あいまいまいんの生物学

あいまいまいんの生物学

生物学が好き。勉強したり遊んだり。

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「よく聞く健康知識、どうなってるの?」を読んだ

東京大学出版会から、「よく聞く健康知識、どうなってるの?」という本が出ました!

「面白そうな本だな~!」と思っていたら、レビュー献本企画が流れてきまして!読みたい本でもあったので、喜んで参加させて頂きました!!

ということでレビュー企画用献本御礼として、書評をここに書かせて頂きます!!

 

まず、タイトル通り、よく聞く健康知識に関して楽しく学べる一冊でした!

取り扱われているトピックは誰もが一度は聞いたことがあるようなもの、かつ「そんなもんかな」となんとなく受け入れたり、「本当かな」と疑問に思いつつ放っておいたりしたようなものばかり。

気になっていたけれどどう調べたらいいのか、どう真偽を見分けたらいいのか……と思っていたようなトピックに対して、本書は論文や研究を参照しつつ細かく、慎重に議論してくれていて、大変勉強になりました。

文章の量や言い回しもこちらが受け取りやすくなるよう工夫されていて、その点でも好感が持てました(生物学をやっていない人には若干難しいところもあるかもしれませんが……)!

まさに「こういう本、情報が欲しかったんだよ~!」って思える一冊です!!!


自分が本書で何よりいいなと思ったのは、個別のトピックについて掘り下げる「だけ」に留まらず、

世間一般に蔓延る様々な健康知識に対してどう向き合うべきか?

どういう切り口で真偽を判断していくべきか?

ということが全ての話題で一貫して諭されていたことです。

 

私達は生きているとどうしても言い切り型の知識に囚われ、「◯◯は健康に良いらしいよ」というふわっとした知識に縛られて生活しがちです。

その行動が本当に健康に良いのかは分からない、むしろマイナスになる可能性だってあるのに、軽率に受け入れがちですよね。

しかし本書を読めば、こういった文言に振り回されず、一度立ち止まって疑ってみる、という姿勢が作られると思います。

加えて、自分でその真偽を確かめるためにどう情報を集めれば良いのかも、本書から学べると思います。

私自身、今までは論文を読めばいい……とぼんやりわかってはいたものの、どういう視点や切り口で健康知識を吟味すればよいのか、どこに注目して情報を集めるべきなのかわかっていなかったな、と本書を読んで思いました。

健康知識の出どころ、前提、実験条件、長期の評価、別の病因との関連性等、健康情報の真偽を判断するために気にすべきポイントが以前より自分の中で明確になったなと思います!


ということで、科学に真摯な姿勢がしっかり見える、素敵な「健康知識」に関する本でした!!

巷には怪しい本が山程ありますが、こういう本は中々ないと思います。

健康知識に興味はあるけど、疑心暗鬼だ……とか、どういう風に真偽を判断すればいいのだろう……と思っている人、

単純にトピックを見て気になる!と思った人、

ぜひ読んでみてほしいと思います!!!!!!!

 

下のリンク先では目次と試し読みができるので、どんな本かな~と思った人はぜひ覗いてみてくださいな!試し読みは「糖質制限食って優れたダイエット法なの?」の一部が掲載されています!読めばどんな感じかわかるはず!!

www.utp.or.jp

2025年度東京大学入試問題 生物所感

バタバタしてたらいつの間にか3月になってしまった……!!!!!

受験生の皆さん、二次試験お疲れ様でした!!!!

 

さて、毎年のお楽しみなのでね……今年も東大の問題を解きます!!!公開してくれる産経に感謝。

www.sankei.com

 

 

概要

大問数は例年通り3問。

論述はなんか妙に少なくなった???昨年度まではもっともりもり書いていた気がするのだけれど、今年度はさっぱりしているものが多い上に問題数も少ない気がした。勿論考える力や発想力が必要な問題もあるのだけれど、比較的優しい記述というか……授業で考えさせられる程度の射程のものが多かった気がする。

今年の問題もリード文の読み込みが重要ではあるとはいえ、正直例年ほど込み入った印象は受けなかった。ストーリーが結構綺麗に見えているものが多いというか……気のせいかもしれないけれど。とはいえ処理する情報量は相変わらず多いので、試験のときには冷静な判断力や処理能力が要求されるだろう。東大受験する人はこれをこなすんだからすごいなぁ、と毎年感心しかない。すごい。

題材も良い!まぁこれは例年通りの感想である。問題の展開の仕方もいい。絡ませ方もうまい。……が、一問だけちょっといただけないものがある。それでもやっとした気持ちで終わってしまった。うーん……。

 

各大問ごとの所感

第1問 線虫の学習行動

いきなり線虫!!!!!!!!!!私の大好きな線虫の、しかも大好きな学習の問題じゃないか!!!!!!!!!!!!!めちゃくちゃ鼻息が荒くなってしまった、線虫を問題で取り上げて称賛してくれてありがとう(?)。線虫はね、大変いいモデル生物なんですよ。皆さん覚えましょうね。

塩に対する学習行動、これは確実に飯野研ですな……。でも飯野先生最終講義やってたはずだけど研究室どうなったんだろう。

molecular-ethology.bs.s.u-tokyo.ac.jp

しかも問題内容は(把握しなければならない情報量はリッチだけど)塩に対する学習行動を構成している分子たちの選択的スプライシングとシグナル伝達の話で面白い!!!!!!

ざっくりまとめて話すと、まず線虫には「自分が餌を食べた塩濃度を学習する」という能力がある。50mMの塩濃度環境で餌を食べた、と学習すると、線虫は塩濃度勾配で50mM目指して移動する。逆に50mMの塩濃度環境で餌がなかった、と飢餓の学習をすると、今度は塩濃度勾配で50mMを避ける(忌避行動を示す)ようになる。このように、線虫は自分が餌を食べた環境条件……塩濃度とか、温度とか、ある化学物質の存在量とかを学習して、行動に反映させることができるのだ!すごい。すごいよね?(圧

で、それを実現可能にしているのは言わずもがな神経回路である。線虫は体の細胞数が決まっていて、雌雄同体なら959個(ちなみに雄は1031個)そのうち302個が神経細胞になっている。線虫はすべての細胞系譜を追うことができている上、細胞の数が決まっているので、こんなことが言い切れるのだ。すごいよね!?そのうち神経細胞AがNaClを受容することが上の行動を示すのに必要であることが既に知られている(蛇足だが、多分神経細胞AはASERのことだと思う)。

今回の問題ではそんな神経回路で発現するタンパク質がフォーカスされている。まず遺伝子G、これは神経細胞Aで発現するやつで、欠損すると忌避行動が弱くなる。次に遺伝子D、これは神経細胞Aを含むいくつかの神経細胞で発現しているやつなのだが、欠損させると忌避行動が完全に見られなくなる。

この遺伝子Dはあるペプチドホルモンの受容体Dをコードしていて、選択的スプライシングによってアイソフォーム1, 2, そして3ができてくる。

アイソフォーム1は細胞膜貫通型で、ペプチドホルモンを受容すると細胞内で酵素Eを活性化しシグナル分子を生成させる。しかしアイソフォーム1を遺伝子D欠損変異体に導入しても忌避行動は復活しない。

アイソフォーム2は細胞膜貫通部位がないため細胞膜上に固定されていない。

アイソフォーム3はアイソフォーム1に似て細胞膜貫通型だが、アイソフォーム1と共通エキソンの間に特異的エキソンが挿入されており、ここ由来の部位でタンパク質Cと結合できる。タンパク質Cはキネシンと結合し、微小管を介した細胞輸送をされる。で、このアイソフォーム3を遺伝子D欠損変異体に導入すると、神経細胞Aと全神経細胞に導入した場合に忌避行動が復活する。

もうこの時点でめちゃくちゃ面白いしワクワクする。私が個人的に選択的スプライシングが好きだからというのもあるが、その上でキネシンによる細胞輸送が塩に対する学習行動に影響するっておもしろすぎない???どれだけ領域跨いてつながってるの???最高だね……。

ということで問題に入っていく。

Aは実験からの推測問題。ストレートかつシンプル。まぁジャブといったところか。

Bは単語補充。「逆転写」と「選択的スプライシング」という教科書的な答えなので東大受験するような人なら大丈夫だろう。新型コロナウイルスの検出でRT-PCRが用いられるが、こういうのに興味があれば逆転写なんて絶対知ってるワードだし。なんならそういう時事への興味を意識してこの単語を問題にした可能性もある?

