あいまいまいんの生物学

あいまいまいんの生物学

生物学が好き。勉強したり遊んだり。

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勉強して面白かった話

授業で使えそうな生物学の知識・雑談・小ネタ

などなどを紹介していきたいと思います

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生物広報誌 冊子化計画①

ここ3年間、現赴任校でずっと書き溜めた生物広報誌「まいバイオ」なるものがあります。

実は自分のサイトでも細々とPDFを公開してたりするのですが……。

sites.google.com


 

最初はただ「生徒に面白いネタを提供しよう!」という目的でやっていたのですが、

最近色んな人からありがたいことに「書籍化しないの?」「一度本にしたら?」という声をかけて頂けます……

自分は「またまた~w」と冗談らしく受け流していたのですが、普通に見返してみると3年間で80回分以上、

自分のストックも含めると回は150を有に超え、軽く見積もっても合計300ページを超える文章を書いているんですよね……

これはさすがと冊子化してみてもいいんじゃないか?

っていうかここまで頑張ったんだし自己満足で本みたいにまとめて一個持っててもいいんじゃないか??

と思い、ちょっと真面目に検討をしてみることにしました。

 

 

思い立った1日目

とはいえ完全に初心者で、一度も本なんか作ったことないので、まずは調べる所からだな……と思い。

取り敢えず「本を作りたい」とか「同人誌 作り方」とかで検索した所、栄光さんとかOneBooksさんがヒットしました。

www.eikou.com

https://red-train.co.jp/

栄光さんの丁寧さが半端ない分、初心者には受け止めきれないほどの情報量がどわっと入ってきたので、軽くパニックになりました笑

そもそも印刷の種類もわからん、紙ってこんな種類あるの!?ていうかkgって何!?どれくらいの部数刷るか決めなきゃいけないの、CMYKってなんや、etc……

あまりにも混乱しましたが、まぁ大抵のことって慣れてこれば分かるようになるじゃないですか?

なので、栄光さんの資料取り寄せのサービスを活用させて頂き、紙の見本とか、はじめての入稿の仕方とか、加工のあれこれとか、取り敢えず何か役に立ちそうなものを注文させて頂きました。

www.eikou.com

2日後にはポストに届いてた。なんという速さでしょう。

資料を無料提供してくれるだけでも凄いのに、速さも凄いなんて栄光さんって凄いんだね(語彙力がない)。

 

体調ゲロゲロの2日目

次の日は完全に体調を崩し、ほぼ何もできなかったのですが、

Twitterで「本を作ろっかなって思ってて……」ということをぼそっと呟いたら、優秀なフォロワーの方々のご助言を大量に得ることができました。

 

 

ありがたや……

素晴らしい方々からの助言により、 

  • 紙のpp加工をかける場合標準のコート紙や印刷所のおすすめで大丈夫
  • 200p以上だったら重いので紙を軽めでいい感じのやつに変更しなければならない
  • 鈍器本(200ページとかの)をいきなり作るのはやばいので初回は取り敢えずちょこっとだけにした方がよい。一部の記事のみ取り上げたセレクション本にする。

等の方針が見えてきました!remonさんとAyaneさん、この場を借りてお礼を申し上げます……!!!!!やはり経験者は凄い。し、心強い。

 

あとはTwitter上で複数の方から「冊子読みたい!」という声も頂けて、これもありがたやありがたや……益々やる気になってきました。ていうかもうやらなきゃだめだ。引き返せねぇ。やってやるぜ。

 

具体を決めだす3日目

午前中はやらねばならぬことがあったのでそちらに時間を割き、午後にゆるゆるとまた本作りについて考え始めました。

この時点でもうほとんど紙の種類などはご助言のおかげで決まっていたので(中身は90kg上質とかいうやつ、表紙はおすすめで!という雑な決定) 、あとは

  • 何部発注するか
  • 何ページのものにするか
  • 表紙をどうするか
  • 中身をどうするか(どの記事を選ぶのか、新たになにか書くのか)
  • どの会社にするか
  • どういう注文形態にするか(カラー、モノクロ、印刷手法etc……)

というくらいかなとこの時点で見えている課題点を挙げ。

何ページかと何部かと会社、注文形態について先に決めないと、中身を具体化することもできなさそうなので、取り敢えず取り寄せた栄光さんの資料なり色んな会社のHPを見るなりしてざっとどれくらいのお金でできるもんなのかを調べました。

まぁ表紙カラー、中身モノクロの標準タイプで……と検索をかけると、栄光さんのサイトで最初目に飛び込んできたのが

「50部 ○○○○円」という文字!!!!!!!!!

50部!?!?!?!?!?!?!?

50部から注文なん!?!?!?!?とびっくりしてしましました。

後から分かったことですがこれは「オフセット印刷」という種類の場合、沢山刷るのが前提だからなのであって、

「オンデマンド印刷」という少数部刷るタイプのものを選択すると全然値段も部数も違うものがちゃんと案内されます……笑

とはいえその時は分からなかったので、オフセット印刷版で栄光さんのを見ていて、

B5版本文30ページ程度の場合50部3万円くらい(送料・税込み)で注文できちゃうんだなぁ……とびっくり。

案外安い???気がします。

(後から気づいたオンデマンド印刷の場合は、17000円程度でできちゃいます。安い!)

まぁ30ページくらいでいいかな、とざっくり思いつつ、どれくらい発注すればいいか決めなきゃなぁ……と悩んでいた所、

またしてもTwitterで「ちょっと見本提示してアンケートとれば大体の部数が分かるよ!」とご助言を頂いたため、

アンケートフォームを作成して雑な目安にすることにしました。

 

中身に着手する4日目

部数はアンケートをそこそこ放っておけば分かるだろうということで、そろそろ表紙と中身を考えねばなりません(普通そこが先なのでは……?)。

今日が4日目なのですが、表紙作りと中身作りを頑張ろうと思います。

まず表紙はフルカラーで発注する予定なので、なにか描かないといけません(どうせならなにか描きたい)。今日そのイメージが作れたらいいなぁという感じ。

中身についても、学校で配布している時は色々なサイトから引っ張ってきた画像をそのまま掲載するなどしていましたが、これも本にするにあたって自筆の絵に描き変えようと思います。

というかそもそも「まいバイオ」のフォントがこういう場合に使用可能かとかも確認せねばならないし、原稿の選定と中身のブラッシュアップもしなきゃいけないし、案外やることある気がする……

 

ちなみに、今の所フォームに集められた意見に幾つか触れておく。

藁半紙はやめよう

やめます。最初からそれは思ってないよ(昔配ってた時は藁半紙だったなぁ)。上質紙にするよ。

なにか手伝えることあれば手伝います!

ありがとうございます!!

冊子版オリジナルの特別コーナー、4コマ漫画、編集後記とかあると面白そう

なるほど!ちょっと考えます。いかんせん30ページしかないので全部詰め込めるかは分かりませんが!

コロナ禍の今、PCRセントラルドグマの理解は義務教育のレベルだと思うのでそのあたりを重視して

そもそものまいバイオが「色々分かっている体でそれプラスアルファ」を意図して作成されているので、PCRセントラルドグマはこの冊子であんまり説明する気はないです。ごめんなさい。そういうのの理解のために出ている本も幾らでもあるし……

一年生で習った生物の知識でも楽しめる内容がいい

中々難しい注文じゃね!?でも頑張ってみます!

細胞培養と進化、睡眠については特に読みたい

その記事あるんで載せようと思います!睡眠はどういう系が求められているんだろうか。睡眠ってなんだ系か、睡眠の最新研究系か……

 

様々なご意見ありがとうございました!!

 

取り敢えず頑張っていこうと思います!

2021年度大学入学共通テスト 生物 所感

遂に実施されたぜ共通テストが!!!!!!!!

 

新傾向だのコロナだのと本当に振り回された一年でした。

記述式があるだのないだの、英語民間を使うだの使わないだの、範囲が変わるだの実施日が変わるだのコロナ対応直前でコロコロ変わるだの。……よくぞ実施までたどり着いたな……感があります。

教員側も大変な一年だったけれど、生徒からしたらもっともっと大変な一年だったろうな。まだ18年も生きていないような人たちが、こんな不安定極まりない中、モチベを維持して勉強し続けねばならない……そんな状況での精神状態は、経験していない人には想像するのすら難しい。

どんな結果だったとしても全ての生徒に「お疲れ様、よく頑張ったね」と言ってあげたいです。心から、お疲れ様。

 

自分も自分で共通テストが実施されるまでかなりヒヤヒヤの状態でした。

というのは、試行調査がかなり難しく、「こんなのが解けるようにするにはどう指導すればいいんだ……?」と頭を抱えていた所で休校やら何やらが重なったからです。真面目に目の前が真っ暗になりました笑

特別時間割で共通テストまでの対策を行うのですが、その時もどうやって、何をやらせるべきか、どういう教材を使うべきで、どういうフォローアップをすればいいのか……等々、かなり迷い考え、結局あまり行動にも移しきれなかったりして、もやもやの多いまま当日を迎える形になりました。

どんな問題が出るだろう、どれくらいの平均点になるだろう、どういう授業が必要だったのだろう……と延々考えて迎えた当日でしたので、問題もいち早く解きたくて、問題がアップロードされるであろうサイトを何十回とリロードしました笑

結局アップされたのが9時くらいからで、例年より遅かったのでかなり待たされましたね……

 

ということで今回は、初めての共通テストを実際解いてみて感じた感想なりを書き留めていこうと思います。

 

ちなみに問題はここら辺から拾えます。是非一度解いてみてください。

www.toshin.com

 

試行調査はここから見れますよ。

www.dnc.ac.jp

www.dnc.ac.jp

 

 

生物基礎

解くのにかかった時間は8分でした。

PDFで解いたので、紙への書き込みやめくりの簡単さがあったらもっと早かったと思う。時間とられたのも基本戸惑いから&書き込めなくてうんうん頭で計算したから、ちょっと遅くなっちゃったな感がある。

例年のセンター試験よりも傾向の変化がみられる?

