シマウマのしまはなんのため(復習)
前回のまいばいおで紹介した「シマウマの縞模様の効果」の仮説は以下のようなものでした。 i-my-mine.hatenablog.com
➀ 捕食者が狩りの獲物とする個体を識別しにくくするため
➁ 仲間同士を見分けるため
➂ 体温調節のため
➃ 虫除けのため ← 今回は➃ の検証です!
➃ の検証
ツェツェバエは血を吸うだけでなく、病気の媒介もする虫ですので、この虫を除けることができればとても生存に有利になります。
ここで、
- サバンナシマウマ
- グレビーシマウマ(より縞が細かいシマウマ)
- 黒の馬
- 茶の馬
の、全て同じ形をした柄以外均質なボードを用意します。
そのボードの横に捕虫器を置き、しばらく置いてからどのボードに虫がどれだけ集まったか数えます。
結果、全身一色のものよりも縞模様の馬のボードの方がツェツェバエが捕虫されませんでした。
サバンナシマウマとグレビーシマウマの比較では、グレビーシマウマの方が捕虫される数が少ないという結果が出ました。
このデータと、実際の分布としてシマウマとツェツェバエの生息地域が地理的に重複することなどから、現在➃ の仮説は有力視されています。
ただ、どうしてツェツェバエが縞模様を避けるのかについては分かっておらず、ここから研究されていくものになります。
「生物の形態や生理的特徴には意味がある」とあっさり言いますが、実例を見てみると意外な役立ち方をする物もあるんだなぁと思いますよね。
シマウマのしまはどうやって作られるのだろう
さてこのシマウマの縞模様、実は遺伝子に組み込まれた設計図に基づいて作られているのではなく、
なんと「自動的に」「自然と」模様ができてしまう、ということが明らかになっています。
DNAにはどういう縞をどこに配置する、という情報は一切ないんですね。]
他の生物の模様も同じ仕組みを使っていると言われています。
その共通する仕組みのキーワードが「チューリング波」という「数式で表される波」です。
チューリングはイギリスの天才数学者で、60年前に生物の模様に関する仮説を数式で表した人物です。その数式がこちら。
この数式は何を示しているのでしょう?
具体的に考えます。
まず、二つの物質AとBを仮定します。
Aは自身の合成を促進しつつ、Bの合成も促進する能力を持ちます。
BはAの合成を抑制する能力をもち、二つの物質はその合成量に対し影響し合います。
しかし両者は拡散速度が異なり、Aは遅くBは速いとしましょう。
すると、AとBの濃度がある特定パターンを生み出すようになるのです。
そして、その濃度に対応して細胞から色素が合成されるか否かが決まれば、模様が生まれてくるという考えです。
この数式が実際に生物の模様における制御を表現していることを証明したのが、大阪大学の近藤滋教授です。
近藤教授は35歳のとき、タテジマキンチャクダイと呼ばれる魚を使って、縞の増え方や模様の動き方を観察し、それらがチューリングの理論通りに起こっていることを確かめました。
成長とともに増える縞の数とそのコンピュータ・シミュレーション。
タテジマキンチャクダイ(F、生後10ヶ月の時期)のⅡの部分の模様は、成長とともにA→B→C→D→Eのように変化した。中央の部分で4本の縞がやがて5本になる。a→b→c→d→eは、そのコンピュータ・シミュレーション。本物とまったく同じパターンができている。GからI(FのⅠの部分を観察)では、2本の縞の分岐点が次第に頭の方向へ移動するのがわかる。gからiはそのシミュレーション。(B)Aから30日後、(C)50日後、(D)75日後、(E)90日後、(H)Gから2ヵ月後、(I)3ヵ月後。
生物と波の関係は深く、例えば生体時計なども「波」を描き出す周期的な分子の量の変化によって作られています。
なんだか神秘的だと思いませんか??
ちなみに
近藤繁教授の本はとっても面白いしおすすめです!
「波紋と螺旋とフィボナッチ」という本なんですが、つい最近文庫本版も出ました。