Cはペプチドホルモンの例を選ぶもの。インスリンだねぇ!即答できるねぇ!!東大だと「すべて選べ」系が多いけど、これは「1つ選べ」なのでかなり簡単にしてくれている印象。

Dは遺伝子Dが寿命制御に関わっているとかで、野生型、遺伝子D欠損型、遺伝子D欠損型+アイソフォーム1, 野生型で酵素E過剰発現, 野生型でアイソフォーム2過剰発現の結果を見て考察を行うというもの。記述型な分難易度は上がる。要するにペプチドホルモンをアイソフォーム1, アイソフォーム2で取り合う構図を考えて酵素Eという寿命短縮の原因となるやつをどれだけ活性化させるかを考えるだけなのだが、この「取り合う構図」を想像できるかどうかが肝だと思う。面白いよなぁ。

EはDに引き続き遺伝子Dの寿命制御に対する考察。シンプルだけどちゃんと理解できているかどうか問われている。Dが分かってないと無理だと思う。

Fはアイソフォーム3に特異的なエキソン領域がどこにあるのかを、ゲノム構造とPCR(色んなプライマーセットで行う)後の電気泳動結果から導くというもの。いいなぁこういう実験っぽい問題。実践的で好き。エキソンを含む・含まないで長さが違うバンドが2種類出るところに注目すればいいので、自ずと(2)-(5), (2)-(4)に目が行く。で、(3)-(4)はアイソフォーム1,3で共通長っぽいから(1本しかバンドがないので)(2)-(5)間の(う)でしょうね、と答えが出る。

Gは今までの実験を踏まえ、忌避行動における受容体Dの各アイソフォームの働きに関してどのようなことが推測できるかを記述する。実験がちゃんと追えていれば特に問題なく余裕で書けるだろう。

Hは受容体Dのアイソフォーム3がどこに輸送されるか、生きた線虫で追跡したい……どうすればいいか?という実験デザイン的な問題だ。線虫をやっていると「まぁ身体が透明だし、蛍光でいけるな……GFP連結したcDNAを作って導入して追跡かな」という気持ちになるが、受験生はどこまで想像できるのだろうか……。

Iは受容体Dの輸送が忌避行動において大事だと示すための実験デザインをせよというもの。まぁタンパク質C欠損でいいだろうな。これも実験がちゃんと追えていれば難しくない、なんならとても簡単……。

Jはアイソフォーム1を用いて「受容体Dが輸送されることがアイソフォーム1と3の違いを生み出す」と証明するための実験デザイン問題。アイソフォーム1をタンパク質Cにくっつくようにしちゃえばよし。これも簡単だ。

 

全体を通して、最初に説明される実験の情報量が多めだが、そこまで複雑なものでもないので、ちゃんと整理して追えていれば……ストーリーを想像できていれば特に問題なくさらさら解ける問題群になっていた気がする。最後怒涛の実験デザインがくるが、「ここを確かめたいな」というむずかゆいところをピンポイントで刺してくるものばかりで良いなと思った。何より元々の現象が非常に面白い!ただ単に「あるタンパク質があるから◯◯、ないから✕✕」ではなく、各タンパク質や分子がものを取り合ったり、くっついたり、移動したりという「動き」が見えるのが素敵だなと思う。生物や分子は動くもの、ダイナミックなものであるということがよく伝わる問題になっていると思う。……線虫が好きだから過大評価している面も若干あるかもしれないが!

 

第2問

Ⅰ 自家不和合性、単性花

リード文では被子植物の花事情が説明される。両性花をつける種が8割以上だが、自家受粉だと子孫の生存率や繁殖力が低下することがあるので(近交弱勢のイメージ)、自家不和合性をもつ場合がある。自家受粉によるは両性花をつけなければ回避できるので、単性花をつけるものがいる。単性花をつけるものの中でも、雌雄同株と雌雄異株のものが存在する。

で、雌雄同株の植物では性染色体がないが、雌花と雄花がどのように作られるのだろう……というふうに話が展開していく。確かに言われてみれば気になる。両性花の場合は、ABCモデルなんかを考えてみると、遺伝子発現の組み合わせによって雄しべ・雌しべが作られてくるので、性染色体がなくても雄・雌は植物の中でできる……というのは理解できる(動物でも性染色体なしに雌雄が決まるパターンはいくらでもある。温度とか、化学物質とか、環境とか、選択的スプライシングとか)。が、雌雄同株の単性花の雌雄はどの段階で決まるのだろうか?今まで考えたことがなかったのでワクワクする。

リード文ではメロン(雌雄同株の単性花)を主題にとり、G,M,Aという3つの遺伝子の説明がなされる。Gはめしべ形成阻害と同時にMのはたらき抑制、ただし自身はエチレンにより抑制される。Mはおしべ形成阻害。Aはエチレン合成促進によるGはたらき抑制。ここまではいいのだが、次の瞬間G,M,Aを色んな組み合わせで欠損させた変異体を作って交配させて、人工的な雌雄異株を作出するのだ。なんという突飛な発想!

ここで問いに入る。

Aは近交弱勢の理由を説明するというもの。ちゃんと遺伝学を分かっていれば問題ないと思うが、高校生の中にはそこまで理解せずに「遺伝的に近いもの同士が交配すると弱くなる」とだけ覚えている人もいるだろう。こういうのは大事だと思う。

Bはエチレンに対する問い。簡単だけど「全て選べ」な分怖さがある。

Cは各遺伝子型で観察される表現型を考察するものだが、ありがたいことに東大が問題の中で遺伝子のはたらきの関係図を示してくれているのでかなり簡単になっている。

Dは作出した「人工的な雌雄異株」がどの遺伝子型のかけ合わせか考えるもの。雄株(雄花だけをつける)と雌株(雌花だけをつける)が1:1で現れる、という掛け合わせの結果から、Ww×ww的な掛け合わせがありそうだな~とまずはあたりがつく。実際問題文でも片方が全部ホモの雌株、もう片方が1遺伝子のみヘテロでほかがホモという雄株をかけ合わせたとあるので、やはりWw×ww的なものが1遺伝子だけ存在し、それ以外はホモなんだなと想定できる。雌株は図2-1,表2-1からMを持つことが肝になるので、自動的に親雌株はggMMaa。親雄株はGGmmAaとすれば、子どもはGgMmAa(雌株)とGgMmaa(雄株)になる。これは突然出されたら結構びびるのでは。受験生には難しかったんじゃないかなぁ……。

Ⅱ 単性花の進化とミトコンドリアの母性遺伝

文1ではⅠに引き続き単性花が主題となるが、なんとミトコンドリアにある雄性不稔遺伝子と核にある稔性回復遺伝子によって単性花が生じる場合もあるという。すごいシステムだ。ということでこのようなシステムを持つハマダイコンの話になる。九州北部沿岸の各ハマダイコン集団で、雌株(雄性不稔遺伝子の影響で雌花のみ)と両性株(雄性不稔遺伝子を持たないまたは稔性回復遺伝子を持つことで両性花)の割合を調べた結果が示される。

文2では雄株と両性株を集団中で維持する植物について、なぜそのようになるのか実験した結果が示される。文1,2共に興味深い内容だ。

問題に移る。

Eは雄性不稔遺伝子について、核よりもミトコンドリアに生じたほうが集団中に広がりやすい理由を答える記述問題。必ず次世代に伝わるかどうか、というポイントを簡潔に書ければいいだろう。シンプルだが大事な視点だなと思う。ハッとさせられた受験生もいるのでは。

Fは図から読み取れることを「全て」選ぶ問題。やはり「全て」は怖い。し、中々自信が自分でも持てなかった。

Gは実験結果からなぜ雄株と両性株の維持という一見得のなさそうなことをするか考察するというもの。表を見れば両性花は限られた相手としか受精できないのは明瞭で、逆に雄株からの花粉はどんな両性株でも受精をさせることができている。面白い仕組みだなぁ。

Hは遺伝子型を考える問題。そこまで捻りはない気がする?

Iもまた遺伝子型を考える問題。遺伝子型の問題多いなぁ……。しかも難しめというか、普通に焦る。

 

第2問も題材が面白く、総じて興味深い内容だった。だが少々パズルチックで頭の体操みたいな側面が強く、入試の焦っている状況下では焦りに拍車をかけるような内容だったのではないだろうか。個人的にもPDF上で解いていると、ページを行ったり来たりで中々考えるのが大変だった。こういうストレスフルな問題配置、どうにかならないものか……。難しい方に分類される問題だったのでは。

 

第3問 淡水魚の種間競争

第3問は河川における淡水魚のニッチと種間競争について。種A, B, Cについて色々説明がなされるのだが、ダムが建設されると海から遡上するタイプの通し回遊魚はダムの上流域で絶滅してしまうというのが、当たり前ではあるけれどハッとさせられた。人間の建築物で生態系はそんな部分までも変えられるのだなぁ。

Aはただの単語問題。

Bは競争的排除の説明を選ぶもの。これも「1つ選べ」な上、中身に捻りもないので選びやすい。

Cはニッチが近い複数種が共存する仕組みを選ぶもの。これも特に難しいところはない気がする。「全て選べ」ではあるがそこまでの緊張感はない。

Dは選択肢からの適語補充、なのだが、「人口学的な確率性」って高校生物で習うのか?????これは教科書を逸脱しすぎた内容なのでは……?出題していいのか???今回の問題群で一番疑問な箇所かも。