生物基礎は、試行調査時点で「こういう問題が来そうだな……」と思っていたイメージにかなり近いものだなと個人的には思いました。

既習内容について今まであまり見たことがないような表現方法をとっている画像の処理、

実験組み立ての問、

グラフの「形状」に着目した問、

論理的矛盾がないものはどれ?という視点で選択肢をとる問、

知識について直接問うのではなく正しい知識を使えば解ける捻り問 etc……

まさにこういうのが出そうだと思っていました、という感じでしたね!

知識と思考力のバランス的にもかなり良い問題だったのではないかと思います。

新傾向で出るぞ!と言われていた「実験器具や実験操作の正しい理解」については結局今回は出なかったですね。あとは「この中に当てはまる仮説はありません」と切っていく問題……。

次回の試験では出てくるのでは?と密かに思っていたりする。

 

大問ごとの所感

第1問

お父さんが高校生の頃やっていた教材が部屋から発掘されて「カビやバイ菌って原核生物だったよね~」などと言い始める生物教師にとってはホラーな物語。

こんな人間を世に送り出してはあかんぞよ……!!!!!!!!!!!!!!!!背筋凍っちゃいますね。

そんなホラーな導入からの一問目が「酵母は真核生物だよ♡」というもう何千回と授業で言った内容だったので笑いました。本校生徒は即答してくれてればいいが。ちなみに酵母は菌界の住民なので「菌」ってついてます。原核生物原核生物界細菌類に分類されているから「菌」ってつくよ。日本語だからこうなるだけで英語ならこんな混乱はないんだけどな。

提出されなかった宿題プリントもまぁひっどいですね。授業全然聞いてなかったんだろうなお父さん。でもこの時代の人なのにラン藻じゃなくてシアノバクテリアって書いてる辺り謎の最先端を行っている。

問3のパズルが「見覚えがない」タイプの図でした。でもさー、酸素・二酸化炭素・水の矢印はここじゃなくない?感ないですか?私はちょっと戸惑いました。

後半Bの問題はまぁ普通だね。問4、問6が新傾向かな?という感じだけれども、そこまで酷いものではない。あっさりした問題でした。

 

第2問

Aはゾウリムシの収縮胞問題でしたが、これ実は私実力テストで出題したんですよね。じかも自分で問題作ったやつ。まさに「色んな濃度の液に突っ込んだ時に収縮胞の収縮回数調べよう!」という問題。綺麗に当たると嬉しいなぁ。

グラフを選ばせるのいいですね。今回は理解しやすかっただろうけれど、読解の方向じゃなくて自分でこういうグラフになるはずだとロジカルに導けるのも大事だな。

Bの免疫は問1で足が引っかけられないか不安ですね。生徒はNK細胞が指令なしで動けること、キラーT細胞が獲得免疫の一連の流れの後で動くこと、そしてそれらがウイルス感染細胞を攻撃することは知っているとは思うのですが……。混乱して前半をマクロファージとか選んでないだろうか。

残りの問題は典型でしたね。

 

第3問

Aはバイオームの問題でしたがまぁ簡単だったのでは、と思います。正直問3は地中海性気候で硬葉樹林ができると知っていれば読解なしで即答できちゃうし。地球温暖化問題も頻出ですよね。

Bは中々面白い題材でした。生態系の繋がりを感じるというか……。適度に考えさせられる良い問題だったと思います。

特に問4については一般の人々でも正答率が低いんじゃないか、と思う所で、ワクチンについての誤解やウイルスについての誤解ってよくあるんですよね。このコロナの時代を生きる人々には、教養として付けていてほしい知識だなぁ……としみじみ思いました。

 

 

生物

解くのにかかった時間は16分でした。

光合成の所で特に行ったり来たりして頭痛くなってしまった。13分くらいで本当は解けるんじゃないか?と個人的には思っています。

思考力偏重、知識はあんまりなくても解けるかな

まずね、試行調査より圧倒的に簡単!!!!!!!!!!!!ここにびっくりでした。試行調査見てびびってたのに……。

とはいえ思考力重視という傾向は反映されていましたね。思考力重視が反映されすぎて、知識がなくても考えたり読み取ったりすれば解けちゃう問題が多かったです。

生物基礎ではそこらへんの知識確認がうまいこと捻って入れてあったのですが、生物はあんまりでした。あったとしても、割とストレートというか、誤答があからさまというか……。素直な出題だった気がします。

でもな、そもそもマーク式、選択式というのが知識確認との相性が悪すぎるんですよね。紛らわしい用語とか間違えやすい認識があれば誤答の選択肢として混ぜやすいんですが、まぁそういうのって大体皆擦り切れるほど使いまくっちゃってるし、「どっかでこの問題見たなぁ」っていうのが多くなりがちなんですよね。演習量こなしてれば解けちゃうから、ひっかけにもならない、そもそもその選択肢で問うたところで本当の理解ができてるかは測れない、みたいになっちゃう。悩ましいところです。

とはいえ思考力だけあれば、読解力だけあればあんまり知識がなくても解けちゃう問題は良くない気がします。バランスよく出題して、受験生の努力が相応に報われる出題にしてほしいなぁ……。

 

という感じに、作問者の産みの苦しみを感じさせられる面もありましたが、題材は楽しいものが多くていいな!と私は思いました。ネタは楽しいよ!

 

大問ごとの所感

第1問

来ましたラクトース分解酵素

ラクトース耐性については、過去に生物広報誌でも扱ったので、読んでくれていた子は有利だったのではないだろうか。

SNPはアツいテーマなので出るかなと思っていましたが、綺麗に進化や遺伝と絡めた問題だったかなと思います。

それにしたって2問目からハーディ・ワインベルグが出るとは。勢いやべぇな。早すぎんか?分野横断だから仕方ないね。


第2問

グリーンアノールとブラウンアノールは実は中間試験に出題したんですよ。いや~、あの論文はいい論文ですからね。

生態系(すみわけ)と進化の分野横断問題として元々の論文の質が高く、各大学でも出題テーマとしてここ数年よく採用されている印象を受けます。岐阜大とか、岡山大とか。岐阜なんか今回の問題まんまじゃなかったかな?

ちなみに論文はこれ↓

science.sciencemag.org

 

「進化のスピード感」がこの題材の一つの面白みですよね。かつて進化はウン千・万年という途方もない時間をかけないと進行しないと思われていましたが、様々な題材を用いた研究により「もっと短い時間で進化は進む」ということがどんどん明らかになってきています。

具体例として大腸菌グッピーショウジョウバエカッコウなど。特に大腸菌の進化については面白い研究ですので、また生物広報誌で配りたい。リチャード・ドーキンスの「進化の存在証明」にもあるし、検索すれば出てくるので興味あれば是非。

進化の存在証明

進化の存在証明

 

 進化の存在証明楽しいよ☆


第3問

生産構造図はただの読み取り訓練ですね……。


第4問

鳥のさえずり学習きた!

鳥のさえずり学習については授業内で紹介をしました。

授業ではキンカチョウが聴覚はく奪されたり社会的孤立を経験したりすると歌が歌えなくなることをサンプル音声を用いて伝えました。下のリンク先から聴けるので皆さんも是非聴いてみてください。私は割と感動した。

www.brh.co.jp

キンカチョウは学習によってさえずりができるようになる鳥ですが、最近の研究ではそれに関わる脳回路なども解明されてきています。ホットな研究分野です。

対してウグイスなどは学習が不要な鳥で、遺伝的にさえずりがプログラムされています(と言われていますが、年齢とか場所とかで多少変わるともいう)。

最後の問「なぜ近縁種の歌が混じらないのか?」は自身の進化の知識と絡めて理解できる面白い問題でしたね。

京大では最近シジュウカラのさえずりの文法やらの研究結果がばんばん出ていますね。そろそろ東大あたりで問題になるんじゃないか?と睨んでいる。

www.kyoto-u.ac.jp

www.kyoto-u.ac.jp

www.kyoto-u.ac.jp

 

第5問

Aの茎頂分裂組織の問題は単なる読解に近いものでした。

対してBは生徒たちが通常疑問に思うような題材である「根でも光合成できるのか?」を取り上げていて、中々着眼点としては面白いなと思いました。

オーキシンとサイトカイニン、茎と根の話は出るんだろうなと思っていたのでブログでも触れていたのです……。出てくれて嬉しい……笑

実験考える系、どんな実験がいらないか系は絶対一つは出るだろうと思っていましたが、ここで出ましたね。

 

