末期には重度の肝機能不全となります。放置すると90%以上が亡くなりますし、病巣切除しないと治療できないという重い病気になります。

ちなみに普段の自然界では中間宿主はネズミが多く、検索するとネズミの解剖画像などが出てきます。割とゾッとします。

 

アオムシコマユバチ

アオムシコマユバチはモンシロチョウの幼虫体内に卵を産み付ける有名な生物です。

小学生の時にアオムシを飼ってたら、チョウチョじゃなくて謎の繭を沢山吐き出した悲しい思い出がある人も多いはず…

アオムシコマユバチは一匹のアオムシに大体80個もの卵を産みつけます。卵はアオムシ体内で孵り、そのままアオムシを死なない程度に食べていきます。そして蛹になるとき外に出てきて、繭を張るんですね。ちょうどアオムシの真下に繭ができるような形になります。

その時アオムシはどうするのかというと、なんと蛹を狙う外敵を追い払うような動きをして守り通すという行動をします(自分は成虫にはなれません)。寄生されると行動が操られる例の一つです。

また、アオムシコマユバチがアオムシを探す手がかりは、アオムシが食害したキャベツから出されるカイロモンという化学物質であることも分かっています。他にも卵を体内に産み付けるのに免疫によって排除されない仕組みや、最後の行動を操る仕組みなど、様々なメカニズムがすでに明らかにされているので、調べてみると面白い題材です。

 

クモヒメバチとゴミグモ

こちらも寄生バチの話です。ハチって寄生形態をとるものがかなり多いんですよね…。そしてハチごとに専門にする対象が決まっている。クモヒメバチの場合は対象はゴミグモです。

クモヒメバチはクモの背中に卵を産み付け、孵化した幼虫はクモに外部寄生して成長します。

孵化から10~14日後にはさなぎになる準備を始めるのですが、この際クモの行動を操作して、さなぎに最適な網を張らせたうえでクモを殺し、その後約10日間で成虫となります。

クモが張る網って状況によって違うんですが、クモヒメバチに寄生されたとき作る網は休息網という形態に酷似し、装飾糸がつき、強度が高いものなのだそうです。

最近だと、クモヒメバチ幼虫を外科的にとったり、または移植したり、幼虫側を麻酔したりして作る網がどうなるか色んな実験がされているらしい…

 

フクロムシカニ

フクロムシ甲殻類に寄生する甲殻類です。

フクロムシ幼生のメスはカニの体内に侵入し、カニの体中に根のような器官を張り巡らせて栄養を吸収して成長します。

十分に成長したメスは、カニの表皮を突き破って生殖器を体外に露出させ、メスに比べて極端に小さなフクロムシのオスが生殖器に入り込むことで受精を成立させます。

フクロムシに寄生されたカニがオスだった場合、脱皮のたびに外観がメスに変化していき、生殖能力を失ってしまうようになっています。

 

カッコウとウグイス

カッコウは托卵行為といって、ウグイスなどの巣に自分の卵を入れて卵を温めたり幼鳥を育てたりさせるのを担わせる寄生形態をとります。

カッコウの卵は托卵先の鳥の卵そっくりに産むことができ、親は見分けがつきません。

そして他のヒナより先に生まれ、周りの卵をすべて蹴落とします。するとその巣に帰ってきた親鳥はカッコウのヒナのみに注力して育てるようになるのです。

そうは言いつつも托卵される側もやられっぱなしでは困るので、違う柄の卵を産むようになったり、卵の見分けを見た目以外でつけられるようになったりと、カッコウの托卵行為に負けないように進化していくことが知られています。

しかしそれでもカッコウがまた追いつこうとして…という、所謂赤の女王状態になっているらしいです。

 

トキソプラズマとネズミ

トキソプラズマは猫を終宿主とするもので、ネズミに寄生すると猫に移るためにネズミの行動を大胆にします。

猫を怖がらなくなって、猫に捕獲されやすくなることで、トキソプラズマは猫の中に移動が可能です。

ヒトにトキソプラズマが入り込むこともありますが、その場合も性格が大胆になると言われています。

交通事故を起こしやすい(道路にためらわず出ていってしまう)とか、起業家になるとか、性に奔放になるとか言われています。

最近だと自殺率の高さにも繋がっているという話がありますよね…何が起こっているんだろうか。ドーパミン系な気がしますが。

 

芽殖孤虫

ヒトに寄生する人体寄生虫の1種です。

成虫の姿が同定されていないため、「孤虫」の名が付けられました。

ヒトの体内に入ると、急速に分裂して全身に転移しながら増殖し、宿主を確実に死に至らしめるという、非常に危険な性質を持ちます。謎多き寄生虫です。

 

ヤドリギ

樹木に寄生する植物です。

ヤドリギは自分でも光合成を行いますが、主に宿主の光合成産物を活用します。

 

ストライガ

東京大学の入試問題に今年採用された寄生植物です。

農作物の根に寄生し、栄養分を横取りして大問題になっています。

ストライガの種子は土の中で何十年と眠り、寄生する先の生物が来るのをじっと待っています。寄生先の生物が根から出すストリゴラクトンという植物ホルモンを受容するとストライガは発芽し、根に寄生していくのです。ストリゴラクトンは本来共生菌を集めるための信号なのですが、それをうまく使っているんですね…賢い。