Eは対立遺伝子数とヘテロ接合体の個体割合を答えるもの。表を見て普通に導き普通に計算すれば出る。特別な知識は不要。

Fは遺伝的多様性が低下すると個体群絶滅リスクが高まる理由を説明するというもの。よくある内容なのでさらっと書けるかと思う。

Gは通し回遊魚不在により生じる生態系変化として誤っているものを全て選ぶというもの。誤答は正直何を言ってるんだ??というものなので選びやすい気がする(河川水に溶け出すDNAが失われて食物連鎖を通して遺伝的多様性が低下……????すごい理論だ……。)

Hは種Aの鰓のみに寄生する二枚貝について、年齢ピラミッドを作りましょうというもの。背景がちゃんと分かっていれば作図は容易。

Iは年齢ピラミッドに関連する記述として適切なものを選ぶ。年齢ピラミッドから死亡率を導くというものだ。年齢ピラミッドと死亡率の関係、私は昔あまりよくわかっていなかったが現代の受験生はどうなのだろうか……。未だにちょっと身構えてしまう。

Jは観察から推察されることに関して◯✕を答えるもの。そこまで難易度は高くないかな?と思う。

Kは野外実験で川にビニールハウス型カバーをかけたときと自然区とで比較して、なぜ差が出るか考えるというもの。リード文のストーリーが分かっていれば導けるはず。

 

第3問は題材としては面白い方ではあるけれど、正直そこまで「新しい!!」という感じや「見たことがない!!」「面白い!!」というほどではないかも?それでも勿論東大らしい発展のさせ方や問題の展開の仕方はあるのだけれど。

 

総評

取り敢えずまずはお礼を書こう。今年も楽しませて頂きました、ありがとうございました!!

やはり東大の入試問題はワクワクする。今年の問題群で順位をつけるなら、

1位 第1問

2位 第2問

3位 第3問

というのが個人的な面白さランキングだ。第1問の完成度が高すぎる。いや、自分が好きすぎる。めちゃくちゃ難しいわけではないし、処理が複雑すぎるとかでもないのだが、上でも述べたようにこの問題では分子のダイナミズムが表現されていて非常に好ましい。高校の生物学はどうしてもこう、分子の動きというのが部分部分で切り離されがちで、なんだかあまり「動的」な感じがしないというか、細胞のイメージもしん……としたものになりがちな気がする。だが実際は細胞は常に忙しない動きで満ちており、生物の体内では全てがつながって共同するような、大規模で同時並行的なピタゴラスイッチのような動きが展開されているわけで。一方でその動きの細部を見れば、非常に単純なものばかりで構成されているわけで……。それが組み合わさってあっと驚く機構を生み出し常に動き続けるというこの感じ!これを問題の中で少しでも感じさせられているのなら素晴らしいと私は思う。実際に受験した高校生のどれだけがその印象を受けたかはわからないが、私はその動きを感じ取ってとてもいい問題だなと思った。

全ての問題について、生物学の色んな観点や分野が組み合わさっているのも素晴らしい。横断的な問題をよくもまぁ毎回これだけ作り込めるものだなと思う。

 

しかし!!!!!!!!今回は一個だけどうしても納得できない。選択肢があるとはいえ、「人口学的な確率性」を選ばせる問題は本当に適切な出題だったのだろうか。東京大学は良い意味で教科書にちゃんと準拠した、逸脱のない問題を今まで作ってきていた印象だ。教科書から得られる知識だけで、教科書を飛び出た物凄く広い世界を見せてくれる。それが東大の入試問題の良さだと思っていた。のに、教科書に出ていない「単語」を問うなんて一番良くない出題じゃないか……?正直この手の問題は京大だと良くあるのだが、東大ではレアな気がする。それで一層引っかかる。勿論選べないことはない。少し頭が働けば他の単語は候補から消せるのかもしれない。そうだとしても教科書は出ては駄目でしょう……(これで教科書にこの言葉がちゃんと掲載されていて覚えるべき単語になっていたら申し訳ない)。他の問題がどれだけ優れていても、どれだけわくわくしても、この手の出題が一個あるだけでげんなりしてしまう。ので、なくしてほしいなぁ……。

2025年度大学入試共通テスト追試 生物 所感

本試はこっち↓

i-my-mine.hatenablog.com

i-my-mine.hatenablog.com

 

追試問題はここ↓

www.koukouseishinbun.jp

www.koukouseishinbun.jp

 

一応答えはここ↓

www.dnc.ac.jp

 

追試生物基礎に関する記事はここ↓

 

i-my-mine.hatenablog.com

 

本当なら上の記事で生物も一気にやってしまいたかったが、生物基礎を解き終わった時点で言いたいことが溜まりすぎたので今年度は別記事にした。

 

 

第1問

リード文はタンパク質の立体構造とシャペロンの話。シャペロンは教科書で扱うんだっけ……?進学校なら必ず触れられる役者だろうが。

問1は(理解を伴う?)知識。

問2はシャペロンについて知っていればまぁ解けるかなという気がするが、シャペロンが何者か全く分からない人にとっては選びにくいのでは??リード文で「高温などにより異常になった立体構造を……」とあるので、高温で異常になるなら一次構造より上かなぁとあたりは一応つけられる気がしないでもないが(というか多分それを狙って出題しているが)。個人的にはこんな風にあまり馴染みがないタンパク質の機能を推定させて絞らせるのはあまり好きではない。タンパク質の可能性は無限なので(?)、むしろ「こういう機能もあるかも」と思える方が好き(??)。

問3はエキソン・イントロンの話も絡めた遺伝子発現に関する計算問題。簡単な部類だとは思うが、mRNAの3'末端と5'末端について開始コドンと終止コドンの存在する位置関係から推定させる(空欄ウ)問題は「へぇ、こんな出し方もあるのか」と思った。個人的にこういう問題は好き。

問4は実験を見て考察&実験デザイン(2択しかないが)。順当かつさっぱりしていてよいのではないか。これ以上の詳しいストーリーは紙面にはないが、想像するに遺伝子Xはヒートショックでエキソンを抜いてタンパク質Xuを作る→シャペロンAを作る→ヒートショックで変性したタンパク質の立体構造を直す 的な流れだろうか。

 

第1問自体に特に問題はないと思われる。題材としてシャペロンが出るのも、シャペロン周りの温度でスプライシングが変わる遺伝子が出るのも面白い仕組みの紹介でいいなと思う。

 

第2問

植物の窒素利用と物質生産がリード文にくる。リード文自体は目新しい内容もなく、概論を語っている感じ。

問1は代謝経路の問題。光合成と呼吸の電子伝達系の比較で、ただの知識。

問2は異なる窒素濃度の培地で育てた植物の色んな情報を調べて、その違いの理由を考察するというもの。なのだが、(1)③について「培地中の窒素濃度が高いと葉の光合成速度が大きい理由を選べ」という問題に対し、「窒素同化に伴って産生されるATPとNADPHの量が増加し、光合成の反応を促進した。」が本当に✕でいいのか?と若干気になる。「窒素同化に伴って」というのは恐らくイメージとして窒素同化反応の副産物的にADP+Pi→ATP等の反応が生じ、ATPやNADPHができて……ということを伝えたいのだと思うが(そしてそれなら✕でいいのだろうが)、窒素同化によってATPやADP、NADPHやNADP+の元々の量が増えるという可能性はないのだろうか。ATP(ADP)もNADPH(NADP+)も窒素が含有されていると思うが果たして……と思うなどした。

問3は大量の窒素肥料が生態系に及ぼす影響を選ぶというもの。正直授業内で説明される内容だと思うので、考える必要もあまりなく知識だけで答えられそう。

 

第2問は以上。かなりあっさりしているなという印象。窒素利用がテーマだったのでちょっと捻った実験等が来るか?と思ったらそんなこともなく、基本は全部知識だった。資料読み取りの能力もほぼ要求されていないし(問2(2)で若干要るか?というくらいだがただの棒グラフ読み取りだしな……)。

 

第3問

リード文は目の発生について。特に目新しい情報はない。

問1はヒトの視覚に関する適切な記述を選ぶ知識問題。捻りもなくストレートな知識。

問2は水晶体分化について色々な部位を組み合わせて調べる実験。選択肢も比較的単純な上、実験も単純なのでそこまで難しくはないと思うが、どうしてこういう結果になるのだろうと純粋に興味がある。

問3(1)は視交叉の問題。視交叉をちゃんと分かっていればそこまで説明文を読み込まずともあっさり答えられそう。知らないと読んで理解するのに時間がかかりそう。(2)はその視交叉を生み出す仕組みについて考察するものだ。これは「へ~」となりながら解いた。耳腹側の網膜から伸びた軸索に対してのみ反発因子として働くタンパク質を交叉している部位に配置するとは、賢い仕組みだなぁ。

 

第3問はこれで終わり。ほぼ知識と単純な思考なのだが、個人的には問3(2)はシンプルながら面白いなと思った。こういう「教科書で説明されている事象がどのように成立しているか」を解き明かす感じの問題は好き。いいと思う。

 