第6問

オタマジャクシの問題は分かりやすく、かつ面白い楽しい題材でした。

オタマジャクシがグロいという声も散見されましたが、2014年度山形大学生物の第2問では「変態を始めたオタマジャクシの尾部に同時期の別のオタマジャクシの眼球を移植して飼育した」という凄まじい実験が取り扱われています。

しかも飼育した結果尾はなくなりますが眼球はそのまま残って、お尻に眼球がくっついているカエルになります(イラスト付き)。

実験から導かれることは面白い問題なのですがイラストの見た目は中々のインパクトです。ということでこんなものは日常茶飯事な気がします。

ちなみに身体中に眼、といえばショウジョウバエのeyeless遺伝子過剰発現体。見たことがないという人は一度eyelessで検索をしてみてはいかがでしょうか(注!中々の画像が出てきます)。

試験の最後でもありましたが「新規にできた眼は機能するのか?」という疑問は非常に素直で良い疑問ですよね。eyeless遺伝子過剰発現体は神経が繋がっているので機能しているらしく、光をあてられた向きが分かるんだって。つょぃ。

自分が一番疑問に感じたのは、「ノーアイはどうやって赤色光と青色光を照射された状況を感じ分けているのか?」というところでした。今回の問題からはそれが分かりません。気になりすぎて論文まで引っ張ってきた(なんでや)。論文見るとノーアイとテイルアイの実物が見れるの嬉しいね(上のリンクで図と説明文がざっくり見れる。下のPDFの方で全文が見れる。)

jeb.biologists.org

https://jeb.biologists.org/content/jexbio/216/6/1031.full.pdf

論文のFig.3にあたる実験が今回のノーアイ照射実験なのですが、研究者たちは「赤と青の光のせいで温度変化は生じてないよ」「だから眼以外の光センサーがきっとあるんだよ」で終わってますね。気になる……どこで感じてるの……?????これ実験できないだろうかね。

 

 

進化が好きなんですか???

今回の共通テストを見返すと、かなり「進化」について積極的に取り入れた考察を行っているなぁという印象です。

進化は現在の生物学でもホットな領域であるため、興味深い論文も沢山出ており、それを反映した結果であると思われます。

 

特に進化について出題される時は、一般的な感覚と少し食い違うようなものを取り上げて考察させるようなものが最近多い気がします。今回の試験でも、「15年で進む」というのは驚くべきポイントですよね。

個人的に思うその最たる例が2019年度東京大学生物の第3問です。東京大学の問題は良問が多く、どれをとってもストーリー性と意外性、あとは学びがある所が私の推しポイントなのですが、こと2019年度東京大学生物第3問は進化について面白い知見を与えてくれます。

ざっくり概略を紹介すると、この問題では「獲得形質って本当に遺伝や進化をしませんか?」ということが最初の問いかけとして設置されており、

・環境条件に応答して表現型を変化させる性質は「表現型可塑性」と呼ばれること

・表現型可塑性はほぼすべての生物に備わること

・表現型可塑性にも環境応答の様式に変異があり、そこに選択がかかることで可塑性そのものが進化する事例があること

が紹介されています。つまりは、「どんな状況にどういう応答をするか」というその応答性を作る遺伝的回路中の因子に変異が生じた場合、そこに自然選択が発生し、環境に対する応答様式が変化する方へドライブされることがありますよ-その結果として獲得形質が遺伝・進化をするように見えることがありますよ、ということです。

この後続く問題が非常に面白く、新たな視点を与えてくれるものばかりなので、是非一度は解いてみてほしい題材です。4月までなら下のリンク先から解けるはずなので……どうぞ……

www.u-tokyo.ac.jp

 

 

で、結局対策ってどうするの?

そんなわけで、共通テスト第1回が終わったわけですが、これを踏まえて次からの対策指導を考えていかねばならんわけです。どうしようね。

取り敢えず基本やりことは今までとあんまり変わらないと思うんですよね。

基礎知識の確実な定着

やはり知識は大事。基礎知識および現象の流れをしっかり定着させることは必須です。授業では正しい理解ができるような説明やアクティビティを作っていくことが今後も引き続き重要かと。

事例を収集させる

今までもやっていることですが、色んな題材になりそうなネタを提供していくことは生徒の興味関心のためにも大事ですね。とにかく色んなテーマに触れ合える機会を作っていくのは続けたいと思いました(問題演習なり、広報誌なり、授業の雑談なり)。全部の知識をちゃんと記憶するのはそうそうないとは思いますが、「見たことある気がする!」ってだけでも解くときの印象が違うだろうし。

教科書のコラムや図説のコラムを積極的に引用するのもそうですが、教員自身が興味を持って新しい論文なり問題の題材なりを引っ張ってくるのも大事かなと思います。大変だけどやるしかないよね~。

グラフ・資料の読み取りは最初丁寧に指導する

グラフや資料の読み取りは肝要なので、授業内で生物学のスキルとしてしっかり磨かせるのは大事でしょう。「勝手に放っておけばできるだろ」は禁物です。

グラフは最初に縦と横を見るのだよ、という指導から始めて、授業内で出てくる様々な典型グラフを生徒に読ませるトレーニングをすべき。

 

これらの従来の指導をやっていけばいいかなと思うのですが、「今までもやってきたけど一層気合を入れてやっていきたいこと」もあるかなと思います。

分野横断的な思考をさせる、分野間の繋がりを作る

今までも生徒になるべく思考させる・知識を使わせる機会を作ってはきました。ある題材を提示して問いかけをしたり、グループで話合わせたり、調べさせたり。しかし、今後は一層そういう機会は大事になるかと思います。

加えて取り上げる内容についても、分野横断的な題材を提供できるといいですよね。どうやってうまく思考させるか、その仕掛けをしっかり作っていくことが必要かと思いますが……。過去に学んだことと今習ったことを横断する題材を提示し、毎回分野間のつながりを意識させるのが良いと思います。

素直な疑問を取り上げる

生徒が普段感じる素直な疑問が出題題材になっていくのではないかと思います。素直な疑問を拾ってシェアしていくのは大事かも。「どうやったらその疑問解決できるかな?」「どういう実験をしたらいいかな?」とワークテーマに変えてしまってもいいかな。

実験器具・操作の本質理解をさせる

今までだと、実験は授業で学んだことを実体験する場であったり、新たな発見をする場であったりしたわけですが、より器具や操作に関する本質的理解ができるようなワークを考えるべきかなと思います。それがどうやったらできるかはまた考えねばならないところ……。「自分で実験を立てる」とかだと、統率立てにくくて運営が難しいので、うまい導入なり誘導を考えねばならぬ。

授業で実験について説明する場合も、理解に繋がる問を立てていけたらいいなと。

 

こんなところかなぁ。

問題演習については、色んな会社が頑張って模擬試験なり対策問題集なり作っているので、それらとセンター過去問を活用すればいいのかなという気がします。生物基礎も生物も、二次の問題で良さそうな難易度のものがあれば活用していくとより良いかなという感じ。

ちなみに本校では対策として、ベネッセラーンズの直前演習と数研のチェック&演習を主に使っていましたが、色々新傾向問題のことを考えて作問しているなぁ……という作問者の苦労を感じました(泣)

何がどう出るか分からないのに作問した方々、本当にお疲れ様でした……皆本当の「新傾向問題」が分からず、アイデア大賞みたいになっていたのが個人的には楽しかった笑

 

私も生徒のために「新傾向問題」作問できるように頑張らねば……(今の所スキルが無)

 

 

ということで、共通テストの振り返りでした!

 

 

追記:

「知識がなくても生物の共通テスト解けたのでは?」という疑問解消のため、

本校の物理選択の子に解いてもらった所、80点とれました。

勿論生物の知識はほぼ皆無のはずの子です(論理的思考はできる子です)。

……やっぱりな!

青いカーネーション

昨年末のことになるんですが、同じ職場で働いているある先生から「青いカーネーション」を頂いたんですよね。

「これ欲しいですか?」って見せられた瞬間に、「わぁぁぁ!?!?!?!『あの』青いカーネーションだ!?!?!?!!!!」って大声で反応してしまいました。

それくらいびっくりしました。

f:id:I_my_mine:20210107205722j:image

 

なぜそんなにびっくりしたのかというと、青いカーネーション遺伝子組換えによって作られた自然界には存在しない色のカーネーションだからです!

