あいまいまいんの生物学

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本「放射光が解き明かす驚異のナノ世界」の紹介

「放射光って何?」という疑問を抱き、物理の先生と話をしていたところ、

「この本を読むと放射光について大体分かるから面白いよ!」と貸していただいたので、読んでみた次第です。

 

そもそも放射光というのは、超真空中で電荷を加速する装置(加速器)から得られる光です。

真空中に取り出された電子が加速器においてほぼ光速まで加速し、電子の進路に対して垂直に磁場をかけると、軌道が水平方向に曲げられます。その際電子進行方向の接線方向に放射される光が「放射光」です。

放射光は赤外線からX線領域にわたる幅広い波長範囲の光で、「高輝度光源」でもあります。高輝度ということは、狭い範囲を非常に明るく照らす光だということです。

 

○なぜ光速まで加速された電子が進路方向を曲げた時、波長が短くかつ高輝度な放射光が接線方向に出てくるのか?
これは特殊相対性理論が関わってきます。

特殊相対性理論とは、簡単に言うと、光速よりも速いものはないし光は常に光速である、という原則のもとに考えていくと、時間や空間が相対的なものであるということに繋がる・・・というような理論です。
光速近くの早さで進む宇宙船を考えます。
宇宙船の中でストロボ撮影を行うことを想定しましょう。
宇宙船の中ではストロボは光速で進むので一瞬で被写体を光らせます。
しかし地上からこの様子を観察すると、ストロボの光が進む時宇宙船も高速近くで同方向に進むため、中々被写体に到達しません。
しかし光速はどちらも「同じ」のはずだとすると、これは地上の方が時間の長さが長く経過している、ということ
すなわち地球の方が時計の進み方が速いということを示しています。
ここで、全ての物の長さというのは 長さ=速度×時間 で表すことが可能なので、
速度の部分が光速で地上でも宇宙でも一緒なのだとすると
宇宙では時間も長さも「短い」
地上では時間も長さも「長い」という風になります。
 

さて、光速近くで走る電子は「宇宙船」として置き換えられ、この電子から見る磁場は本来よりも短く見えます。短い磁場の周期で曲げられる分、放射光の波長も短くなります。
更にここに「ドップラー効果」も加わります。救急車と音の関係が、電子と光の関係と同じです。進む方向では電子の波長は短くなります。
結果的に二つの効果のトータルで放射光は短くなる!ということだそう。

高輝度については説明するのが難しい。

放射光で測定できるのは
①物質中の原子配置と分布(散乱と回折)
②物質中の原子の種類や電子の状態(吸収・蛍光・光電子効果などの分光法)
③物質の内部構造(顕微鏡・イメージング)
④物質中の揺らぎや格子振動(非弾性散乱)
など。
特に③については、特定元素が特定波長のみ吸収する性質を使えば元素分布の把握なんてこともできますし、
「顕微鏡の分解能は試料に当てる波の波長の半分まで」と言われますから、短いX線を当てればとても小さいものが観察可能になるわけです。
色々なトピックスが挙げられていましたが、個人的に一番興奮したのはウィドマンシュテッテン構造の成分が放射光によって状態解明されたってところでした。
ウィドマンシュテッテン構造は鉄隕石の中にしか見られない、100万年に1℃ずつ冷える環境で形成される構造だと言われています。
これは鉄とニッケルでできているのですが、放射光での解析の結果、
・磁石のN極とN極が互いに向き合うという構造
・地球には存在しない「テトラテーナイト」という鉄ニッケル合金
だと判明したそうです。かっこいい!!