第4問

Aのリード文はナメクジの感覚受容。触角の先端に嗅上皮があるらしい。触角で色々感じるということは触角の先に受容体やら何やらがあるのだろうとは思っていたが、嗅上皮があるのか……。

問1は神経と効果器の知識問題。かなりストレート。

問2はナメクジの触角に関する実験デザイン問題……で、一見面白そうだなと思うのだが、誤答があまりにも誤答なのでなんだか拍子抜け感がある。

問3はナメクジの味覚も絡んだ学習に関する実験を読み考察するもの。実験は面白いと思う。回答はそこまで難しくなさそう。

Bは打って変わって群れの一般論。

問4は群れの挙動について予測する問題。なのだが、b「メダカの群れの近くに天敵を置いたとき、その天敵を避ける個体の割合」が増えるか減るかはなんだかちょっと判断しにくい気がする。ちなみに答えは「増える」なのだが、これは恐らく「群れの形成は、~捕食される危険を的確に回避することに役立つ」というリード文の文章を参考に、群れが大きいほど天敵に気づけて、群れの中で情報が伝播し、回避個体の割合が増える……というのをイメージしているのだろうと思う。が、群れが十分に大きかった場合に、天敵が近くにいたとしてもその天敵付近にいる個体が食べられる危険にあるだけで、天敵から少し離れた群れの構成員たちは回避する必要がない、むしろ「天敵は近くの個体だけ食べて満足して去っていくだろう」という考えの元に回避しない可能性もあるのではないだろうか……?むしろ群れが小さい時の方が全個体が回避するような動きになり(回避個体の割合が高い)、群れが大きい時の方が一部個体のみ回避するような動きになるのではないか(回避個体の割合が低い)?と思ったのだが実際のところはどうなのだろうか。

問5は群れのサイズ等の思考問題。文章に乗っかって考えて選んでいけばいいだけなので難しくはなさそう。

 

ということで第4問はナメクジの話は面白いと思ったが、Bの問4に疑問が残った。

 

第5問

リード文は進化について。鯨偶蹄目には頭部に角をもつもの、もたないものの両方があるという話が述べられ、角の進化について注目する流れになっている。

問1はDNAの塩基配列と進化についての知識問題。かなりストレート。

問2は系統樹からの塩基配列の表作成。これもかなり簡単な方。

問3は角の進化が系統樹のどの段階で生じたか考える問題。簡単。

問4はアカシカの子を作る数と生存曲線とを見て考察するというもの。生存曲線をちゃんと理解していれば特に問題はなく答えられそう。

 

リード文の段階で角の進化について……とあったので壮大な話になるのかなと少し期待したのだが、結果的にはかなりこじんまりした問題だった。そこまで発展性もない。最後の問題の表はアカシカの生態として少し面白いなとは思ったが、問題自体はどれも難しくなく結構単純だなという印象。

 

完走の感想

まずストレートに、生物基礎も生物も本試の方が面白かったなと思った。題材が。面白い新規題材をちゃんと持ってきていて、ワクワクしながら終始解けるような構成になっていたように感じる。対して追試はあまりそういうワクワクを感じられず、一部の問題でときめいた程度で終わってしまった。共通テストらしさが薄いというか、堅いというか……もっと楽しめる問題を期待したい。あと妙に追試はリード文が簡潔で、一般論が多い気がする。その方が話題を広げられるというのもあるのかもしれないが、具体的な事象に突っ込んだ記述が少なめではないか?読むのに苦労する、設定を理解するのに読解力がいる、資料を読み取り関連づける力が要求される……みたいな本来あるべき障壁があまり感じられない。それはリード文だけでなく問題それぞれの中身でもそうだが。なんだか妙に知識も思考もストレートで少しの捻りもない感じ。本試より簡単なんじゃないか。あと知識に内容が偏り気味かなとも若干思った。

 

そして今年度の本試験はそこまで違和感を感じる問題はなかったはずだが、追試は引っかかりを感じる問題があった(具体的には生物の場合第2問の問2、第4問の問4)。自分の不勉強故だとは思うが、誤答は誤答とちゃんと判断できるようになっていなければならない気がする。教科書で学んだことを地盤にしてもいいし、問題文中の設定でもいいのだが、それらを動員しても違和感が残るものは誤答ではなくグレーだと思っている。そういうものを選択肢に入れ込むべきではないと私は思う。ただし何度も繰り返すが今回の違和感は私の不勉強故の可能性もあり、なんならその可能性が高いので、勉強しなきゃなとも思う。勉強した上でちゃんと吟味したいところ。

 

ということで、あくまで個人的な意見と感想を書き連ねた。違うことを思っていただいても全然構わない。「私はこう感じた」というだけなので、そこはご理解頂きたい。

 

さて、次のときめきがあるとしたら二次試験の問題だ。東京大学の問題が早く見たくてしょうがない。面白い題材を必ず出してくれると期待しているので……待ち遠しいな。

2025年度大学入試共通テスト追試 生物基礎 所感

本試はこっち↓

i-my-mine.hatenablog.com

i-my-mine.hatenablog.com

 

追試は毎年公開が遅い&どこが公開するか分からない(大抵福島民友新聞さんが頑張ってくれてる)という問題があるが、今年は高校生新聞ONLINEが最速っぽい。恐らく。掲載してくれてありがとう……(しかし欲を言えばPDFで欲しい)

www.koukouseishinbun.jp

www.koukouseishinbun.jp

 

一応答えはここ↓

www.dnc.ac.jp

 

 

取り敢えず生物基礎だけ今回はやっていく。生物は次回に回す。

 

第1問

Aは代謝や細胞構造に関する問題。基本的には知識だが、問2では「細胞質」という言葉の定義がちゃんと分かっていないと若干戸惑いそうな気がした。問3はパスツール効果を題材にしているが、基礎の教科書に扱いはあるのだろうか?進学校なら恐らく授業で触れられるので問題文をあまりちゃんと読まずとも答えられてしまいそうなものだが、教わらないと読む分&理解する分若干ロスになる気がする(そこまでひどい問題だとは思わないが、思考を試す共通テスト的問題にしようとして実際は授業で習ったかどうかで有利さが変わってしまっているのではという印象)。

Bはタンパク質と遺伝情報。問5の計算は「おおよそ」と言っているのでまぁいいのかなという気もするが、アミノ酸数×3=mRNAのヌクレオチド数や遺伝子の塩基対数 というわけではないので一言必要だったのではという気がする(遺伝子の塩基対全体がアミノ酸を指定するとして、的な?)。生物基礎で学ぶ範囲内だけでも、開始コドン終止コドンのことがあるのでアミノ酸数×3=mRNAのヌクレオチド数にならないことは自明のはずだ。「おおよそ」だから良いのだろうが……。

 

第1問はA,Bどちらもリード文が非常に簡潔な上、新規題材もなく、面白い事象を紹介するわけでもなく(パスツール効果がそれにあたるのか?)という感じだった。問われていることも基本知識で、強いて言うなら問3と問6が思考……なのだろうが、なんだかとてもセンター試験に近い印象を受ける。

 

第2問

Aは体内環境の維持。リード文は血糖値についてで、これも新規性はない。

問2でグルカゴン(ホルモンA)とインスリン(ホルモンB)に関する記述として最も適当なものを選ぶ問題があるが、②「グルカゴンは、インスリンによって分泌が抑制される」は正解にならなくて大丈夫なのだろうか?例えば下のPDFには以下の説明がなされている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/55/11/55_841/_pdf

近年,膵島内パラクリン効果を介したグルカゴン分泌調節の重要性が明らかとなってきている.前述のごとく,α 細胞は膵島内血液微小還流を介した β 細胞分泌の直接の標的となっていることが示唆されているが,β 細胞からのインスリン,GABA,亜鉛はグルカゴン分泌を抑制することが認められている.特にインスリンはその作用によりグルカゴン分泌を抑制する一方,分泌低下時など α 細胞に対するその効果の消失時にはグルカゴン分泌を促進すること(スイッチ・オフ作用)も報告され,β 細胞は α 細胞からのグルカゴン分泌を抑制刺激と能動的に調節していることが伺われる.