これは高校生物を教えている教員にとっては垂涎ものですよ……

青いカーネーションが作られた経緯についても軽く知っていたので、こちらでもちょこっと紹介したいと思います。何はともあれ美しいよね……感動した……。

 

 

 

青いカーネーションは元々、サントリーで「青いバラを作るプロジェクト」があり、その派生として作成されました。

青いバラ作成ストーリーを詳しく知りたい方は、下のリンクから読むことができます。

www.suntory.co.jp

青いバラも青いカーネーション同様自然界には存在せず、またどんな交配を行っても現れることがありません。 

……そもそも青い花ってレアな気がしますよね。私のただの肌感覚なので当てにはならないのですが、普段から生活している時に「青い花」があまり目に入ってこない気がします。

と、思っていたら同様の考えをしている人が日本植物生理学会の「みんなのひろば」で質問してました。

jspp.org

これを読むと、青色素はアントシアニンの中でも、デルフィニジン系のものが担っている場合が多いようです。*1

デルフィニジンは下図で示すような経路で作られます。ついている官能基が違うと、色が変わるのね。詳しく知りたい人はこちらを参照してね。

f:id:I_my_mine:20210115091344p:plain

農研機構から引用。ペオニジンが赤系、ぺラルゴニジンが橙系、デルフィニジンが青系

ですが、デルフィニジン合成酵素遺伝子がなければ、デルフィニジンを作ることができない、と。

てことは、青いバラを作るにも、デルフィニジン合成酵素遺伝子なりなんなりデルフィニジン合成に関わる遺伝子セットを判明させなければならんということですね。

しかも、デルフィニジン合成の系をどこかから見つけてきたとして、その仕組みがバラの細胞でちゃんと機能するのかは分かりません。細胞ごとに使っている遺伝子・酵素、転写調節の系、周囲にある化学物質etc、全部違いますからね……だから入れてみるまで分からない。

中々大変な道のりです。

 

サントリーはフロリジン社と組んで、共同でデルフィニジン合成に関わる遺伝子群=青色遺伝子の探索を開始しました。

最初にターゲットにしたのは紫のペチュニアです。

サイトでも説明されているように、ペチュニアは青色遺伝子に関する色んな知見が溜まっていたのもあり、ターゲットにされたとのこと。

それら知見を基にペチュニアがもつ3万種の遺伝子候補の中から、青色遺伝子候補を300種まで絞りこんだそうです。凄いですよね。

方法として、最初はペチュニアに候補遺伝子を戻して花の色が変わるかのテストを行っていたそうなのですが、これだと花が咲くまで待たねばならず時間がかかるので、途中から酵母に候補遺伝子を入れて活性をテストする方式に変えたのだそう。

方法を途中から改良して時短をするのは、大隅良典先生のオートファジーの研究でも行われていましたが、やはり大事ですよね……!個人的にはこういう展開は胸アツです。

 

そんなこんなでやっと青色遺伝子を取得!

バラに入れてみましょうということで採用したのが組織培養とアグロバクテリウムの組合せ。

 

組織培養は、バラの一部の細胞を持ってきて、オーキシンとサイトカイニンで処理して脱分化させてカルス化させ、それにまたオーキシンとサイトカイニン処理を行うことで再分化させる方法ですね。

こうすることで最初に細胞を持ってきた元個体と同じ遺伝情報を持つ新個体を1から作ることができ、クローンを増やすことができます。

 

一方アグロバクテリウムは植物の遺伝子組換えによく使用される土壌細菌です。

アグロバクテリウムはTiプラスミドというでっかい環状DNAを持っていて(Ti = Tumor inducing)、その内の一部領域がT-DNA領域(transfer DNA)と呼ばれます。

アグロバクテリウムは通常、植物体に感染すると、自身のT-DNA領域の断片を対象細胞に注入します。するとこのT-DNAは相同組換えによって植物細胞のゲノムに挿入されます。

T-DNA領域にはオーキシンとサイトカイニンを作るための酵素が含まれているため、これを挿入された植物細胞ではオーキシンとサイトカイニンによって腫瘍化が発生します。そうやって本来は瘤を形成させ、アグロバクテリウムにとって都合のよい栄養素を作らせるのです。

しかし、遺伝子組換えを起こしたい時にそういうことをされては厄介なので、T-DNAのオーキシンやサイトカイニン合成遺伝子だの栄養素形成のための遺伝子だのというのを全て削って、T-DNAの相同組換えに必要な領域だけ残し、

取り除いた遺伝子たちの代わりにT-DNA領域中に「導入したい外来遺伝子」を入れておいて、

そのTiプラスミドを持たせたアグロバクテリウムを植物体にふっかけるわけです。

すると、入れたいと思っている外来遺伝子をT-DNAとして植物ゲノム中に挿入することができる、という仕組み。巧みですよね。

ただ、植物ゲノムのどの場所に入るかは割とランダムなので、細胞集団に一度に感染をさせたとしても細胞ごとに違うゲノム領域に挿入されてしまう可能性が高いです。

 

組織培養とアグロバクテリウムを組み合わせれば、少数細胞で構成されたカルスに対して挿入を行い、

一つの細胞由来で増えた細胞塊を一個体まで育て上げることもできるわけで、

ゲノム中に挿入された部位が同一の細胞たちから一個体を作ることも可能になります。

 

ということで実際遺伝子導入したバラを一生懸命作ってみたわけですが、花が青くならない……。

そんな折に、このペチュニアから取り出した青色遺伝子を導入して作られたのが、「青いカーネーション」だったのです。カーネーションでは、ペチュニアの青色遺伝子たちがうまく働いてくれたんですね。

(品種によってはパンジーの青色遺伝子が使われているものもあるらしい)

 

 

青いカーネーションができた流れはこんな感じです。

ちなみにバラについては、その後色んな青い花の植物の遺伝子を試し、遂にパンジーの青色遺伝子の導入で成功まで漕ぎつけたそうな。

pHの調整だのと色々大変な道のりで、読み応えがあるストーリーなので、是非先ほど紹介したURLを参照してくださいませ。

 

余談なんですが、青色遺伝子探索の時には「葉では働かず花弁で働く遺伝子」を基準のうちの一つとして行われたようなので、「本当に葉とかには青色が出てないのかな……」と観察もしてみました。
f:id:I_my_mine:20210107205736j:image
目視のみの確認にはなりますが、茎は緑で、青い色素はちゃんと花弁にのみ発現しているようです。なんならがくもちゃんと緑ですね。

 

 

せっかく頂いたので、商品ページになにか面白い情報ないかなと思い、ちょっと検索してみました。

moondust.co.jp

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これらサイトを見て初めて、色のバリエーションが6つもあることや、発色をよくするために高地栽培されていることなどを知りました。うーん、面白いなぁ。

6つの色のバリエーションはどうやって作っているんでしょうね?プロモーターが違って発現量が違ったりするのかな。それとも単純に照射UV量で遺伝的には同じものを変化させているのかな。

 

個人的に一番驚いたのは花言葉があることです。

ムーンダストの花言葉は「永遠の幸福」だそうな。

……うん、ちょっと大げさな気もするけれど、そう言っても差し支えないくらいには綺麗だったよ!!!!!!

 

明日・明後日は、私が3年間教えた子たちが共通試験に挑みます。

彼らに「永遠の幸福」が齎されますように……!!!!!!!と心から願っています。

ついでに自分も永遠の幸福に見舞われたい。永遠の幸福降ってきてくれ~!!!この記事を読んでくれてる皆にも降ってくれ!!!!!

*1:このQ&Aを読んで、「紫外線照射するとアントシアニン合成量が増えて色が濃くなる」というのを恥ずかしながら初めて知りました。が、かつて生徒たちがやっていた実験で、紫外線照射をした時植物の色が濃くなったのを思い出しました。こちらのQ&Aですっきり述べられていたので整理できた。本当に植物生理学会はすごい。

課題研究って難しい けどちょっと慣れてきた?かも?

この学校に来てからこれで3年目になります。

3周目の課題研究の時期がやってきました。

課題研究は毎年悩まされている題材です。毎年何かしらの記事を書いておる。

 

i-my-mine.hatenablog.com

 

i-my-mine.hatenablog.com

 

今年度は、1年目に担当したのと同様1年生の課題研究に携わることになりました。ただし、今回はメイン教員ではなく、補助教員です。

助教員として1年生の実験実施・準備を助けるのに加え、実験計画の時から生徒間を巡回し質問への対応や指導などを行います。

 


現在、実験計画が終了し、次に予備実験をするぞという段階なのですが、

例年課題研究のテーマ決めや計画の指導に苦心していたところを、今年度は割とうまく導けたのではないかなと思っています。まぁ、補助教員という気楽な立ち位置だったからというのもあるのかもしれませんが……

ちょっとずつコツが掴めてきたかなと思う所もあるので、今年度の様子を書き留めようと思います。

 

 

今年の方針

まず、今年度私が大幅に変更したのは、「グループで計画の議論をしている段階から頭を突っ込んでいく」という所でした。

例年は、あまり計画中の会話に深く突っ込んでいくことはしていませんでした。

というのは、まずは自由に考えてもらった方がいい、生徒間で議論を重ねていって色んなことを考えた方がいい、と思っていたからです。

 

しかし、実際には生徒間だけで議論していくと、問題点には気づきにくく、現実的な想像もしにくいというのがここ2年見てきた実感としてありました。

生徒任せで議論をさせていて、ここに気づいてほしいなと経験もないことに関して思うのは無謀なのです。

 

とはいえ、最初から教員が頭を突っ込みまくり、「こういう実験ならうまくいくよ」と何も生徒に考えさせないまま決めるのは良くないわけで、なるべく頭は使ってほしい。

 

 

そんなわけで、こういう戦法にすることにしました。

 

