生物教員として授業をやるとき、難しいなぁと常々思っていたのが「カエルの発生」のところでした。
カエルの発生は、所謂受精卵からカエルの形にどうやってなっていくの?という所なんですが
教科書の図は発生段階ごとに切り口や見る方向が変わっていて、立体的なイメージが掴みにくいんですよね。
授業でも、やっぱり生徒の中に立体イメージを作らせるのが難しくて、個人的にはかなり苦労しています。
頑張って余すところなく伝えた!と思っても、大抵最初から全て拾ってくれるわけないしね。
立体イメージを作るための工夫は色々世にあります。
例えば模型。これはドンピシャで便利です。粘土で自分で作る、みたいな試みもありますよね。
ですが、粘土をこねるのは時間がかかるし、準備も片付けも大変。
模型は大抵学校に一個しかないので、全生徒が見えるか……?というと、30人40人を一気に教えるときは難しい。コロナの時代ではクラス内で回すのも険しいです。
あとは動画や平面図で頑張るやつ。でもなんかイマイチ効果が低い。
色んな試みを自分もしてきましたが、説明下手だからなのか、全然生徒にうまく概念を形成させられませんでした。
そこで思った。
最近の3D技術を使えば解決するのでは!?
3Dでカエルの胚断面図を作っちゃって、それを定点カメラで同じ向きでずっと観察できるようにすれば、ちょっとはわかりやすくなるんじゃない!?
ですが、世の動画とかを調べてみると、今の所そういうのはなさそうなんですね。
なので、自分でやってみることにしました。
3Dモデリング完全初心者なので……
やってみるぞ!と思ったはいいものの、自分は全く3Dモデリングを触ったことがありませんでした。
そこでまずは3Dモデリングのソフトから検索。
色々あるらしいけれど、Blenderというものがいいらしいので、Blenderをダウンロードしました。
ダウンロードできたので、よっしゃ作るぞ!と思ったのですが……
全然操作方法がわからん!!!!!!!!!!!!
「なんか適当にやればできるっしょ!」と思ったのが大間違い。
Blenderは自由度が高い分、色んなことができちゃうんですが、その分色んなことが分離しているので、それぞれどうやったら実現できるのか考えなきゃいけないんですね。
加えてそれらに各々操作方法があるので、覚えないとたどり着けない……
つまり、完全初心者が「こんな感じ?雰囲気?にしたいな!」なんて思ってもそうはならんのじゃ。
てことで、Blenderについてまずは学ぶ必要がありまして。
検索したら、素晴らしい解説書が公開されていました。
最近は色んな大学で素晴らしい教材を無償提供してくれていてすごいね。
これを使ってまずは勉強しました。
ただ読むだけだと簡単そうなのに、実際同じように操作しようとすると全然うまくいかなくて笑う。
そういうところから新たな学びがあったりするのですが……
で、この基礎を参考にしつつ、最初に作ったのがこちら。
カエルだよ。めちゃ苦労しながら作りました。粗いけど。
(本当はアフリカツメガエルぽくない方がいいんだろうけど、当時の技術では普通のカエルは作れなかったよ……)
胚についても、基礎を中心に自分が考えるようにまずやってみて、
やってみると大抵何かが駄目で、え~なんで~とか不便だな~ってなったら調べて、
調べると大抵知見がどこかにあるのでそれを参考に練り直して、
うまくいかなかったら違うアプローチで目的が達成できないかモデル作成手順から考えて、
実験もして……
なんてことを延々と5日間くらい繰り返してですね。
もう泣きそうだった。めっちゃ大変だったもん。
幾つもの胚らしきものが死んで葬られていきました。尊い犠牲だね。
特に困ったのが、「空洞がある断面図」の作成なんですね。
最初は、
- 3Dの胚(完全体)を作る
- 色んな面で切断できるようにする
というものを想定していたんですが、思ったように作れないんです。
そもそも中身が色々複雑に入り組んだ胚の完全体を無から作るのが険しい。
だから思い込み(これは生命体で胚なんだ!という気持ち)を捨てて、この物体を作るアプローチや手順を考える必要がありました。
もう毎日毎日隙間時間に常に考えました笑
お風呂に入ってるときも、布団に入ったときも、料理してるときも、「こうやったらいけるのでは」「こうやってみるか」「ここがだめだった理由は多分こういうことなのでは……」「あのBlenderの操作はこういうことを起こすものだったのではないか」みたいな……
特にBlenderが3Dモデルを作成するときや操作を施すとき、何にどういう作用を与えているかはめちゃくちゃ考える必要がありましたね。数多のHPにお世話になりながらBlender観が蓄積されていった気がします。Blender関係のHPを作ってくれている方々、本当にありがとうございました。
遂に一応の完成!
そんなこんなでヒイコラ言いながら、なんとかそれっぽい形にこぎつけました。下のリンク先でPDFをDLできます。
今後の方針としては、
- 原腸胚の時のつなぎがあらめなので、カット数を増やす
- このままだと「どの切断面を見よう!?」という感じで初見の人は視野がぶれると思うので、一つの切断面に特化したビデオを作成する必要もある気がする
- 部位の名称を書き込みたい(特に胞胚腔と原腸)
- 水平面(横断面)の断面について下半身側しか見えていないので、上半身もあるといいかも?
- おしり側の変化が見えないので、おしりに特化した動画もあるといいかも
などと考えています。あとは、大抵の教科書が原口を右側に置いていて、動画だと左側にしてしまっているので、逆転させてもいいかもしれないなと思ったり。
作るのめちゃくちゃ大変だったので、なんとかいい感じの物に作り上げたいです……(活用できそうなのか今の所わからないけれど……)。
Blenderについてのアドバイスや、胚発生について「こうしたらもっといいかも」という提案があれば送って頂けたらありがたいです。お気づきの点がありましたらコメント欄等で教えて下さい。
応援もしてくれると嬉しいです。割と辛いので(泣
あとは、他にこういう教材を作ってみたら?とか、こういうところが授業で難しいと思った、というような意見も募集しています(高校生~大人まで誰でも!)。