自分はインスリン・グルカゴンの専門家ではないので詳しいことはわからないのだが、インスリンとグルカゴンの間に調節関係があるらしいというのは聞いたことがあり、正直②が正しい文章なのか否かが判断できない。とはいえ、「グルカゴンは、インスリンによって分泌が抑制される」だけで詳細な設定等がないので、結構あり得そうな現象に思えてしまう。勿論①があからさまな正解であり、②は授業でも習わない&教科書に記載がないだろう……と言われてしまえばそれまでなのだが、授業云々は別にして生物学として事実かどうかを考えたうえで選択肢は作らなければならないと個人的には思っている。完全に間違いならいいのだが……果たして……。

Bは免疫。Zさんの具体的な体験(インフルエンザ家族感染、ハチによるアナフィラキシーショック)をリード文とし、問題が展開されている。問4,5と細かめな知識、という感じだが、問6が思考的な問題になるのだろう(とはいえそこまで難しいものではなく、組み合わせるだけなのだが)。

 

ということで第2問も新規題材……という感じはなく、リード文は平凡で、問題内容にもそこまでひねりはなかった。知識重視な印象を受ける。上でも述べたように問2に疑問が残る。

 

第3問

Aは遷移とバイオーム。問1ではある草本に対するササ刈りの影響を調べる実験と結果を見て考察するようになっているが、なぜこのような結果になるのだろう……と純粋に不思議(刈り取られた方が個体数は減って花の総数は増える。花が増えたら個体数も増えそうなものだが……)。問2は平凡な知識。

Bは生態系。探究活動を題材とし、土壌動物に影響を与える条件を探究している。問3は単純な資料読み取り、問4は実験デザイン。共通テスト的な問題という面では別にいいのだが、問4の実験は若干稚拙な気もする。いや、正解になるのはわかるのだが。「林床の光環境の影響で土壌動物の分類群の数が変わる」ことを調べるために、ただ単に明るい林床で一部を覆って暗くして動物の比較をしたとしても、その場所と明るい場所で動物の行き来があるだろうからな……と思ってしまうのだ。じゃあどういう実験が良いのかと言われると難しいが。完全に同じ森を別の場所にコピーして明暗だけ変えられたらいいのにね(?)

 

第1,2問のリードや題材があまり目新しくなかったのに対し、第3問は共通テスト的な問題だなぁという印象を受けた。知識が全く無くても資料が読み解ければ解けてしまう問題だらけの構成は若干危うさを感じないでもないが。

 

本試験に比べたらほぼセンター試験かも

ということで一通り見てきたが、本試験に比べると圧倒的に面白みがなく、知識に傾倒している印象だった。しかも若干細かい。細かい知識、正しい定義を身につけることは大事なのでそれを問うことは問題だとは思わないが、問いすぎるのは若干息苦しさを感じないでもない。

そして違和感を感じるところが結構あったのもなんだかな……という気持ちだ。本試験でもそうだったが、どうして今年度の生物基礎では遺伝子発現のところの出題が若干粗くなるのだろう?もうちょっと厳密にするために注意書き等ちゃんとして欲しい気がする。そして特にインスリンとグルカゴンのところはどうなんだという気持ちが残る。教科書を読んで絶対ない、と思える選択肢ならまだしもなぁ。

追試が本試に比べてめちゃくちゃ難しいとかそういうわけではないので受験生的には別に良いのだろうが。うーん、という気持ちだ。

好きMVを紹介するだけ

いつの間にか1月も終わる!!!!!!!

2025年になったなぁと思っていたらいつの間にか1年の1/12が終わろうとしている。意味が分からない。時間の流れって速いなぁ……。

 

今回は久々に「ブログ!」って感じの記事を書こうと思う。

目的は「好きMVを紹介する」ことだ。

 

私は音楽が好きだ。Spotifyを契約していて、毎日めちゃくちゃ聴いている。

YoutubeでもMVやライブ映像などをよく観ている。ライブ映像いいよね。普通の音源とはまた違って良いのだ。

で、そうやって観ているMVの中でも特にお気に入りのやつが幾つかある。ので、今回はそれを書き留めようと思う。自分の記録のためにも。紹介したい欲の発散のためにも。誰に求められている訳でもないが、自分のブログなんだから何をしたっていいはずだ!!

 

 

藤井風

最初は藤井風から行こう。順番に意味があるわけではないが。

このブログでも既に一回取り上げているが、私は藤井風がめちゃくちゃ好きだ。

i-my-mine.hatenablog.com

2024年の紅白歌合戦では藤井風がNY生中継で「満ちていく」を披露してかなり話題になったので、それきっかけで藤井風を知ったという人もかなりいるらしい。嬉しいね。実際すごいパフォーマンスだった。神々しさがカンストしててあの時間だけ歌合戦が別番組になってたなと思うくらい。相変わらず藤井風はある種の宗教で神がかっている、と思う。

 

歌だけでいくと正直全部良くて全部好きなので延々と語れてしまうのだが、今回は好きMVなのでかなり厳選していこうと思う。

 

Garden


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MVを紹介すると言いながらいきなり「Not a MV」と書いてあるものを出すのはいかがなものかと思いつつ、これはMVだろと思うので紹介してしまおうと思う。

大前提からいくがGardenはめちゃくちゃ良い曲だ。自分の人生をGardenに喩えた歌で、藤井風特有の人生観がよく現れている上に、私達が庭園で感じるような心の豊かさを与えてくれる不思議な歌。歌詞がすべて「e」の音で終わるのも印象的な曲だ。

このMVの良いところはGardenという曲にピッタリの、このなんとも言えないぼやけ方と優しく懐かしい質感だろう。ゆったりとしたMVなのも曲によく似合う。風さんののびのびした姿もホームビデオのようで可愛らしく心が解れていく。

これは本当に蛇足だが自分は植物同定が好きなので、このMVの解像度でどこまで同定できるか……みたいなのも楽しかったりする。あ、これは◯◯だな、とか、◯◯かも?とか思いながら観ると結構楽しい。本来の楽しみ方じゃないと思う。

 


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「花」という曲の歌詞は、藤井風思想は勿論のことなんとなく神秘的なものになっている。歌詞の文字数はめちゃくちゃ少ないのに良くこんなに豊かに表現できるなと思う。

で、MVがまた最高。藤井風が2パターン見られるという意味でも最高だが(どっちも大変良いお姿)、花の棺から出てきた藤井風の色使いと美しさといったら。本当に「宗教」だな、と思う。カラフルなのに儚い。この色使いと演出にぐっときた。

 

まつり


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とにかく観てくれればわかる。良い。人種関係なく色んな人が一体感を持って(ある意味バラバラで)産むエネルギーがすごい。藤井風は世界を作る人なんだなぁと改めて思う。

 

 

King Gnu


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King Gnuもいい曲が沢山あって好きだ。特にこの「泡」はかなり好きだ。

歌う用の曲というよりも観賞用の曲だろう。独特のリズム。沈んでいく感じ。同時にもがく感じ。たまらない。

MVの森山未來の演技が良すぎて最初観たときは鳥肌が立った。何度も観てスケッチまでした。それくらい優雅で、切なくて、苦しい海中のダンス。布ってこんな広がり方するんだ、と感動する。これだけで一個の映像作品になるというか、芸術だと思う。

 

 

サカナクション

新宝島


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サカナクションもいい曲ばかりで(さっきからいい曲ばかりで……を多用しすぎている気がするがしょうがない。事実なので)好きな曲がいっぱいある。昨年は「チ。」の「怪獣」が話題になったが、いつになったらフルが出るのかなと思っている。気長に待ちたいところ。

新宝島はポップでのれる曲だ。私はポップでのれる曲が好きだ。中身とかはどうでもいい。若干捻ってあると大変いい。新宝島は歌詞も良い。エネルギーを感じる。

で、MVはドリフ大爆笑が元ネタなわけだが、よく合っていていいなぁと思っている。何回観ても飽きない。真顔なのがいい。動きがポップなのがまたいい。

 

モス


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モスものれる系の曲でありつつ、歌詞が絶妙に意味不明で好きだ。

MVは大胆にもしばらくずっと繭を映し続ける。これがいい。何が起こってるのかさっぱり分からない。だからこそ妙に惹きつけられてしまう。

 

フレデリック

オドループ


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フレデリックもいい曲ばかりでなんなら全曲好きだ。過去にこのブログでも語っている。

i-my-mine.hatenablog.com

i-my-mine.hatenablog.com

が、どれだけ新曲が出てもどれだけ時間が経っても、やはりオドループが自分の中で最高峰だ。オドループに出会ってフレデリックを聴き始めたので、オドループは自分にとって最初に見た動くもの状態というか……(インプリンティング的な)。

MVもいつまで経っても色褪せない。単純なダンス、なのに妙な中毒性と引力。すごい。

 

Tempalay

大東京万博


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Tempalay、めちゃくちゃ好きなのだが、ブログで過去にちゃんと取り上げていなかったことに気づいて愕然とした。こんなに好きなのに???