まず最初は、生徒だけで実験計画や発案を行わせます。

この際、例年伝えている注意事項は伝えておきます。注意事項は以下のものです。

  1. まず教科書は見なくていいし図説からも離れよう
  2. 題材は手に入れやすいもの、飼育や維持がしやすいもの、成長段階が揃えやすいものにしよう(だって対照実験組むの大変だよ?)
  3. 検証可能なことを調べる対象にしよう(例えば二酸化炭素濃度の変化は多分検出できない。でもヨウ素でんぷん反応なら検出できる。こんな風に調べたいことは検出できる方法から考えて実現可能性を検討する)
  4. 自分の身近なもので今まで見てきて不思議だなとか、こうならないのかなとか、そういう「違和感」を感じたことを引っ張り出そう。食品とか、道端の植物とか、眺めていて少しでも気持ちに触ったものがあればそれは良い。もしそういうものがなければ、当たり前だと思っているものが変わったらどうなるのかを調べる対象にしよう。例えばりんごを塩水に切ったらつけるけど、それを変えたらどうなるの?とか。

加えて、

5. どうにも思い浮かばなかったら検証方法はいいので、調べてみたい対象物や現象・キーワードだけ挙げてみよう

という形にします。

 

これを伝えた上で、グループで議論する時、紙に出た意見をとにかく書き取らせます。

すると、紙に幾つもの実験案(といっても、タイトル―何を調べたい・知りたい―と、軽い検証方法のイメージ)が羅列されてきます。

 

次に生徒に、出た実験案の中でどれを採用すべきか絞っていく作業をするよう伝えます。

上で述べた注意事項に照らし合わせながら吟味するよう促します。

すると生徒たちの間では、注意事項に沿うかどうか、現実的にできそうかどうか、どうやったら現実に調べられる方法に落とせるか、という思考が発生し、議論が進みます。

でもきっと限度があるし、思いつかない方法があってよいテーマが切られたりします。

 

そこでいよいよ教員が頭を突っ込む所です。

ここが腕の見せ所でもあるわけですが、各グループの所に赴き、実験案が羅列されている紙を見せて貰いながら、議論が現在どういう状況にあるか?何に詰まっているか?というヒアリングを行います。

多分2,3分でヒアリングも状況把握もできます。

実験案をざっと見て、実現可能か不可能かは教員に判断がつくはずなので、それを素直に生徒に伝えてあげます。

この実験はできると思うよ、この実験は器材がないから難しいかな、と生徒では分からない施設状況や大体のかかりそうな手間・時間・要される手先の器用さ等から判定をして伝えます。

 

加えて、とても良いテーマや良い実験案が出ている場合は、これはとても良いよと素直に褒めてあげ、より良い実験にできそうなら議論をグループにいる生徒たち全員に対して吹っ掛けることで導いてあげても良いかと思います。

基本は問いかけ、または糸口の提示です。全てを教員が決めると本当に面白い研究案はできませんし、皆同じようなものになってしまいます。

生徒自身が調べたいもの、面白いと思うものを研究させてあげないと課題研究は頓挫します。

生徒の中にあるものを引っ張り出したり刺激したりするような形で、グループと対話するのです。

 

全然うまくいっていない班だとキーワードや無理難題な実験案ばかりが羅列されていると思います。

そういう場合生徒は放っておいてもつらいだけで頭をフル回転させられるような良い時間にはなりません。

教員が生徒の一員であるかのように振舞いながら、グループを活性化させられると理想的だと思います。

私自身は、面白そうなテーマに繋がりそうなキーワードが上がっているならば、「このキーワードに関してどんな疑問が挙げられるだろうね?」という問いかけから始めました。

例えばこんなことを不思議に思わないか、と具体例を一つ挙げてしまってもいいかもしれません。

最終的には生徒が「自分はこういうことを疑問に思うかも?」とつられてつぶやいてくれれば儲けものです。

それをなるべく採用して、生徒自身の疑問をスタート地点に置いた実験計画を作っていける土台を作ります。

 

 

とにかく大事なのは、注意事項の共有(ここは譲れない)、

そして「生徒発」を引き出すことと「生徒発」を深める、良いものにすることです。

一度作ってしまった紙粘土は固まってしまうと直すのが大変ですが、こねている最中なら幾らでも柔軟に変えられるのですよね。そのイメージに近い気がします。

こねている最中の紙粘土みたく、グループで議論中という生徒の頭が活発に動いている、かつ自由な発言が許される最中に頭を突っ込んでいくと、かなり良い方向に流していけるなという風に今回は思いました。

 

また、議論中に頭を突っ込むことで、自分が知っている過去の事例や色んな研究例から「こういう風に検出ができるよ」「こういう器具を用いるとうまくいくよ」といったちょっとした工夫なんかもシェアしやすいのが良いなと思いました。

例えば「二酸化炭素発生量を調べたい」という実験案で、生徒は大抵気体検知管での検出を計画してきます。

しかし実際はシリンジに液を満たしてシリンジが動く幅を見たり、やひっくり返した水中の試験管にたまる気体量を見たりすれば、もっと簡単に出てきた気体量自体は検出ができます(それが二酸化炭素であるという確約はありませんが…)。

そういうテクい?ことは生徒の経験がないと分かりませんので、積極的にシェアすることが生徒の「へぇ~」「なるほど!」と増やすのかな、とも思いました。

ついでに、そういう情報を提供すると、生徒は割と敏感に反応して「それって今回の場合こういう風に工夫したらもっといい感じに使えませんか?」とか、「その方法ってこのスケールの場合使えるかな、〇〇という点で難しいんじゃないかな、それを解決するには◇◇したらいいんじゃないかな」などと、生徒が勝手に深めていくんですよね。私もそれら気づきや発想を聞いててなるほど!と思う所が沢山あり、勉強になりました。

出てきた実験案にコメントを書いて交流する方法や、班長とのみディスカッションする方法では、このような小さな気づきの交流があまりなく、またグループの皆の頭脳を集約していって作り上げていく感覚がありません。でも生徒が皆でわいわい言い合える状況だと、その場にいる全員のブレインと気づきが要され、それが一つの形に集まってくるのを感じます。これはとても良い傾向だと思います。

 

とにかく生徒の議論中に頭を突っ込むこと、これがかなり最終的に出てきた案への朱入れ負担を減らし、計画を一から書き直しという悲劇もなくし、かなり良いことが沢山あるなぁと感じました。自分が気を付けることとしては、どこまでを考えさせて、どこからを提供するか、どうやって発展させるか の辺りだと思います。

実際喋っていると生徒は物凄く良い興味の発端やアイデアを持っているけれど生徒間で話している時にはちょっとあまりにもさりげない話題なので出せていなかったりするようです。生徒は大きなテーマじゃないと、パッとしているような見栄えするものじゃないと駄目なんじゃないかと思っちゃうみたいです。気持ちはよくわかりますが、そういうものより小さい疑問の方がいい実験ができたりするんですよね。本質的だったりするし、調べて結果を出しやすいシンプルな系を組みやすかったりするし…

だから教員が議論中に頭を突っ込むのは課題研究でとても大事なのではないかと感じました。

 

 

話しながらちょっと思ったこと

生徒は沢山いい疑問を出す能力も研究を考案する能力もあるんですが、

どうしても「課題研究やるよ!テーマを考えよう!」ってなると立派なものや派手なものを考えなきゃだめだ!やらなきゃだめだ!ってなっちゃってるみたいなんですよね。

もっとシンプルで、些細な疑問から入れるといいなと思うんですけど…「良い疑問はシンプルかつ些細なものなんだよ」ということを生徒自身が分かり、そういう方針で色んな意見が出せるようになるにはどうしたらいいのかなぁ、と思いました。

 

自分が思った一つの解決法は、「一流の研究も素朴な疑問から始まっている」ということを伝えるというか、知ってもらうということです。

大学とか研究所で現在やっている研究は、どうしても専門的な機器が必要なものばかりかもしれないんですけど…

例えば古典的な実験で、素晴らしい着眼点とアイデアでやってるものって沢山ありますよね。

高校生や中学・小学生の自由研究で非常に評価されているものも良い見本かもしれません。

着眼点や疑問点だけなら、現在の大学や研究所でやっている研究も参考になるかもしれません。

とにかく、「皆どれくらいの実験をやっているんだろう?」という指標がないから、立派なことをしなきゃ!になるんじゃないかなぁと思うわけです。

その見本を見せてあげられたら、この認知の違いを正せるかもしれません。

 

 

あとはやっぱり自分の引き出しや知識が足りない!!!!!!!!!!!

教員がどれだけこういう研究についてテクニックややり方や事例を知っているかが肝ですよね。

特に学校の設備や高校生が手の届く範囲内でどんなことまでできちゃうのかを知らないと、全然助言ができない。

〇〇を育てる培地はどんな培地?作れる?育てられる?

こういう研究はできないの?

これを調べる試薬は?方法は?

……全然出てこない。めっちゃワンパターン回答になっちゃう。

ネットで調べられる環境を作っておいて、生徒に調べさせてもいいのかもしれませんが、あんまり最初からネットを置いておくと、自分たちが知っている知識をどう使えるかみたいな思考すらなくなっちゃうし、そういう思考をしないと検索も難しいだろうし……

やはり教員がある程度ネタを持っているのが一番良いかなと思うんですが、自分には足りないです。精進必須。

 

 

今回の手法がいつでも使えるわけじゃない…

他に思ったこととして、今回はそこそこうまくいったとはいえ、

教員が頭を突っ込んで深い十分な議論をするのにはどうしても時間がかかりますし、中々難しいところがあるのではないかと思いました。

班の数が嵩む分、時間が嵩むし、自分の頭も使われていきます。疲れます。単純に。頭回らなくなっていく。

なので、どうしても限界がありますよね…。

 

「指導できるグループ数」がどの程度で限界があるかをやっていって把握していく必要があるかもなと思いました。

ちなみに、私は今回、6班分を30分程度で指導しました。1班5分関わっていくイメージでしょうか。5分つきっきりではなく、2巡くらいしてこの時間です(問やきっかけを蒔いて後で確認に回るイメージ)。

だとすると50分で10班?…きつそう。8班くらいしか見れないんじゃないかなぁ……

一緒に議論するというのは理想的な方法ではあるけれども、現実的なものかどうか考えつつ、教員の配置数や担当グループ数を調節する必要があると思います。時間も体力も有限なので。

 

 

ということで、3周目の振り返りでした。

ここから予備実験・実験と進むとき、どうやって指導してどうやって発展させられるかが大事!