 

ナンバンギセル

ナンバンギセルは植物ですが、自分で光合成を全く行うことなく、イネ科、カヤツリグサ科、ショウガ科などの植物の根に寄生根を食い込ませて栄養を横取りします。

よってナンバンギセルには葉はなく、茎のように見える花柄を伸ばして、その先端に赤紫色の花を咲かせます。

その姿が非常に特徴的で美しいので、愛好家に好まれていたり…。

 

日本住血吸虫

日本の地方病として有名になった&かなり日本人が悩まされた寄生虫の一つです。
動画で紹介とかあります。
http://www.kagakueizo.org/movie/medical/355/

 

ギョウチュウ

ヒトの寄生虫です。

昔はギョウチュウ卵検査といって、お尻にシールを貼ってはがして学校に提出するという行為がありました。これは、ギョウチュウが寄生している場合、夜間就寝中に肛門周囲に雌虫が出てきて産卵するためです。卵をシールでとって確認するつもりなんですね。

夜に産卵されるとき、その這う刺激でかゆみを起こします。すると寝ているヒトは無意識に肛門周囲をかいてしまいます。それによってギョウチュウの卵が手指やシーツなどに付着し、次の感染へ繋がっていきます。

ギョウチュウに感染すると、肛門部分のかゆみで睡眠不足となった子どもにさまざまな影響を与え、爪咬みが多くなるとされています。爪を咬めば、指に付着している卵が摂取されやすくなるわけで、ヒトも操られる例といえるでしょう。

 

フタゴムシ

目黒寄生虫館のシンボルにもなっているまるで蝶のような寄生虫です。

蝶のように見えるのは、X字状に雌雄が合体癒合し生殖器や消化器系が一体化した姿であるためです。

最初にオスとメスができた生物であるという説もある大事な寄生虫です。

 

ヘテロボツリウム

フグの養殖業でかつて有名になった寄生虫です(大打撃を与えた)。

 

三代虫

体中央部を子宮が占め、子宮内の仔虫がさらにその仔虫を宿しているため、「三代虫」と呼ばれる中々面白い形態の寄生虫です。

 

プラギオリンクスとワラジムシ

ワラジムシは本来陰湿な日陰を好みますが、プラギオリンクスの幼虫に寄生されると日なたに出るようになるため、終宿主の鳥に食べられやすくなります。

 

マツノザイセンチュウ

長さ1mm位の線虫で、元々北アメリカから入ってきた生物です。マツの幹の中で増え、仮道管を閉塞させることでマツを枯らすと言われています(そんな単純じゃないっぽいらしいのですが…)。

「マツ材線虫病」という病名で呼ばれます。

マツノザイセンチュウは自分で次のマツまで飛ぶことは出来ないので、マツノマダラカミキリを利用して広がります。

 

リベイロイア

扁形動物のリベイロイアは巻き貝の内部で無性生殖し、そこで生まれた幼生はウシガエルのオタマジャクシの皮膚から体内に侵入します。

脚の付け根の周りに「シスト」と呼ばれる嚢胞をつくるのですが、これによって脚が余計に生えたり、足りなかったり、変形したりしたカエルになります(特に脚が増えたように見えるカエルは見ると驚くと思います)。

こういうカエルはアオサギなどの水鳥にすぐ食べられてしまうため、リベイロイアはアオサギの体内で有性生殖を行い、その卵は鳥のふんとともに再び水中に戻り、新たな寄生を繰り返すことができます。

 

タイノエ

タイの口にいるダンゴムシみたいなやつで、可愛いです。私は好き(多分魚買って見つけたらびっくりするけどね!)。一度写真を見てみてもいいかも。

 

全然関係ないんですが、昔高校生の時に友達と休日遊びに行って、おしゃれなお店で海鮮のパスタを頼んだら貝の中から小さなカニが出てきてびっくりしました(貝と一緒に茹でられて死んでたんですが)。めっちゃびっくりして家に帰ってから調べたら「ピンノ」という貝への寄生蟹だったんですよね。中々ショッキングな出会い方でした。

 

 

ほか

「寄生」だけで調べると中々出てこないんですが、生物を絞ってやると割と情報が出てくるのではないかなという気がします。

例えば魚の寄生だと…

http://www.cty-net.ne.jp/~noro-m/page053.html

https://buna.info/article/1861/

こんな感じで良さげな(?)サイトが出てきます。

この調子でヒト、イヌ、昆虫、海…とか、そんなイメージで検索すればよいのではないだろうか。

でも結局探すの割と大変なので、個人的には本がおすすめです。寄生関係をまとめた本は沢山あるし、詳しく話をしてくれてるのでわかりやすい。大体ビジュアルもついてくるのでよいですよ!

(ヒトの寄生虫は英語wikiも割と詳しい。https://en.wikipedia.org/wiki/Human_parasite#Most_common_parasites