Tempalayは独特の音楽、独特の世界観……といった感じのグループだ。万人受けするとは思わないが、ハマる人はすっごくハマると思う。私はハマる側の人。独特の音楽が心地良い。世界を作る、芸術肌のグループだ。

で、MVもめちゃくちゃこだわっている。Tempalayを知ったきっかけがこの「大東京万博」なのだが、spotifyのランダムで聴いて引き込まれ、MVで完全に引っ張られてしまった。なんという世界観。こういう神がかったMVは好きだ。理解できないものというか。こういう造形や配置がよくできるものだなぁと感心する。

 

あびばのんのん


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上で紹介した「大東京万博」で引っ張られ、TempalayのYoutube上のMVを物色し始め、最高に気に入ったのがこの「あびばのんのん」だった。曲は勿論のこと、ストーリーと演出が……。初めて観たときは泣いていた。それから狂ったように延々とリピートしていた。しばらく抜け出せなかった。

 

GHOST WORLD


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これも「あびばのんのん」と同じくらい衝撃的で、同じくらいリピートしたお気に入り曲&MVだ。こう……純粋な綺麗とか、ストレートな美しさとかじゃない。お涙頂戴でもない。のに、あまりにも胸が苦しい!!なんだこれは!!と思うこと間違いなし。

 

Q/憑依さん


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青野くんに触りたいから死にたい」という漫画がある。

穏やかではないタイトルだ。タイトル通り穏やかではない。心がぐちゃぐちゃになるようなお話だ。

で、これがドラマになった際に、W主題歌として作られたのが「Q/憑依さん」。「青野くんに触りたいから死にたい」の中身を知っていると、曲もMVもあまりにも狂気に満ちていてぴったりで良い。ぜひ中身を知ってから観て欲しい&聴いて欲しいが、中身を知らずに観てもインパクトは抜群だと思う。表現力の塊。怖い。美しい。凄まじい。

 

ドライブ・マイ・イデア


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2024年に出た「ドライブ・マイ・イデア」は自分の好きだなと思う所をピンポイントに突いてくるようなMVと曲だった。これも何度リピートしたか分からない。なにがいいの?と聞かれると言語化が難しいのだが、まず歌詞がいい。絶妙な諦め感と希望感のさじ加減が好きだ。言葉遊びも好き。で、MVの作り込み、ストーリー、出てくるモチーフ、若干の残酷さ……が好きなのかも。

 

Tempalayは他にも好き曲が沢山あるのでこれを機に挙げておこう。もし上の曲で気になったら是非聴いてみて欲しい。

  • そなちね
  • どうしよう
  • 新世代
  • シンゴ
  • テレパシー
  • Last Dance
  • 遖(あっぱれ)!!
  • NEHAN
  • とん
  • 月見うどん
  • 預言者

上で紹介した中で比較的好きなMV「そなちね」「どうしよう」「NEHAN」も貼っておく。


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もっとあると思うけど

取り敢えず今思いつくものは全部挙げられた気がする。思い出したらまたその都度記事を書こうかなという気持ち。

ちなみに今回は敢えてボカロは抜いた。ボカロも良い曲良いMVのものがあるが、選び抜くのが難しいので……。

 

上で紹介したものをざっと見てみると、自分はノリがいい曲か、独特な曲か、神々しい曲が好きなのかなという気がする。MVも然り。

もし似たような趣味をお持ちの方がいらっしゃったら是非おすすめ曲なりMVなりを教えて頂きたい。

 

さて、今日は共通テスト追試が終わった日だ。

いつ問題が出るかな。どんな問題かな。楽しみだ。

2025年度大学入試共通テスト 生物 所感

基礎はこっち↓

i-my-mine.hatenablog.com

 

問題はここ↓

kaisoku.kawai-juku.ac.jp

 

では生物、やっていきましょう!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

第1問 PTC感受性とSNP(神経、進化、遺伝子発現)

PTC試験紙、イマドキの受験生は知っているのだろうか……?昔はPTC受容体の感受性が人によって遺伝子の持ち方で違うといって、PTC試験紙なるものを舐めさせられ、苦いとか苦くないとか言ったもので……(遠い目)。今やすっかり聞かれなくなった実験だけれど、実際どれくらいの現場でやられているのだろう。ちなみにPTC感受性が高いと、ブロッコリーが苦く感じられるんだよ~と言われて、ブロッコリーの今感じてる味が既に苦みを含んでいるのか、それとも苦みのないブロッコリーがあの味なのかどっちなんだろう……と思った記憶。自分がどうだったかは忘れてしまった。興味がある人は下のリンク先等が参考になるのではないか?

バイオミディア 苦味のお話

まぁそんなわけでPTCの名前が出てきた瞬間に「あ!!!!!!!!!PTC!!!!!!!!!!!!PTCじゃないか!!!!!!!!!!!!!!!」と謎の懐かしき友に会ったような喜びが湧いてくるという。全然問題の本筋と関係ない。問題自体はPTC感受性の多様性は遺伝子Rの多型(アミノ酸配列を変える)によるものでっせという話で、4種類の対立遺伝子(AAI,AAV,AVI,PAV)について考察していくスタイル。いい題材だね。ていうかやっぱり共通テストって進化好きだね。

問1は味情報を神経興奮で伝達するというところから派生して、神経がどう刺激の強さの情報を伝えるかという問題。超基礎的知識だから何も問題なし。

問2はチンパンジーの遺伝子Rが対立遺伝子PAVと同じ配列だというところから、各対立遺伝子に含まれるSNP1~3を生じる突然変異が起こった順序を考察するというもの。これも特に難しくはない。というか、対立遺伝子の名称が全部アミノ酸の並びを表現しているものだとわかると並び替えがとっても簡単でラク。PAV→AAVAAIAVIという具合。

問3は遺伝子発現に関する基本的な問題+計算問題。これくらいの処理はぱぱっとできないと研究の時に困るのでやればいいと思う。センス鎖とかアンチセンス鎖とか、mRNAの配列や変化とちゃんと結びついて想像できるようになってないとだめだよ。

問4は対立遺伝子を色んな持ち方でした場合(ほとんどホモの表示だが)のPTC感受性を示した上で、考察するというもの。慌ててしまうと何事!?ってなるかもしれないが落ち着いて考えれば結構ストレートでわかりやすい。し、面白いなと思う。こんな風になってたんだなぁ。学び。

 

総評

題材も内容もバランスが良くてとてもよいのではないか!広げ方持って行き方、難易度もかなり好きな部類。知識も要るし考察もいる、冷静さもいる、そう、共通テストはこういうのでいいんだよ系(だと私は思う)。ただ進化の話だから恒例の遺伝子頻度計算が出るかなと構えていたのでそこは予想外だった。来年度出すのかな。

 

第2問 植物のTD酵素による食害応答(タンパク質、バイオテクノロジー、アロステリック酵素

リード文で「ふーんただのタンパク質の話か~」と思っていたら、後半まさかの鱗翅目に対する植物の食害応答の話!!!!!イラスト的にスズメガ幼虫っぽい?しかも個人的にはめちゃくちゃ面白いシステムだと思う。簡潔にまとめると、

幼虫が植物の葉を食べる→植物からTD酵素というトレオニンを有機酸Bに変える酵素が出る→幼虫の腸内でトレオニンが分解されちゃうので成長が抑制される

TD酵素分解で出る有機酸Bは最終的にイソロイシン合成に使われ、イソロイシンがTD酵素をアロステリック阻害する→幼虫の消化管内ではTD酵素のアロステリック部位が部分消化で失われる→幼虫消化管内ではTD酵素がアロステリック制御されない→めちゃくちゃ威力を発揮する!

という話らしい。すごくない?

多分下の論文が出元っぽいので後でちゃんと読んでみたい。

E. Gonzales-Vigil, C.M. Bianchetti, G.N. Phillips, G.A. Howe, Adaptive evolution of threonine deaminase in plant defense against insect herbivores, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.
108 (14) 5897-5902,
https://doi.org/10.1073/pnas.1016157108 (2011).

www.pnas.org

とりあえず問を見ていこう。

問1はただのタンパク質構造周りの知識問題(多少違うものも混じっているが)。特に問題はなさそうでストレート。とはいえ「生徒はこういう風に間違えて覚える場合もありえるのか……!?」と感じられるものもあり、授業内での説明に活かせそうな。

問2はプラスミド導入と選別のシステムを考えるやつ。とはいえかなりストレートな部類のやつなので問題はなさそう。簡単だし。

問3から食害応答!(1)は仮説を立てて、その上での実験結果を予測して穴埋めするというもの。素直でわかりやすいので埋めやすいと思う。(2)がTD酵素がアロステリック酵素であることの説明とともに、幼虫消化管内でその性質が失われる説明がされ、それらをもとにどの説明文が正しいか選ぶという問題。こちらも捻ったものではないので素直に選べると思うが、用語をちゃんと使い分けて理解できていないと足を引っ掛けられる……かも?

 

総評

TD酵素の仕組みがすごすぎてすごい(語彙力)。こんな巧みな仕組みが世には存在しているのだなぁ。難易度的にも特に問題はなさそう。ワクワクする良い題材だった。

 

第3問 2種の草本種の物質生産(生態系、物質生産、若干バイオーム?)