より完成度が高い課題研究ができるようにお手伝いできるようにしたいね!

質問箱運用について

今日は私が生物の授業にて実践している「質問箱」という制度について紹介をしたいと思います。

 

 

何を思って始めたか(動機)

私が「質問箱」という制度を始めようと思ったきっかけは、以下のような生徒の事例を観測したからです。

  • 質問するタイミングや時間がなくて質問に来れない、または質問できずにそのまま忘れてしまう
  • 質問するのが恥ずかしくて質問ができない(本当は確かめたいことがある、分からないことがあるがそのままにしてしまう)
  • 疑問を抱いたタイミングが家庭学習時であったりふとした瞬間であったりと、質問したい時に教師が傍にいない

1つめについてはよくある話で、割とやきもき自分でしていた部分がありました。学校内で質問をしなきゃいけないとなると、授業の後、休憩時間、放課後などになりますが、生徒も教員も忙しく割とすれ違ってしまうことが多いです。せっかく疑問を抱いたのに、確認できないまま流すことになるのはお互い不利益です(生徒は理解できないまま終わるし、教員は何を理解させられていなかったのか分からないまま終わる)。

2つめについても実は沢山いるということが分かってきました。「分からない」と素直に言えるのって実は勇気がいることになってしまっているのかもしれません。私は「分からない」と素直に言える方が偉いと思っているのでどんどん言ってほしいのですが、生徒は往々にして「分かったような気がする」ことにして分かったふりをしたがるように思います。風潮があるので仕方ないのかもしれませんが、それによってせっかく抱いた疑問が意図的に消されてしまうのはもったいないですよね。

3つめについてはかなり大切で、時間が経つと何が分からなかったか分からなくなる所もあるので、疑問や質問は鮮度が重要だと個人的には思うわけです。しかも、大抵家庭学習中とかふとした時に持つ疑問というのは、些細なれどとても重要な疑問だったりし、教員としても是非収集したい一品です。

 

こういう事例を解消するにはどうしたらよいのだろうか?と考え、導き出したのが「質問箱の導入」という解決法でした。

 

質問箱システムの概要

質問箱を設置するにあたり、自身が目指したのは以下の性質を持つシステムです。

  • 自身が担当している生徒から質問文や図を教員に届けられるもの
  • 生徒から質問を送る際個人情報が収集されないもの
  • 生徒から匿名で質問文が届けられるもの
  • いつでも、何回でも質問文が送れるもの
  • 教員からの回答が生徒に提示できるもの
  • 教員から回答する際資料添付できるもの
  • 良い質問に関しては教員からの回答がすべての担当生徒にも提示(共有)できるもの
  • 教員からの回答の際こちらの個人情報(連絡先等)が生徒に伝わらないもの

動機の章でも話しましたが、私にとって大事なのは生徒が匿名で、いつでも、何度でも、気軽に質問できる環境を作ることでした。

加えて、教育関係者ですので、生徒と個人的なやりとりをしたり、連絡先を入手して連絡したりというのは禁止ですので、返答は個人宛でする方式をとれません。

ですので教員からの回答が関係ある生徒全員に提示されるような形式にしようと考えました。

というかそもそも生徒から来た質問は他の生徒も疑問に思っている可能性が高いので、共有すれば同じ質問を何度も捌く手間がなくなりますし、良い着眼点の質問ならなおさら皆に知ってほしい!というのもあります。

 

そんなわけで、結局とった形式は以下のようなものです。

  • 匿名で質問投稿できるGoogleフォームを作る
  • Googleクラスルームを開設する
  • 担当クラスにGoogleクラスルームのコードを示しクラスルームに入ってもらう
  • Googleクラスルームに匿名質問用GoogleフォームのURLを置いておき、生徒が常にアクセスできる状態にする
  • Googleフォームを通して質問がきたら、Googleクラスルームでその質問と回答を公開する

Googleフォームなら質問時個人情報を収集せずにやることができますし、Googleクラスルームを通じれば招待されている人のみに質問・回答を提示することが可能です。

ですのでこの形態をとることにしました。

 

結果

個人的な感触・概況

私が質問箱制度を開始したのは今から2年前くらいの時期で、そのころはまだコロナなんて全然関係がない時でした。

質問自体は思ったより頻繁に投稿されることはありませんでしたが、それでもちらほらと投稿があり、一部かもしれませんが生徒には活用されている印象でした。

コロナのせいで休校が発生した時には、少し質問箱利用が増えた気がしますが、そこまで顕著な変化ではありませんでした。休校が発生した当初は、「休校対応のために質問できる環境を作る」という流れが世間でも顕著になりましたが、私の質問箱をやった感触的には休校関係なく設置してあってもいいものではないかなと思います。

 

現在までで質問箱には120に上る投稿がされました。

内容は、

  • 基礎的なことの確認質問
  • 授業内容をより掘り下げた疑問に関する質問
  • 自分が気になったことに関する質問
  • 授業等に対する意見

の4つが主です。

基礎的な確認質問については、授業でこういうことがうまく伝わっていないんだなぁと、自分の中で反省に繋がり、授業改善に繋げられるのでこちらが大変助かっている印象です。

授業内容を掘り下げた質問や、日常生活で気になったことへの質問については、自分では思いもよらなかったものが多くあり、「なるほど 確かにそれは不思議だなぁ」と自分が勉強する機会を与えてくれています。これも大変助かっています。

授業等に関する意見については意外と寄せられており、生徒のおかげで改善された制度が沢山あります。例えば「質問フォームに画像も載せられるようにしてほしい」とか、「授業で使っているスライドやプリントをオンラインでシェアして欲しい」とか、私では分からなかった生徒の需要を伝えて貰えることで改善できた・対処できた点も沢山あります。これは当初予想していた使い方とは異なったのですが、個人的には良い活用法だったなぁと思っています。何より休校期間中のオンライン講義についてや、普段の授業について、時々感謝の気持ちを質問箱経由で伝えてくれる人がいて、それがかなり自分にとっては心の支えになりました。

 

生徒からの反応

生徒が質問箱に対してどう思っているのかはあまり調査するタイミングがなかったのですが、「休校期間中の対応に関するアンケート」を実施する機会があったので、それに便乗して質問箱についても生徒に向けてアンケートをとってみました。アンケートに回答してくれたのが一部の人なので、あまり正確な結果はとれていないのですが…

 

「質問箱を設置していることは自身の学習の助けになったと思うか?」という質問項目に対しては以下のグラフのような反応でした。

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思ったより助けになっているらしい!「なった」と「おおいになった」で70%近くの回答が得られたのは驚きでした。ごく一部の人しか使っていないかと思っていたので…

「質問箱に関し良い点または悪い点・改善方針等意見があれば教えてください。」という質問に対しては、以下のような意見が得られました。

  • 他の人の質問も見れるので、自分で気づかないところの知識が増え、内容を深められた
  • 皆が考えていることを知れて面白かったし刺激になった
  • 普段自分の質問が稚拙ではないかと声が掛けづらい部分があるが、匿名だと質問できるので良かった
  • 質問しやすくていいと思った
  • HPや資料などを回答とともに提示してくれるのが普段の質問よりも良い点だと思った

自分が最初「こういう需要があるんじゃないか」と思ってやったことが、生徒の需要にちゃんとはまっているようで、これらの回答を得られて本当に嬉しく感じました。

しかし一方で、

  • オンラインでの質問フォームでは表現しにくい質問や、長文の質問となると少々使いにくい

という意見もあり、確かにオンラインのフォームで伝えられるような質問や疑問ばかりではないよなぁという気もしました。やはり直接話して質問に答えるのも大事だな。

 

色んな意見を集約した結果の現在のフォーム

また、生徒からの意見によってフォームの形態も運営当初からかなり変更されました。

新しく実装したのは以下のような項目です。

  • 質問なのか意見なのか を選択するボタン
  • 質問の場合、皆に共有していいか それとも後日個別に回答してほしいか を選択するボタン
  • 意見の場合、回答が必要か を選択するボタン
  • 画像を添付できる仕組み

今の所はこれで回っている気がします!

