あいまいまいんの生物学

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まいばいお13 おさけ

新学期が始まって慌ただしい一週間でして…

ちょっと体調不良も伴い更新できませんでした。

いや~日が短くなってくると5時15分起床きついです。あからさまに日の光がないときつい。

光大事だな~と思う今日このごろですね。

つらすぎて一週間ずっと頭痛くて死にそうでした。でも生徒はかわいいから頑張ってしまうというね。

うまくやっていきたいものだ。

 

 

 

✿お酒を飲むと何が起こる?

お酒は不思議な液体ですね。

お酒を飲むと笑い上戸になったり、泣き上戸になったり、キス魔になったり、性格変化したり…と、まぁ凄いです。あの液体はすごい。

お酒を飲んでいる最中に起こる性格の変化は、細胞レベル、いや、タンパク質レベルで説明することができますよ、という話を今日はしようと思います。

 

✿お酒の主成分「エタノール

お酒の「酔い」の状態を作る鍵となる成分はエタノールです。

エタノールはさまざまな受容体に結合し、はたらきを変化させることが知られています。

ざっと列挙すると…
・GABAA受容体応答の昂進
グリシン受容体応答の昂進
セロトニン受容体応答の昂進
・NMDA受容体の阻害
こんな感じです。

以下で詳しく見ていきます。

 

✿キーワードは「神経伝達物質」と「受容体」

楽しかったり、悲しかったり、ヒトは色々な感情や行動の変化が起こりますが、それらは脳を構成する神経細胞の連絡の仕方が変化することによって起こります。

神経細胞同士の連絡方法の一つに、「神経伝達物質」というものを使う方法があります。

 

神経伝達物質には複数種あり、どれを用いるかにより引き起こす作用が変わります(下図)。

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神経伝達物質は、情報を受け取る側の細胞膜上にある「受容体」と呼ばれるタンパク質に結合することで自分の作用を発揮できます。

この神経伝達物質と受容体のくっつく組み合わせは決まっていますが、神経伝達物質以外のものが受容体に結合すると、本来神経伝達物質が引き起こす作用を再現できたり、または抑制できたりします。

 

✿とにかく「抑える」方向にエタノールははたらく

GABAA受容体は、本来神経伝達物質であるGABAが結合する受容体で、これは神経細胞の情報伝達を抑える作用を起こします。

つまり「鈍い」状態になります。

グリシン受容体、セロトニン受容体もGABAA受容体に似た作用を起こす受容体です。

これら受容体の応答が昂進されるということは、とても鈍い状態になるということです。

 

さらにエタノールがはたらくNMDA受容体は、敏感に応答するために必要な受容体で、かつ長期記憶形成に必要であると考えられています。

これが阻害されるということは、よりいっそう鈍いだけでなく、長期記憶も作られなくなってしまうのです。

「お酒の席での約束事は当てにならない」とか、「お酒を飲んでいる最中のことを覚えていない」とか、そういうことが聞かれるのはNMDA受容体の阻害のせいだと考えられています。

 

✿お酒への「強い」「弱い」は二つの遺伝子で決まっている

お酒に強いという状態は、無論エタノールの分解が体内で速やかに行われることと同じです。

エタノールの分解には、アルコール脱水素酵素(ADH)とアルデヒド脱水素酵素(ALDH)という二つのタンパク質が関与しています。

 

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上図で見られるように、基本エタノールはまずADHによってアセトアルデヒドに分解されます。

そしてアセトアルデヒドにALDHが働きかけると酢酸に分解され、その後は呼吸基質としてATPを作るために使われていきます。

ADHの働きが弱いとエタノールが長く残り、上で述べてきたような効果が重くなります。

一方ALDHの働きが弱いとアセトアルデヒドが長く残ることになりますが、こちらは二日酔いの症状を重くすることに繋がります。

このように、ADHとALDHそれぞれの設計図である遺伝子が、強いタイプをコードするものか弱いタイプをコードするものかによって、その人のお酒の強さが分かるのです。

 

特にALDHの一種:ALDH2については、2タイプの遺伝子が存在します。

良く分解する酵素を作る遺伝子Gと、

分解能力が遺伝子Gの作るALDH2に比べ1/16しかない酵素を作る遺伝子Aです。

ヒトはある形質に対し二つずつ遺伝子を持てるので、GGタイプ、GAタイプ、AAタイプのヒトが存在します。

AAタイプは全くエタノールが分解できず飲めません。

 

驚くべきはなんとこの遺伝子A、モンゴロイドにしか存在しません。

黒人や白人は皆、GGタイプなんです。

日本人はモンゴロイドで、GGタイプが56%、GAタイプが40%、AAタイプが4%存在します。

今の時代は国境を超えた結婚も普通なので、一概に言えないようになってきているとは思いますが…

 

これらのお酒の強さに関する情報は、遺伝子検査を行うことで検出可能です。

私も昔、自分の髪の毛を使って自分でPCR電気泳動によって検査したことがあります!私はGAタイプでした。微妙…

実際お酒については飲んでいる時に酔うことはないけど、絶対次の日お腹を下すというタイプです。つらいです。

 

ということで、今回はこれくらいで~