北半球の夏緑樹林の林床の光の強さの季節変化と、2種の草本種の変動についての問題。似たような題材はあれどこのグラフを見るのは初めてな気がする。どこのどの調査結果なんだろう?なんにせよ「新規題材」という感じで、その場でいかにうまく受験生が処理できるかちゃんと測れそうで良さそう。

問1は競争や共存の知識問題。結構ストレートに知識。

問2はグラフを読み取る問題だが、これもかなりストレートな方だと思う。とはいえ前提である「夏緑樹林」という背景と、「林床の光の強さ」が何を示すかが分かってないとどういう状況か理解できないと思うので、知識も動員しつつ考えるいい問題になっていると思う。

問3はクロロフィルとルビスコの量について表を見て考察する問題。穴埋めなので乗っかっていけば普通に答えられる。

問4は個体乾燥重量の季節変化を見て適当な記述を選ぶというもの。今までの問題がちゃんと分かって解けているのであればここでも問題はなさそうだが、一応乾燥重量がどのように決まるかという物質収支のイメージが作れていないと変な間違いをするかもしれない。

 

総評

受験生にとって初めて見る図やグラフをその場で解読しながら考察していく……というタイプの問題で、落ち着いてやれば全く難易度は高くないが焦ると結構怖い問題だろうなと思う。特に今回は夏緑樹林という背景が分かってないとちんぷんかんぷんだったろうなと思う。生物基礎もちゃんとやっておかないとね。

 

第4問 アフリカツメガエルの胚発生

全然新規性はなく、知識と問題集の演習をちゃんとやってればさらさらっと解けちゃうだろうなという内容。ここに来てめちゃくちゃ普通の題材なので拍子抜けした。

問1は卵形成に関する適当記述を選ぶもので、DNA量や核相を卵原細胞の変遷と結びつけられているか確認するもの。ただの知識ではあるが、あの辺はちゃんと理解できていない受験生も多いだろうなという印象なので、もっとこういう問題は出していいのかもしれない。

問2は中胚葉誘導の仕組みについての問い。問題文中では名前が出されていないが、βカテニンとノーダルのやつ。ざっと中胚葉誘導の仕組みを2つのタンパク質の関与で説明したうえで、操作1だとこうなった、操作2だとこうなったと言ってそれらの操作の影響を考えさせるというものだ。別に難しい問題ではないのだけれど純粋に各答えを読むのが面倒。

問3は神経誘導の仕組みを調べる実験を見て、2つのタンパク質の働きを考察するもの。リード文をちゃんと読んだ上で実験もちゃんと見れば答えは絞られるとは思うが、実験の最後で「タンパク質Cとタンパク質Dを加えて培養」したときに表皮組織が分化したというやつが若干気持ち悪い。加えたタンパク質の量の比を教えて欲しいし、予定外胚葉域断片で発現しているタンパク質Cの量が顕著なのかも知りたい(1個目の実験からすると顕著な量出ている気がするが)。なんとなくこの量のイメージが掴めないせいで腑に落ちきらない……。

 

総評

特に新規性はなく、普通の問題だった。最後の問題だけ消化不良。

 

第5問

A 北海道でのイネ栽培(種子発芽、花芽形成、遺伝、植物発生)

リード文でまずへ~となった。明治初期、北海道では本州から持ち込んだイネからコメが収穫できなくて、その後別の品種である「赤毛」を用いたら収穫できるようになったという。赤毛は発芽~開花までの期間が短いことが原因で北海道で成功したらしく、ここから「ゆめぴりか」とかが産まれてきたらしい。知らなかった。

問1は種子発芽の仕組みの穴埋め。めちゃくちゃ普通の知識。

問2は本州イネと北海道イネのフロリゲンmRNAを色んな明期の長さで育てて測定した結果から、北海道イネがなぜ北海道で成功したか考えるというもの。これは面白い。グラフを見ると、見事に北海道イネは明期の長さ関係なくフロリゲンmRNAがめっちゃできてる。本州イネは明期が長いとフロリゲンmRNAができないから、短日型で、日が短くなってこないと=秋にならないと花芽ができない。一方北海道イネは明期が長くてもフロリゲンmRNAができるから、日が短くなる秋を待たずとも花芽が形成されるというシステムだとわかる。

問3は品種改良にからめ、純系である「ゆめぴりか」の遺伝情報や染色体に関する記述を考える問題。これもよくできている。が、1番は「適当」としていいのか????1番は、「ゆめぴりか」で作られる花粉と胚の遺伝情報が同一である……という文章だ。「遺伝情報が同一である」と言うとき、DNA量については考慮しないのか?花粉は発芽していないときは花粉管核、雄原細胞からなるので花粉全体で見ると相同染色体は2本ずつになる。胚は勿論相同染色体2本ずつもつ。のでこのときは一致していると見てもいいが、発芽した花粉は花粉管管と精細胞2つ、つまり相同染色体は3本ずつになる。この問題文では「花粉」とのみ触れられているが、発芽しているものもしていないものもどちらも花粉としたときに、発芽した花粉の遺伝情報も胚と同一であると言い切っていいのだろうか。それとも慣例的に「花粉」と言った場合には発芽したものは含めないのか。それとも相同染色体の本数に関わらず、すべての塩基配列が一致しているのならば1本だろうが3本だろうが「遺伝情報が同一である」とするのだろうか。「遺伝情報が同一」ってなんだ?????????わからなくなってきた。普通に暮らしていれば例えば一卵性双生児は「遺伝情報が同一」という。無性生殖の場合も「遺伝情報が同一」というだろう。私は今までこれらの表現に対し「塩基配列が一致し、核に含まれる染色体数も一致する(DNA量が一致する)」ものだと勝手に思っていたが、果たして……。わからなくなってきた。もうだめだ。誰か教えて下さい。

 

B ラッカセイの種子形成(屈性)

題材が面白い!!!!ラッカセイってどうして落下するんだろうと思っていたが、こんなところで学ぶとは……。

問4はラッカセイに対していくつか実験をして、重力屈性に関して調べるというもの。子房でオーキシンを作るのが大事で、子房柄でそのオーキシンの分布が移動させられる感じなんだなぁ。面白い。

問5はラッカセイの茎と子房柄での重力屈性の仕組みを考えるというもの。文章に乗っかって埋めていけばいいだけな上に、前半についてはただの知識なので特に難しさはないが、実際のところラッカセイでは何が起きているのだろうと気になる最後である。ので調べてみた。日本植物生理学会がドンピシャの答えを出していたので引用させて頂く。

そこで、ラッカセイの子房柄ではどうなっているか研究されました。その研究によりますと、ラッカセイの子房柄を地面と平行になるように置いた場合、伸長生長の盛んな部位の下側の組織より上側の組織にIAAが多く分布することで、上側の組織の生長が下側より大きいために下側に向かって屈曲するということです。どの植物の場合も成長の盛んな領域の上側と下側でIAAの偏在がおきることで、生長の大きさに差異が生じ、伸長の大きい側とは反対側に屈曲が起きることは同じです。しかし、植物によってIAAが下側に多く分布するか、上側に多く分布するかの違いがでるのはどのようにしてかは、これから調べる必要のある問題です。

jspp.org

オーキシンが重力に逆らって分布するのは、オーキシンの極性移動(PINの配置とか)について知っていればそこまで受け入れ難い話ではない。ありそうだなという印象だけど、なぜラッカセイの子房柄のピンポイントな場所でだけ移動方向をひっくり返すようにしているのかは非常に興味深い。どうしてそんなことになったのだろう。どんな遺伝子に突然変異が入るとこうなるのか……謎。なんにせよ面白いなぁ。というか、今まで不思議だなって思っていたんだからもっと早く調べたら良かったのに。反省。

 

総評

題材はどちらも面白いし、内容もいいのだが、やはり問3でもやもやする。

 

完走の感想

今回の共通テスト生物は比較的穏やかでいい感じだったのではという気がする。めちゃくちゃ難しい問題もなく、知識が全然要らないわけでもなく、文章量が異常に多いわけでもなく、物凄く引っかかる表現があるわけでもなく……「適度」な印象を受ける。題材も(アフリカツメガエルはありきたりだったが)良いものを引っ張ってきているなと思う。個人的にはTD酵素、コメ、ラッカセイが好きだった。PTCも好きだよ。問題の展開も納得感があって良かった。ときめきのある試験だった。

全体を通して見ると、今年は実験デザインがないなという印象を受ける。生物基礎では出ていたし、生物でも毎年頑張ってる気がしたけど……。実験を作り上げるというのも大事な技能のひとつだと思うので、共通テストらしさを発揮するためにも入っていてくれるといいのだが。

それにしても遺伝子頻度計算がなかったのは意外だ。来年度出るんだろうなぁと勝手に思うなど。

 

ということで、あくまで個人的な意見と感想を書き連ねさせて頂きました。違うことを思っていただいても全然構いません。「私はこう感じた」というだけなので、そこはご了承ください。

 

追試はどんな問題が出るか今から楽しみです!

2025年度大学入試共通テスト 生物基礎 所感

今年もやってきた共通テスト!受験生の皆様お疲れ様でした!!!

問題が公開されたので例年通り生物基礎・生物を解いて所感を書き留めようと思います!!!