 

質問箱設置の際に気を付けたいなと思ったこと

ここまでは質問箱のプラスの面を沢山書いてきましたし、私自身も質問箱はいい制度だったのではないかと思っているのですが、実際やってみて「これは気を付けなきゃいけないな」と思うことも幾つかあったので書き留めておきたいと思います。

 

文章から勝手に口調を想像しない

質問箱に届く意見や質問は、どうしても「文章」のみであり、発言主の生徒がどのようなトーンで、口調で言っているのかは伝わりにくくなっています。

それに対し、勝手にこういう口調だろうなと推測すると、精神的にダメージを受けることがあります。

例えば「〇〇を改善してほしい」「〇〇が分からない」という文章が質問箱に来たとしましょう。「文章に口調はない」と思って受け止めれば文章のまま、その文章が表現したいことだけを受け取ることができます。

しかしここで「このたんぱくな文章は怒りがあるからでは?」「私に対する嫌悪感を持ちながら文を打っているのでは?」という風に捻じ曲げて捉えることもできてしまうんですよね。

このように、どうとでもとれるはずの文章、口調の情報がないはずの文章に対して、勝手に自分でマイナスなものを想像すると、まぁ精神的にきついです。つまりは勝手に憶測するなってことです。

これを意識できていないと本当、グサッとくることがある。ここは気を付けてほしいですね……

 

自分の負担にならない程度でやらなければいけない

質問箱にはcloseの時間帯がありません。いつでも生徒が質問できるのがウリですが、同時にいつでも質問が届いてしまいます。

更に、通常学校にいるときにはあまり質問箱対応に時間を割くことができません。業務が大変ですからね……そんなわけで、必然的に勤務時間外での対応が基本となってしまいます。

現在の質問箱の投稿頻度ではそこまでプライベートを侵食している感はないのですが、もっと増えたり、はたまた自分の生活基盤が変わったりしたら、考えものだよなとはやはり思います。ある程度の覚悟で質問箱は始めなければならないものかもしれません。

自分の負担にならないように、回答作成の時間を絞るとか、生徒にも回答タイミングについて周知するとか、そういう対策をするのがおすすめです。

 

 

まとめ

質問箱は私個人としては勉強になるし役に立っている感もあるので楽しいけれど

プライベートも大事にしような!~完~ (雑)

【質問】暗発芽種子ってなんなんだ?

こんにちは。私は最近、質問が多く舞い込んでくる日々を送っています。

それもそのはず、もうすぐ受験本番ですからね。皆本腰を入れてくる時期ドンピシャです。

 

それはそれとして、私はずっと前から「質問箱」という制度を実施しています。

質問箱についてもまた詳しく記事で書きたいのですが、ざっくり言うと生徒から匿名で質問が届けられる制度です。返答はclassroomを介して行います。

現時点で累計100個以上の質問が放り投げられ、なかなかに活用されている印象です。

 

生徒からの質問は考えさせられるものやハッとさせられるものが多く、私も勉強になります。特に、自分は疑問に思わなかったことを指摘されると、「なるほどそう言われてみればよくわからないな」と深く思考させられ、学び直すきっかけになります。

そんなわけで、普段の直接来る質問も質問箱も非常に役に立っているのですが、「これってシェアしたら他の人も学びになるんじゃない?」「ついでに私には得られなかった知識を指摘して貰えたらめちゃくちゃハッピーなんじゃない??」と思ったので、このブログでも少しずつ質問項目をシェアしていこうかなと思います。

 

 

今日の話題は「暗発芽種子」です。

 

前提:光発芽種子とは

生物の教科書では、光発芽種子について説明がなされています。

一応復習までにざっくり書いていくと、光発芽種子というのは「種子の発芽に光照射を要する種子」のことです。光発芽種子は光以外の条件-例えば水、温度-などが揃っても、光を照射されない限り発芽が起こらないとされています(条件によっては例外もある)。レタス、タバコ、マツヨイグサが代表例です。

教科書では、更に光発芽種子の光発芽メカニズムについても説明がされています。キーとなるのはフィトクロムです。フィトクロムというタンパク質は、赤色光吸収型(Pr)と遠赤色光吸収型(Pfr)があり、Prが赤色光を吸うとPfrに、Pfrが遠赤色光を吸うとPrになるという可逆的な性質を持ちます。光発芽種子はPfrによって発芽促進(発芽に必要なジベレリン合成やアブシシン酸の分解といった反応)、Prによって発芽抑制(抑制というか、発芽プロセスが進まない)という風に、どちらのフィトクロムを機能させるかで発芽を制御しています。ですから、太陽光のような白色光でなくとも、赤色光を照射すればPfrができて発芽し、遠赤色光を当てればPrができて発芽抑制がかかるのです。

なぜこんな仕組みを持つのか?それは植物の光合成と深い関係があります。植物は芽生えた後、種子に蓄えがない場合すぐさま光合成をしていかないと生命を営むことができません。種子の上に植物がいると、光合成に必要な光の色は上の植物に使われてしまい、発芽した種子は死んでしまうことになります。よって種子にとっては、上に植物がいるのか否かを検知できるセンサーが必要になります。

光合成では赤色光と青色光が使われるので、太陽光に含まれる赤色光は葉を通過する際減衰します。一方太陽光に含まれる遠赤色光はかなり透過してきます。つまり、葉を通過せず直接太陽光があたった場合の赤色光/遠赤色光の値よりも、葉を通過した光の赤色光/遠赤色光の値は小さくなるのです。

よって、光発芽種子は太陽光そのままが当たる=上に植物がいない場合は、赤色光たっぷりの光を浴びて発芽し、悠々光合成していけます。一方上に植物がいる場合、光発芽種子に当たる光は赤色光よりもうんと遠赤色光が多いため、Prばかりになって発芽抑制が生じ発芽しません。これで上に植物がいる場合は無駄に発芽しないで済むのです。逆に上の植物が枯れて死んだら、一気に赤色光が増えるので発芽促進され、発芽することができます。

光発芽種子が光発芽種子であることは、非常に有益であることが分かります。

 

本題:暗発芽種子とは

教科書で光発芽種子が扱われる際、一緒に紹介されるのが「暗発芽種子」です。

暗発芽種子は、「光によって発芽が阻害される種子」を指す場合と、「光がなくても発芽する種子」を指す場合があります。教科書がどちらの表記だったかを忘れたのですが…。

具体例として、カボチャ、ケイトウなどが挙げられています。

 

…しかし、教科書ではこれ以上の説明が記載されていません。

「こういうのもいるんだよ~」程度で終わるんですね。

「そういうのもいるんだな~」と思いながら自分では納得していたのですが、生徒にこう質問されたわけです。

「なぜ発芽後光合成はしなければならないはずなのに、光が発芽を抑制してしまうような仕組みを持っているんですか?なにか利点があるんですか?」

…確かに。でも分からぬ。

ということで、ちょっと調べてみましょうとな。

 

 

調べてみて分かったこと

まずはざっくり日本語で検索をかけてみました。

いくつかヒットするね。

https://www.takii.co.jp/flower/bn/pdf/20130145.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/11/1/11_1_2/_pdf

jspp.org

 

取り敢えず上の資料たちを見て分かったことを以下にまとめます。

まず分かったこととして、そもそも暗発芽種子は色んなタイプがあるらしいということ。光発芽種子のように、一筋縄では行かないようです。

①フィトクロムが発芽を強く支配していないタイプ

フィトクロムが支配していないので光量によって発芽が制御されない。よって暗い所でも発芽し、明るい所でも発芽する。エンドウ、インゲンマメ、トウモロコシなど。

栽培植物はどこででも容易に発芽することが求められて品種改良されてきたため、このような性質を持ったと考えられる。

 

②タネが作られる過程でPfrがつくられくるタイプ

光発芽種子などの場合、最初はPrが合成されてくるが、最初からPfrが作られてきているため、他の条件さえ揃えば光の量関係なくPfrによる発芽促進が起こる。これなら暗い所でもPfrがあるので、光発芽種子同様の仕組みで発芽する。トマトなど。

これらの種子の場合は、発芽が起こる際に遠赤色光を照射し続けるとPfrがなくなるせいで発芽が抑制されてしまうことが知られている。

利点は…よくわからない。


③フィトクロムとは異なる種子フィトクロムにより制御されているタイプ

キュウリなど。暗い中でもPfrが合成されるようになっているらしい?これも利点はよくわからない。

 

②と③についてはなぜそんな戦略をわざわざとるのか、納得できる理由を説明しているサイトはありませんでした。②や③の植物にとっては、光以外の要素の方が重要視されているのかもしれません。または、光発芽種子ばかり周りにいたときに、自身が暗発芽種子だと、あまり光がない状態でも一歩先に発芽して先をとることができるから、それがいいのかもしれないですよね…空想ですが。

個人的な考えでは、暗い=土の中という意味ですし、あまり光の有無だけにこだわって発芽条件を決めるのもマイナスな面があるのではないか?とか思ったり。栄養素などに余裕がそこそこあり、光合成をすぐさまする必要性もあまりないような植物なら、「暗くても発芽できる」の方が勝率がいい気がします。

実際の野生の植物を見ても、同一植物体の種子でも異なる光発芽性を示す種子を作るようなものもいるそうです。というのは、単一条件下でのみの発芽にしておくと、ある地域で絶滅しかねないからだそうです。そういう情報も併せて考えていくと、「光発芽種子は有利!」というイメージはやはりおかしいのではないか……

 

Pfrが発芽抑制?

とまぁ、ここまでは良かったんです。上の情報は大体幾つかのページに書いてあって、重複していたので確からしいのかなと思える情報でしたし。

しかしここで大問題が発生します。

「暗発芽種子ではPfrが発芽抑制を担う」という情報が急に出てきたのです。

jspp.org

ここに書いてある情報を引き抜くと、

「乾燥地に生えるような大型植物では、赤色光=Pfrが発芽を抑制している形式の暗発芽種子になっていることが多い。なぜなら乾燥地では水の確保が重要であり、赤色光が当たる=上に何もない=乾燥しやすい場所なので、そこで発芽を抑えられることが役に立つ。」

ということらしいんですね。

説明はかなり納得できるものなのですが(しかも植物生理学会だし)、いかんせん他のサイトに全然この情報が載っていない。Pfrが発芽抑制なんて、本当に事例があるのだろうか…?俄に信じがたい。

気になったので更に調べるべく、英語で検索をかけてみました。すると。

books.google.co.jp

link.springer.com

情報出るね!!!!!!!本当にあるっぽいな。

Springerの方の情報によると、スズメノチャヒキ属のある植物は完璧に暗発芽種子で、赤色光で発芽が抑制されるらしい。そうなんだ。本当にあるんだなぁ。

SEEDSの方は沢山色んなことが書いてあるので種子についてしっかり学びたければ読んでもいいのかもしれない。しかし気力があまりなかったので取り敢えず情報だけ拾ったけれど、やはりPfrによって発芽抑制がかかる事例はあるらしい。そうなのかぁ……

Pfrによって発芽抑制がかかるタイプは、核内にPfrが移行した後に発現制御される遺伝子群が違うのかな。それとももはやPfrが核移行するという所から違って、Prが核移行して遺伝子発現制御をする(光発芽種子のPfr同様?)のだろうか。うーむ、謎。

 

調べたけどよくわからないこと

  • キュウリが持っているという「種子フィトクロム」ってなんだ?
  • カボチャやケイトウはどういうメカニズムで暗発芽種子化しているのか(情報が見つからなかった)

このあたりはうまく調べられず情報が掴めませんでした。もうちょっと調べてみたいな。

ケイトウについては以下の論文に載っているっぽい。でも論文読めない。アクセス権ないから……)

www.cambridge.org

 

加えて、調べている間に「私って光発芽種子についてもあんまりよくわかってなかったのでは…???(発芽条件とか…)」と思い始めたので、そこについてもちゃんと勉強し直したいですね…。

 

ツッコミや情報あればコメントいただけると幸いです。

ではでは。

中国語の勉強をし始めた

こんにちは!

あれやこれやと手を出すことに定評がある私です。

最近までは、ディープラーニングのお勉強を本を使ってやっていました。↓

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

  • 作者:斎藤 康毅
  • 発売日: 2016/09/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

ちょみちょみ実装しながらやっていたのですが、取り敢えず一段落?ついたので(まだやりたいことは沢山あるけれど…)次は何を勉強しようかなぁと思い。

なんとなく中国語はじめました。

 

自分は大学時代フランス語選択だったんですけど、まぁびっくりするほど全然できなくって全然身につきませんでした。

せいぜい身についたのは「分かりません」という文章くらい……???言う機会が多かったからね……「分かりません」を流暢に言えるフランス語受講者、不真面目過ぎるのでは……?割と反省しています。もっと真面目にやるべきだった……

大学時代から割と中国語にも興味はあって、興味はあったけれども皆が皆中国語やるので違うのにしようかなとフランス語にしたんですよね。

だからずーっと興味自体は引き摺っていました。

先日たまたま見た「イエスマン」という映画で、イエスエスと答えた結果身につけた韓国語が役に立つシーンを見て、いいなぁ!と思い、

良い機会なので中国語に取り組んでみることにしました!独学でどこまで行けるかは知らぬ。

 

 

取り敢えず何から始めればいいのかなぁと思い、「中国語 独学」で勉強して勉強法をざっくり見てみました。

すると、

  1. 発音の基礎を学びピンインを習得する
  2. 単語の意味と音の知識を増やす
  3. 文法を知る
  4. 短文暗記しまくる

という順番でやっていくのが良いという。

どのサイトにも同じようなことが書いてあり、どれを見ても最初は発音だと言うのだから王道なのでしょう。

 

ということで、取り敢えず自分も発音からやり始めています!

先週の木曜日から勉強し始めて、今一通り発音の基礎知識はさらい、文法や語の所に足を踏み込んだばっかりという所です。まだ全然音は安定していないですが、繰り返すことが重要だなぁと既に感じているので、とにかく数を稼ぎたいところ。

 

今のところ、どの教材がいいのかも分からない(独学だからどれを使ってもいいという自由がある……)ので、色々模索しながらやっています。あれこれ試してみていて、現在は3つの教材をメインで使って勉強しています。気になっているけどまだ試せてないものもあるので、これらが最適解かは不明。

 

一つめは、「中国語スクリプト」。これはホームページです。

chugokugo-script.net

完全に無料で、独学できるように作られているサイトです。こういうサイトが幾つかあるのを観測していますが、今の所取り敢えずこれを使わせて貰っています。

このサイトには特に、先程述べた最初の勉強法についての確認でお世話になりました。

また、最初に大事な発音のところでめちゃくちゃ丁寧&逐一しっかり音が確認できるのがとても良かったです。最初から割と詳しめに色々話してくれるのも嬉しいところ。

このサイトのノリだったらもはや本なんでいらないのでは!?と発音の勉強時には思っていましたが、文法に入ってからは音声データが少ないのでちょっと険しいかもしれないなと思い始めました。やはり文章も音声で聞きたい……

あとテストみたいなものもないので自分で確認する方法を工夫しなければならない部分もあります。どこを確実に身につけるべきか(本当は「すべて」なんですけど)があまり明確ではない初学者にとっては、テストで問われることで初めて「あぁ、これを覚えなきゃいけないんだ」「これを自分は覚えられていないんだなぁ」と把握していく部分もあるので、やはりテスト的なものはほしい。

私の場合は自分でテストを勝手に作りながら進めました。作る行為も学びになるかもしれぬ。

 

2つ目は「ゼロからスタート中国語」です。これは本。持ち歩けるサイズのライトなやつ。 

新ゼロからスタート中国語 文法編

新ゼロからスタート中国語 文法編

  • 作者:王 丹
  • 発売日: 2015/02/26
  • メディア: 単行本
 

正直サイトとか駆使するだけでも学べるんじゃね?という気もしたのですが、やはりサイトだと間違っていることもあるだろうし、取り敢えず確実な知識が体系的にまとまっているものが一冊くらいあってもよいだろうと思い、購入しました。

サイト頼りだと、スマートフォン・PCが弄れない時とか、 通信ができない環境下とかだと進められないというのもあります。本はあっても困ることはないのだ。

この本を選んだ理由は単純にamazonで評判が良かったからです。安直だね……

この本、音声データがCDでついてくると同時に、専用のaudiobookアプリでダウンロードしてスマートフォンで聴くことも可能です。私はアプリの方にしました。

早速音声データを聴きながら本の最初の「発音」に関する章に取り組んでみようとしましたが……正直発音の所についてはサイトのほうが良いなと個人的には思いました。

というのも、発音の所についてあまり多くは書いておらず、ざっくりとしたものしか掲載されていません。説明も一番基礎の基礎の所で止まっています。

また、音声データが1ユニットの中身全部をダーッと読んでいくスタイルなので、一語の発音のみを何度も繰り返し聴くということができません。これがちょっと険しい。一語一音を何度も繰り返し再生したい……上で挙げたサイトの方が、ここは優秀でした。

そんなわけで、少なくともこの本の最初の発音ページはうまく取りかかれない印象を受けました。

しかし、文法の勉強に入って少しずつこの本の良さも感じています。この本では一章ずつ確認テストが入っているんですね。これがとても良い。自分で勝手に工夫して、読み上げやピンイン表記なども一緒にテストしています。

しかし結局文法のところについてもダーッと読んでいくスタイルは変わらないので、それがちょっと不満です。

 

3つめは、「HelloChinese」というアプリ。 

www.hellochinese.cc

これは割と軽い気持ちで適当に入れてみたものだったのですが、案外役に立っていて、とても良い教材な気がしています。

良さの一つ目はしつこいところ。何度も同じことを違う視点で、何度も何度も確認していきます。何度も発音を聞き、何度もしゃべる。これが物凄く印象に残るんですよね。

文章についても、文章まるごとを何回も再生できるのはもちろん、文章中の一語ごとに発音確認もできるようになっています。これは嬉しい。そして、複数の文章を急に提示されず、概念1つずつにつき丁寧な取り扱いをされます。良い…

2つ目はあまり冗長的な説明がなくいきなりトレーニングから入るところ。説明文がないんですね。ほとんど。確認しようと思えばできますが……。説明がない、なのに学べる。良いテンポです。

3つ目は自分の発音をテストできるところ。同時に録音ができるところ。これは大きいなと思います。わざわざ発音を録音するためにアプリを用意しなくていいし、アプリが判定もしてくれるのが嬉しい。自分でテストし答え合わせできるのはせいぜいピンインと文字、文法くらいなんですよね。でもこれを使えば発音もテストできる。

 

そんなわけで、現在はこの3つの良いところをうまく使いながらやっています。

 

最初にも述べたように、まだ気になっているけど使えていないものが沢山あります。

例えばNHK中国語講座とか……いいらしい。

取り敢えず進めていってまた総括したいです。