 

問題とこたえはここで見れます↓

kaisoku.kawai-juku.ac.jp

 

 

第1問

A 気管の構造(細胞、遺伝子、細胞分裂

いきなり気管の構造の話が出たので、「もしかして物理的防御!?免疫からスタート!?!?!?」と思いきや、予想の斜め上の問題群だった。問題の内容は難しいものではないけれど、よくこのリード文からこの横断的な問題群を考えたなぁという感じ。

問1ではまた「同化」「異化」を出しているが、「同化」「異化」については正直まだ出すんだ……?という気持ちが強い。いつかの年で「同化」「異化」という言葉の意味そのものに関わる問題を出すのは本当に意義があるのか、みたいな議論があった気がするんだけどどうなったんだろうか。個人的には「同化」「異化」は概念としては必要だと思うがこの言葉だと括りにくい現象もあるよなという印象で、すべての生体内化学反応が同化、異化に分別されるような印象付けはあまり良くないのではないかな、と思わないでもない。議論があったかどうかすらうろ覚えなのでここで長々話しても意味がないのだが……。問1自体は普通に成立しているし、問1の同化・異化の問い自体には別に文句はない。

問3については、DNAまたはmRNA上で「アミノ酸配列を指定する塩基(対)数」に対しできてくるアミノ酸数を計算する問題であったが、「アミノ酸配列を指定する塩基(対)数」という表現がこう……絶妙だなと。終止コドンは「アミノ酸配列を指定する塩基(対)数」には入らない(アミノ酸を指定しないから)という読解で解けばいいだけなのだが、とはいえ終止コドンだって「アミノ酸配列を指定する塩基(対)」ではあるんじゃない?という気も若干してきて(ここで配列を止めます!という意味で)、こう、もやっと……。二次試験でフリーで数字を書くとなったらこの表現はかなり悩みそうな。私だけか?

追記:X(Twitter)上でアンケートをとってみた。結果は終止コドンを入れるのが53.1%、入れないのが46.9%(64人回答)。終止コドン入れる方が若干多いが、どちらともとれる表現としてみてよさそう。つまりこの表現はやっぱりダメでは???

 

 

B タンポポの根から生じる栄養生殖(分化、代謝

タンポポの地上部をちぎると根から分化が生じて地上部が復活するよという話。題材はとても身近な上に、生物基礎のみの履修者だとあまり扱われる機会もなさそうなので良いと思う。生物をやってしまっているとどうしてもカルス!脱分化!!みたいな気持ちになってしまう。

問4では切断前の根の細胞について再生現象からわかることを選ぶ問題だが、選択肢を眺めていてふたつ素直な疑問が(問題は解ける)。ひとつめは、「葉緑体をつくる能力を失っていない」という文章について、そういえば植物の根って葉緑体はあるのだろうか、ないのだろうか。色的には白いが、これは葉緑体やそれに関連する構造物が一切ないのか、それとも白色体みたいな形で葉緑体になり得るものは保存されているのだろうか。なんとなく後者な気がする(植物細胞が無から葉緑体を作っていくとはあまり思えない……?葉緑体遺伝するくらいだし……?)けど、ちゃんと調べたい。もうひとつの疑問はほぼ同じ話なのだが、「光があたると酸素を発生する」という選択肢について。根は本当に光合成しないのだろうか?根を抜いて光を当てていたら光合成するようになったりして。普通に実験してみたい。

問5は恒例の実験デザイン問題。面白いなと思った。生徒が計画していたら間違いなくなんらかの賞がとれそうな。実際にそういう実験があるのかな、と思って軽く調べてみたらこれかな?というものを見つけた。中身が見られないので本当かどうかは分からない。

jglobal.jst.go.jp

 

総評

題材の新規性・身近さ的にも、難易度的にも、内容的にもバランスはかなりいい気がする。THE・共通テスト生物基礎、って感じ。問3は要審議か?実験デザイン問題は毎回よく考えるなぁという印象。

 

第2問

A ペダル漕ぎ運動(体内環境調節)

題材自体は「へーこんな感じで変わるんだ」という面白さがある。

問1は④の選択肢だけ異質でちょっと笑ってしまった。①②③は交感神経と副交感神経を学んだ際に並列される内容からとってきているが、④は普通そこに並べられない気がする。血糖調節のところで学ぶかな?だから別に問題はないのだが。なんとなくアクロバティックな出題の仕方だ。

問2はグラフからわかることを答える系なのだが、個人的には「心拍数は運動負荷の大きさを示す目安に本当になり得るか?」と「呼吸数と心拍数が多い=からだに供給される酸素量が多いは自明にしていいのか?」というのが若干気になる。素直に考えれば別に問題ないし、教科書では自律神経系による心拍制御のところで血中酸素濃度を上げるために心拍を上げる例も出しているので自明ということで良さそうな気もするが……。うーん、ただのいちゃもんか……。

 

B エイズ(免疫)

ありきたりなエイズが題材。問4の出題もただの知識。

問5については「予防接種を行うと、体内での病原体Aの増殖を防ぐことができるようになる」が正解になっているが、実際のところ増殖は防げているのだろうか。予防接種をしていない場合よりは防げているとは思うが。なんだかこの文章は違和感がある。予防接種がなくても増殖は防げるし(最終的には)?予防接種をしていても増殖現象がなくなるわけではないし(つまり防ぎきれているわけではないし)?これ答えにしちゃって大丈夫なのかな。

問6は予防接種で抗体量がどうなるかを3歳未満と7歳以上で比べた図を見て考察するもの。全然上がり方が違うのは面白い。答えは結構ストレートでひねりがない。

 

総評

題材的にも内容的にも第1問よりは劣るかなという気がした。知識を比較的ストレートに聞く問題が多い印象?考察もストレートだし。問5については要検討だと思う。もやもやする。

 

第3問

A マッコウクジラの死体処理(生態系)

こういう会話をクジラ標本展示の前でできる関係っていいなと思いつつ、12頭のマッコウクジラ死体を海底に埋めるってどんな大変さなんだろうと思いつつ。鯨骨生物群集の話をもっと膨らませてくれたら私が嬉しいなと思いつつ……。

問1は知識。

問2は遺骸分解が遅い生態系の直接理由を選ぶものだが、「光合成を行う生物の総量が少ない」場合は分解速度はどうなるのだろう(直接ではないので解答からは外れるとは思うが)。遺骸を分解することで有機物は得られるから、光合成で得られる有機物の量が少なくても多くても分解速度に影響しないのか?それとも光合成で得られる有機物がない方が、遺骸から有機物を得るようになるので分解速度が増加するのか?それともそれとも光合成による栄養塩の取り込みや酸素供給等がなければ、そこが律速になって分解者の働きが遅くなるので遺骸分解速度は低下するのか?うーん、わからない。誰か答えを教えて欲しい。

問3はエネルギーと物質の循環だが、生物基礎からは窒素循環と炭素循環がもうなくなってしまっていて生物に移動しているはずなので、③④について受験生はぼんやり選ぶことになるのだろうなぁと思った。生物基礎で窒素循環と炭素循環、やったほうがいいと未だに思ってるんだけど。その方が具体的にイメージできるじゃない?ねぇ……。

 

B バイオーム

リード文は非常に簡素なバイオームについての記述なのだが、問4でいきなり世界の陸地を横断し始めてびびった。知ってても解けるし論理的にも導けるけど心臓に悪いよ。まぁでもこういうのが共通テスト的なのかな……。丸暗記じゃなくて考える、みたいな。

問5は日本のバイオームについて正しい文章を選ぶものだが、なんていうかこう……ちょっとやらしい問題だなという気がする。捻った問題のつもりなのか、日本の細かい状況をちゃんと把握できてるでしょという素直な問題なのか、出題者の意図は分からないが、重箱の隅をつつく感じで若干不安になる選択肢たちだ。もっと面白い問いか正面からの方が好きだ。

 

総評

Aの題材は面白いとは思ったが問題内容については上で述べた通り。「光合成を行う生物の総量が少ない」場合は分解速度はどうなるんですかね……誰か教えて下さい……。

 

完走の感想

難易度は例年並み、中身の雰囲気も例年並みという感じで、まぁ共通テスト生物基礎ってこんな感じだよねというのがだいぶできてきたというか、落ち着いてきた気がする(生物基礎は最初から比較的落ち着いていたともいう)。新規題材もあるけれどそれが物凄く尾を引くことはなく、結局中身の問いは教科書で学んだこと、問題集で解いたことをベースに解ける。実験デザインとかもそう。焦らず知識と学んだ考え方を総動員すればいける、って感じ。ちゃんと細かいところまで覚えておかないと足元すくわれるし、細かいところまで覚えないと結局考える力もついてこないから、生物基礎はとにかく教科書内容ちゃんと覚えてちゃんと読み込んでちゃんと理解して問題集解いとけばいける、って気がするなぁ。

というのが基本の感想で、もう少し踏み込むと随所で「???」となるところがあったので(全部上で書き出したが)その微妙なつっかかり感がなくなるといいなぁと思う。本題とは違うところで頭が回って筆が止まってしまう。ストレスフリーで、純粋に考えるべきところだけで考える問題になるよう努力している跡は大いに見られるが(表現とか、情報の提供の仕方とか)、その努力をより一層して欲しいなという印象かな……。

 

ということで生物基礎はこんな感じ!

次回は生物の方を書きます!!!!